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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

2022年度改定に向け「手術等の休日・深夜・時間外加算の改善」「AI技術の評価」「コストを賄える点数設定」など要望へ―外保連

2020.11.27.(金)

2022年度の次期診療報酬改定に向けて、外科医療の現場実態を調査したうえでエビデンスを構築し、厚生労働省に要望を行っていく。例えば、手術等の【休日・時間外・深夜加算1】について「患者にメリットがある」という視点で改善を求めていく。また、人件費や包括材料費だけで点数を超過してしまい、病院の持ち出しとなっている手術や処置について、増点などの改善を求めていく―。

またAI(人工知能)を用いた医療技術の評価についても、外保連と内保連(内科系学会社会保険連合)とで共同した提言を行う—。

100の外科系学会で構成される「外科系学会社会保険委員会連合」(外保連)が11月24日に開催した記者懇談会で、こういった考えが示されました。2022年度の次期診療報酬改定に向けて、各分野でエビデンス構築と要望内容の精緻化が急ぎ進められます。

11月24日にオンラインで行われた外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の記者懇談会。中央が岩中督会長、向かって右が瀬戸泰之実務委員長、向かって左が川瀬弘一手術委員長

手術等の【休日・時間外・深夜加算1】、患者のメリットという視点で改善を要望

外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿を学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。例えば、手術点数の設定に当たっては、外保連の現場調査(どの手術にどういった職種が何人携わり、どの程度の時間がかかるのか、難易度はどの程度か、使用する医療機器等のコストはどの程度か、など)をベースにした「外保連試案」が相当程度勘案されるなど、その提言には深い意味があります。

2022年度の次期診療報酬改定に向けて、外保連では分野ごとに「要望項目」の選定が進められており、11月24日にはその一端が提示されました。岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)は「新型コロナウイルス感染症への対応が最優先され、各医療機関ともに厳しい(埼玉県立病院も2020年度の収益予測を20億円近く下方修正している)が、次期改定に向けた準備を粛々と進める必要がある」との考えを強調しています。



まず外科系の手技全体に関して、瀬戸泰之実務委員長(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学・代謝内分泌外科学教授)は、手術・処置の【休日・時間外・深夜加算】の要件緩和を要望していく考えを強調。

2014年度の診療報酬改定で、手術・1000点以上の処置に【休日加算1】【時間外加算1】【深夜加算1】が設けられ、当該手術・処置点数の「160/100」を上乗せ、つまり点数2.6倍とすることが行われました。

時間外・休日・深夜に対応する医師の負担を考慮したもので、当該加算を取得するためには▼年間の緊急入院患者(意識障害や呼吸不全など)数が200名以上▼全身麻酔手術が年間800件以上▼医師の負担軽減・処遇改善体制の整備▼加算算定診療科での交代制勤務・チーム制の導入―などといった要件(施設基準)が課されています。

休日等の意思の負担を軽減するためには「症例の集約化を図り、複数医師によるチームでの対応が必要不可欠である」という考え方が見て取れますが、瀬戸実務委員長は「施設基準が厳しすぎる。例えば『毎日の当直人数が6名以上』(この場合は、通常「予定手術前当直が診療科全体で年間12日以内」のところ、「24日以内」に緩和される)が求められるが、これは事実上、大学病院のみで可能で、一般病院では不可能である」と指摘。これまでに3度の改定(2016・18・20年度改定)で厚生労働省に「施設基準の緩和」を求めていますが、実現できていません。そこで瀬戸実務委員長は「患者等へのメリットは何か」という視点で要望内容を練り直していく方針を示しています。

2018年度から「ロボット支援下手術」が保険適用されていますが、既存手術と比較した場合の「患者へのメリット」(有効性など)のエビデンスが確立されていないことから、既存の「内視鏡を用いた手術」と同じ点数設定となっています。外保連では「今後も点数設定や新規技術の保険適用に当たっては『患者へのメリット』が重視される」との考えに立ち、要望に向けたスタンスを変化させていく構えです。

なお、「ロボット支援下手術」に関しては、全症例がNCD(National Clinical Database)に登録されており、瀬戸実務委員長は、データから「有効性に関するエビデンス」を構築し、2022年度の次期診療報酬改定に向けて「増点」等を要望していく考えも示しています。

人件費・包括材料費が診療報酬点数を上回る手術が多数、改善を要望へ

また「手術」に関しては、川瀬弘一手術委員長(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)から、「手術に用いる材料の費用だけで、すでに診療報酬点数を超過している」(材料費すら保険で賄えない)術式など、医療現場と乖離している点数について改善を求めていく考えが強調されました。

