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ロボット支援下手術、プロクター(指導医)制度導入で1例目からの保険適用に期待―外保連

2019.12.18.(水)

ロボット支援下手術について「当該手術等を5例以上経験した常勤医師」配置などが要件とされているが、関係学会では「新規にロボット支援下手術を実施する場合には、一定期間、指導医(プロクター)による指導を受ける」制度を実施している。ロボット支援下手術の拡大に向けて、指導医の下であれば新規医療機関でもロボット支援下手術を1例目から保険診療で実施できるような仕組みとしてはどうか―。

外科系学会社会保険委員会連合(外保連)が12月10日に開催した記者懇談会で、岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)からこのような考えが示されました。

外保連の岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)

外保連試案2020を作成、麻酔科試案で大きな見直し

外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿を学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。2020年度の次期改定に向けても、新たな術式などの保険収載や報酬水準の見直し(コストを適正に評価した引き上げ)などを、中央社会保険医療協議会の医療技術評価分科会などで提案しています(新設提案164件、改定要望208件、医療材料34件)。

また手術・処置・検査などの診療行為について、▼難易度▼必要なスタッフ数(医師、看護師など)▼時間▼材料費―など客観的な指標をベースに設定した、言わば「望ましい償還価格」といえる『外保連試案』が作成され、これは実際の点数設定においても相当程度活用されています。

今般、外保連では新たな術式等を盛り込んだ『外保連試案2020』を作成。旧版(外保連試案2018)からの修正点などの説明が行われました。

とくに大きな見直しが行われたのは「麻酔試案」で、山田芳嗣麻酔委員長(東京大学附属病院麻酔科・痛みセンター教授)は、「全身麻酔のコスト計算法を実態に合わせて修正(専門医の人件費勘案や、麻酔時間設定の見直し)し、大部分で金額が変更となった」ことを紹介しました。外保連試案2012以来、8年ぶりの大幅見直しとなっています。

外保連の山田芳嗣麻酔委員長(東京大学附属病院麻酔科・痛みセンター教授)



また山田麻酔委員長は、2020年度の次期診療報酬改定に向けて次の要望を行っていることを強調しています。

▽【長時間麻酔管理加算】について、▼K136【脊椎、骨盤悪性腫瘍手術】▼K142【脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)】の4「前方後方同時固定」▼K169【頭蓋内腫瘍摘出術】の2「その他のもの」▼K442【上顎骨悪性腫瘍手術】の3「全摘」▼K511【肺切除術】の6「気管支形成を伴う肺切除」▼K529-2【胸腔鏡下食道悪性腫瘍手術】の1「頸部、胸部、腹部の操作によるもの」▼K552【冠動脈、大動脈バイパス移植術】の2「2吻合以上のもの」▼K555【弁置換術】の1「1弁のもの」の【心臓弁再置換術加算】▼K55【弁置換術】の2「2弁のもの」▼K657-2【腹腔鏡下胃全摘術】の2「悪性腫瘍手術」▼K677【胆管悪性腫瘍手術】の2「その他のもの」▼K677-2【肝門部胆管悪性腫瘍手術】の2「血行再建なし」▼K695【肝切除術】の5「2区域切除」▼K740-2【腹腔鏡下直腸切除・切断術】の2「低位前方切除術」▼K740-2【腹腔鏡下直腸切除・切断術】の3「切断術」―に拡大すべき

▽L010【麻酔管理料(II)】の算定要件を見直すべき



まず前者の【長時間麻酔管理加算】は、2014年度の診療報酬改定で創設されたもので、「指定する手術のマスク・気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔の実施時間が8時間を超える」場合にL009【麻酔管理料(I)】(「常勤の麻酔科医が麻酔前後の診察を行い、かつ常勤の麻酔科医が全身麻酔などを行う」ことを評価)に7500点を上乗せするものです。

山田麻酔委員長は、「多くの術式が【長時間麻酔管理加算】の対象となったが、まだ長時間の麻酔が必要な術式が対象になっていない」とし、追加の適用を強く求めていく考えを強調しています。



後者のL010【麻酔管理料(II)は、「常勤の麻酔科医の指導の下で、麻酔担当医が麻酔前後の診察を行い、全身麻酔などを行う」ことを評価する診療報酬項目です。現在の算定要件を見ると、同じ麻酔科担当医が「麻酔前後の診察」「全身麻酔」などすべてを行うことが求められていますが、山田麻酔委員長は「むしろチームで麻酔前後の診察等を行うほうが時間的余裕もできる」と指摘。算定要件の見直しを求めていく考えを示しています。



また各試案について、次のような見直しが行われたことも各委員長から紹介されています。

▽「手術試案」について、「保険適用されているものの外保連試案に掲載のない298術式」(▼頭蓋内電極植込術(ロボット支援下):E難度▼膵頭十二指腸切除術(ロボット支援下):E難度▼膵体尾部切除術(ロボット支援下):D難度―など)について、関係学会に確認の上で新たに掲載した

