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GemMed塾 看護モニタリング

集中治療認定医を専門医と別に養成し、有事の際に集中治療に駆け付ける「予備役」として活躍を—第8次医療計画検討会

2021.10.14.(木)

新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症に適切に対応するために、集中治療の専門人材(医師、看護師、臨床技師など)の育成・配置を進める必要がある。例えば、集中治療専門医のほかに、集中治療に関する一定の知識・技術を持つ「認定医」を養成し、「予備役的」な働きをしてもらうことを検討する必要がある。あわせて専門人材を束ねる「コーディネーター役」の育成・配置も重要である―。

また、重症患者に適切に対応するために、病床の柔軟運用(一般病床のICU化など)を可能とする必要があるが、医療現場は平時からゆとりがなく、パンデミックなど有事の際には非常に厳しい状況に陥る。そうした点の改善を今後検討していく必要がある―。

10月13日に開催された「第8次医療計画等に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった状況が医療現場から報告されました。

10月13日に開催された「第3回 第8次医療計画等に関する検討会」

集中治療の専門人材育成・柔軟な病床運用などが新興感染症対策で重要である

2024年度から「第8次医療計画」がスタートするため、検討会では2022年度末までに、各都道府県が医療計画を作成する際の拠り所となる「指針」を策定します(指針を踏まえて2023年度に計画作成し、2024年度から稼働させる、関連記事はこちら)。

医療計画と基本指針等の全体像(第8次医療計画検討会3 210618)



第8次医療計画からは、新型コロナウイルス感染症対応の反省点等を踏まえて、「新興感染症医療」を記載することになります(従前の5疾病・5事業から5疾病・6事業となる)。そこで検討会では、現下のコロナ感染症にどう対応しているのか、どういった点を医療計画に盛り込んでいくべきかを、現場の医療機関等から意見聴取することを決定。今般、次の9病院・団体から意見を拝聴しました。
(1)社会医療法人ペガサス馬場記念病院 西尾俊嗣副院長
(2)社会医療法人財団慈泉会相澤病院 田内克典院長
(3)医療法人平成博愛会世田谷記念病院 武久敬洋院長
(4)岡山県精神科医療センター 来住由樹院長、中島豊爾理事長
(5)医療法人卯の会新垣病院 新垣元理事長
(6)日本集中治療医学会 西田修理事長、土井研人理事
(7)日本ECMOnet 竹田晋浩理事長、藤野裕士副理事長、橋本悟理事、小倉崇以理事
(8)大阪市消防局救急課 前田達也課長
(9)千葉市消防局警防部救急課 亀山俊一課長

本稿では、コロナ感染症への高度急性期・急性期医療に焦点を合わせてみます。

まず日本集中治療医学会からは、▼集中治療に携わる専門医・看護師・臨床工学技士の育成と適正配置▼パンデミックなど有事の際に集中治療を提供できる「病床運用の弾力化」(一般病床のICU化など)▼これらを支える各種基準や診療報酬の見直し―などの必要性が強調されました。

たとえば、コロナ感染症の重症患者では人工呼吸器やECMOによる呼吸管理が必要となり、ICUの看護配置を、通常の「2対1」から「1対2」へと「4倍」に増強する必要があります。また、一般病棟を臨時のICUに一時転換するためには、「7対1」から「1対2」へと「14倍」に増やす必要があります。こうした人材を院内で調達するためには、「一部ベッドを休床し、そこに配置されていたスタッフをICUに集約する」必要がありますが、院内に配置しているスタッフ数には限界があるため、有事の際にも「コロナ重症患者に対応できるICU」を増床することは困難です。このため日本集中治療医学会は「人(専門医、看護師、臨床工学技士)の養成」を今から進める必要があると強調。より具体的に、▼集中治療専門医を新専門医制度のサブスペシャリティ領域として認定する(要望)▼学会認証看護師を育成する(検討中)▼集中治療専門臨床工学技士を認定する(2022年度スタート)―などの取り組みが進められています。

もっとも、平時から多くの人員を配置することは経営悪化を招きます。このため西田理事長は「例えば、集中治療に携わる医師について、専門医以外にも認定医制度を設けることを日本専門医機構に提唱している」「看護師については、一定の集中治療研修を行うなどし、『有事の際に、ここまでは一般の看護師でも協力できる』『ここから先は専門看護師、認定看護師、検討中の認証看護師が対応する』などの体制を設けることを検討している」との考えを示しています。

提唱される認定医は、例えば「平時は他の専門医(内科専門医など)として各診療科で従事するが、有事の際には集中治療に駆け付ける」という【予備役】的な活動をすることが期待される医師です。極めて合理的な提案・提言と言えるでしょう。

専門人材の「コーディネーター」役の育成・配置がパンデミック対応には極めて重要

またECMOnetは、コロナ感染症が我が国でも猛威を振るい始めた昨年(2020年)2月に「ECMO・人工呼吸治療に精通した医師」が、学会等の垣根を超えて集結し、活動を開始しました。集中治療などの専門医や看護師、臨床工学技士であっても、ECMO操作等に関する知識・スキルは必ずしも十分ではないため、ECMOnetが全国の病院からの相談を24時間受け付けるとともに、必要な人材派遣、患者の広域搬送調整などの役割を果たしました。あわせて、全都道Oチーム養成講習会」を開催するなど、人材育成にも尽力しています。

今後の第8次医療計画作成などに向けて、▼最重症患者診療専門家の育成 (教育を目的としたECMO患者の集約を含む)▼パンデミック医療コーディネーターの育成▼緊急診療支援チームの育成▼感染症指定医療機関等にて人工呼吸/ECMOを含めた基礎診療を担う人材を育成(ECMOnet 講習会等)―などを進め、パンデミックなど有事の際には「パンデミック医療コーディネーター」を中心に、ECMO操作等に関する知識・スキルを持った専門人材が適切に活用できるようにすることが重要と提言。とりわけ「パンデミック医療コーディネーター」の育成・配置が極めて重要であることを強調し、「国としてコーディネーターを育成・養成し、医療計画の中に位置付けを明確化すること」を強く求めています。

医療現場は平時でもゆとりがなく、パンデミックなど有事の際にはパンクしてしまう

また、急性期病院としてコロナ感染症患者を受け入れた馬場記念病院・相澤病院からは、そろって「平時でも、人材面も含めてゆとりがない。有事になればあっという間に厳しい状況に陥る」点が強調されました。集中治療以外の面でも「人材確保」が極めて重要なテーマであることを再確認できます。

あわせて馬場記念病院からは「コロナ感染症以外にも脳卒中患者などへの救急対応を行っており、一般医療とコロナ医療との両立・バランス確保が重要かつ困難な課題となっている」ことが、また相澤病院からは「平時でも稼働率が90数%であり、コロナ感染症対応のための空床確保を要請されたとしても、退院調整などを行い、実際に空床を確保できるまでには1週間程度はかかってしまう」という状況報告も行われました。



検討会では、今後も「コロナ感染症に対応した医療現場からの意見聴取」を継続。現場の意見を、第8次医療計画などに反映させていく考えです。



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