例えば、K617-4【下肢静脈瘤静脈血管内焼灼術】の点数は1万2000点(12万円)に設定されていますが、外保連の調査によれば「人件費だけで15万2870円、人件費に償還不可材料費を加えれば23万3870円になる」ことが分かっており、大幅な赤字となってしまいます。

下肢静脈瘤静脈血管内焼灼術などは保険点数で人件費・材料費(点数に含まれ別途請求できない材料)のコストを賄えない(外保連会見1 201124)



外保連の調べでは、こうした術式は2020年度改定で増加してしまっています。例えば、償還不可材料費(手術点数に包括評価されている材料のコスト)だけで点数を超過している術式は397(2018年度改定時には341なので、56増加)、人件費が点数を超過している術式は2773(同2475であり、298増加)あります。

手術点数で包括材料のコスト(点数に含まれ別途請求できない材料)を賄えない術式が多数ある(外保連会見2 201124)

手術点数で人件費を賄えない術式が多数ある(外保連会見3 201124)



これらは病院の持ち出しで手術が行われており、外保連では改善を求めていく考えです。この点、川瀬手術委員長は「10月・11月の診療を対象に医療現場の調査(手術時間やコスト等の調査)を行い、外保連試案2022に反映させていく」考えも明らかにしています。新型コロナウイルス感染症の影響が気になりますが、川瀬手術委員長は「4月・5月には『緊急手術がどうしても必要な症例に限定する』など影響が大きかったが、知見が集積され、患者数も相当程度回復している。新型コロナウイルス感染症が『手術』等に与えている影響は限定的である」との考えを提示。データを分析し、来秋(2021年秋)には「外保連試案2022」が公表される見込みです。

2022年度改定に向けて外保連試案2022を作成する(外保連会見4 201124)

【人工膵臓療法】は包括材料費だけでもコスト割れ、増点等の改善を求める

また処置に関しても、平泉裕処置委員長(昭和大学医学部整形外科客員教授)から「材料費(処置点数に包括されている材料費)のみで赤字になってしまう処置」(例えば、人工膵臓療法など)について増点などの改善を要望していく考えが示されています。

J043-6【人工膵臓療法】は、患者の静脈から連続的な採血を行い、自動的に必要な量のインスリン・グルコース(ブドウ糖)を計算し、患者に注入する技術で、▼高血糖時(糖尿病性昏睡等)における救急的治療が必要な場合▼インスリン産生腫瘍摘出術の術前、術後の血糖管理が必要な場合―などのほか、「手術、外傷および分娩時」においても医師が「他の方法では血糖管理が困難である」と判断した際などにも必要となる非常に重要な技術です。

術中の血糖管理等に重要な人工膵臓について、点数とコストとの乖離が大きすぎるため、是正を要望していく(外保連会見5 201124)



現在、診療報酬点数は「1日につき3500点」(3日を限度)に設定されていますが、外保連の調査では、材料費だけで11万4604円が、さらに人件費4万9940円のコストがかかるために「実施すれば赤字になってしまう」技術です。多くの手術の際に必要な技術であり、「増点などの改善を求めていく」考えを外保連は強調しています。

「AI(人工知能)を活用した医療技術」の評価、「麻酔後ケアユニット」の評価を2022年度改定に向けて要望へ

また検査に関しては土田敬明検査委員長(国立がんセンター中央病院内視鏡部医長)から「AIに対する技術料の評価」を求めていく考えが示されました。

AI(人工知能)が医療分野にも導入されてきており、場面によっては「人よりも優れている」ところがあるとされています(例えば、ある症状を膨大なデータベースに照らして傷病の候補をピックアップする場面など)。土田検査委員長は「2022年度改定に向けてAIを活用した医療技術の保険適用提案がなされると予想される。それに間に合うように技術料の評価に向けた考え方を整理したい」とコメント。

この点、外保連と内保連(内科系学会社会保険連合)とで「合同AI診療検討委員会」を設置しており、ここで具体的な検討が進められます。



また、麻酔に関しては横田美幸麻酔科副委員長(がん研究会有明病院麻酔科部長)から「PACU4(麻酔後ケアユニット、post anesthesia care unit)加算」の創設(麻酔後の不安定な状況から、安定した回復を図るユニット)などを、内視鏡に関しては清水伸幸内視鏡委員長(山王病院副院長、国際医療福祉大学医学部教授)から内視鏡手技全体の適正な評価に向けた要望内容の精査を行っていく考えが示されています。

麻酔後患者の安定回復を図る麻酔後ケアユニット(PACU)の評価を2022年度改定に向けて要望していく(外保連会見6 201124)

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