外保連の川瀬弘一手術委員長(聖マリアンナ医科大学小児外科教授)



▽「処置試案」について、所要時間・必要医師人数等に応じた精緻化を行うとともに、STEM7(処置7桁分類コード、手術試案のSTEM7に準拠)の付記などを行った

外保連の平泉裕処置委員長(昭和大学医学部整形外科客員教授)



▽「生体検査試案」について、所要時間・必要医師人数等に応じた精緻化を行った

外保連の土田敬明検査委員長(国立がんセンター中央病院内視鏡部医長)



▽「内視鏡試案」について、手術・処置・検査からの移行を進めた(次回改訂で移行が完了する見込み)

内保連外保連合同の清水伸幸内視鏡委員長(山王病院副院長、国際医療福祉大学医学部教授)



このうち「STEM7」は、外保連による▼どの部位が対象か(操作対象部位:3桁)▼切除を行うのか、止血をしたのか、修復を行ったのかなど(基本操作:2桁)▼オープンなのか、経皮的なのかなど(アプローチ方法:1桁)▼内視鏡を用いたのか、ロボット支援下なのかなど(アプローチ補助器機:1桁)―で生成される7桁の手術コードです。医科点数表のKコード(手術コード)は体系的な整理がなされておらず「医療技術の多様化・高度化に診療報酬が対応できなくなる恐れがある」と指摘されます。そこで2018年度の前回診療報酬改定より、DPCデータに「STEM7」を追記することが求められています。

今般、処置試案にもSTEM7が掲載され、生体検査・内視鏡分野でも「STEM7作成を内科系学会社会保険連合(内保連)と検討している」ことが明らかにされました。遠くない将来、診療報酬の技術に関するコードについて、大きな見直しが行われる可能性もありそうです。

なお、麻酔試案以外は大きな見直しが行われていませんが、各委員長は「次回改訂(2020年度版)に向けて大規模な調査等(時間等の実態調査)を行う」考えも示しています。

2020年度改定、人件費・医療材料費と診療報酬との不整合解消を

また瀬戸泰之会長補佐(東京大学胃食道外科教授)は、2020年度の次期診療報酬改定に向けて改めて次のような点を要望していることを紹介しています。

▽手術・処置における「休日・時間外・深夜加算」の施設基準緩和(とりわけ「毎日の当直医6人以上要件」の緩和)

▽自動縫合器・吻合器加算の一括要望(肺・肝・小腸移植関連、冠動脈バイパス、胆道閉鎖症など)

▽人件費・償還不可材料費と診療報酬点数との不均衡の是正

外保連の瀬戸泰之会長補佐(東京大学胃食道外科教授)



外保連では、医療現場における手術や処置等の実態(難易度はどの程度か、時間はどの程度か、スタッフは何人程度必要か、医療材料等のコストはどの程度か)を詳しく調べ、これをベースに「望ましい償還価格」である『外保連試案』を作成。厚労省も、この試案を踏まえた点数見直し等を行っています。

しかし瀬戸会長補佐は、「人件費のみで診療報酬点数以上となっている手術は、2018年度改定以降も2600超ある」「償還できない医療材料のみで診療報酬点数以上となっている手術は、同じく340超ある」ことを紹介。これら(とくに後者)は「実施するだけで赤字になる」手術と言えます。瀬戸会長補佐は「厚労省も外保連試案を踏まえた点数引き上げを行ってくれているが、実施件数の少ない手術等が中心で、点数引き上げの恩恵を受けられる病院は一部である。早急な不合理の解消が必要である」と瀬戸会長補佐は強調しています。

また、ロボット支援下手術については、2018年度の前回改定で術式が大幅に拡大されましたが、「優越性のエビデンスが示されず、通常の内視鏡手術と同点数に設定」されました。現在、優越性のエビデンス構築に向けて全症例の登録(レジストリ登録)が進んでいますが、2020年度改定における「エビデンス提示」は難しく、2022年度以降の課題となるでしょう(関連記事はこちら)。



ところで、ロボット支援下手術については「施設基準が厳しすぎる」との指摘もあります。例えば【胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術】・【胸腔鏡下良性縦隔腫瘍手術】を内視鏡手術用支援機器を用いて実施する場合には、「当該手術等を術者として5例以上実施した経験を有する常勤の医師」配置などが要件とされています。つまり、新規にこれら手術を行うには、「経験のある医師をヘッドハンティングしてくる」「病院の持ち出しでロボット支援下手術の経験を医師に積ませる」ことなどが必要となってしまいます。

この点、関係学会では「新規にロボット支援下手術を実施する場合には、一定期間、指導医(プロクター)による指導を受ける」制度を実施しています。岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)はロボット支援下手術の拡大に向けて、「プロクターをアカデミアが認定し、その指導の下であれば新規医療機関でもロボット支援下手術を1例目から保険診療で実施できる」ような仕組みが必要であると訴えています。2020年度の次期改定でのプロクター制度導入による施設基準緩和の可能性がありそうです。
 
 

 

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