自院のがん診療内容を他院と比較し、「がん診療の質向上」「次なる新興感染症対応」を医療現場目線で考える―CQI研究会
2023.5.23.(火)
がん診療連携拠点病院(以下、がん拠点病院)などの間でも、がん治療の内容や実績に大きな違いがあることが知られています。厚生労働省の「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」でも昨夏(2022年夏)に、こうした点を踏まえ、がん拠点病院などの整備指針(指定要件)見直しを行い、本年度(2023年度)からの新たながん拠点病院等体制がスタートしています(関連記事はこちら(がん診療連携拠点病院等)とこちら(小児がん拠点病院)とこちら(がんゲノム医療中核拠点病院)とこちら(がんゲノム医療拠点病院))。
そうした中で「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)では、全国がん拠点病院の「DPCデータをもとにした各病院の治療内容・実績比較」「各病院のクリニカルパス比較」を可能とした会員サイトを設けています(CQI研究会のサイトはこちら、CQI研究会会員リストはこちら)。
また本年(2023年)8月26日には、第16回CQI研究会が開催されます。お互いの施設名を開示した形で病院間比較が可能な「がん手術分析ツール」の提供や、「新型コロナウイルス感染症によるがん診療および病院経営分析」などが開催予定となっています(第16回CQI研究会申込サイトはこちら)。
第16回研究会では、コロナ感染症の影響、前立腺がん治療内容などを詳しく分析
「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」は、がん医療の質向上を目指す有志施設が集まり、2007 年に設立した研究会です。参加施設の診療プロセスについてDPCデータ等を用いて分析し、お互いの施設名を開示した形で病院間比較を行っています。分析結果をフィードバックすることで各施設での質改善活動を支援し、その結果として「がん医療の均てん化」推進が期待されます。Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(以下、GHC)では、DPCデータに基づく診療内容・実績の分析を通じてCQI研究会の活動を支援しています。
8月26日には第16回の研究会を開催します(前回第15回研究会に関する記事はこちら)。
第15回CQI研究会では、次のようなプログラムが予定されています。
(1)がん医療・経営の質向上のベンチマーク分析ツール「Cancer Dashboard」のポイント解説
▽参加施設の「診療プロセス」や「経営指標」を実名でベンチマーク(全がん種に対応)
・診療プロセス:各がんの在院日数、抗生剤、輸液、処置、リハビリ、栄養指導ほか
・経営指標:症例数、医療資源量、がん関連の加算算定率、入退院支援加算算定率ほか
(2)ケーススタディ:前立腺がん(診療内容等に関する詳細ベンチマーク分析
▽前立腺がんを例として「診療プロセス」や「経営指標」を病院の実名でベンチマーク
▽前立腺がんはじめ、がん種別ダヴィンチ手術の動向分析
(3)新型コロナウイルス感染症によるがん診療および病院経営分析
▽コロナ波別の悪性腫瘍への影響、悪性腫瘍における患者居住地-入院病院間距離、ステージ
▽患者層、がん種別死亡率の変化、診療内容等変化に関する分析を報告
コロナ感染症は、がん診療・検診などに大きな影響を及ぼしました(関連記事はこちら)。「自院の状況」と「他院の状況」とを比較し、今後の新興感染症対応に活かすことが期待できます。
また、「自院の診療内容」と「他院の診療内容」とを比較することで、「自院のがん診療の質向上」を図ることが可能となります。ぜひご参加ください。
なお、同日午前中には、GHC特別セミナー「医療の質と経営の質を担保しながら、働き方改革への挑戦—実証データから見える、明日からできる対応—」をCQI会員限定で開催します。こちらもぜひご参加ください。お申込みはこちらから。
【開催概要】
■第15回CQI研究会
日時:令和3年8月26日(土)13:30~16:00
会場(開催方法):対面とWebのハイブリッドセミナー(リアルタイム型、オンディマンドでも発信)
参加対象病院:がん診療連携拠点病院等(国指定、都道府県指定)
参加対象:院長、副院長、診療部長、看護部長、事務部門(経営企画、医事課等)
参加費:お一人様 1000円(税込)
●お申込みは、こちらから
【CQI研究会世話人(北から記載、敬称略)】
岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者:望月泉(代表)
栃木県立がんセンター 副理事長兼副センター長:藤田伸
千葉県がんセンター 診療部長・治験臨床研究センター長:石井浩
神奈川県立がんセンター 副院長・地域連携室長・泌尿器科部長:岸田健
愛知県がんセンター 病院長:山本一仁
四国がんセンター 血液腫瘍内科医長:吉田功
九州がんセンター 院長:藤也寸志
【関連記事】
がん診療内容の病院間比較で「均てん化、ボトムアップ」目指す、コロナ禍でのがん診療への影響を再確認―CQI研究会
コロナ禍におけるがん医療を他院と比較し、がん診療供給体制を考える―CQI研究会
がん医療関係者、医療の質評価事業に参加し、医療の質向上を目指してほしい―第14回CQI研究会(2)
がん診療連携拠点病院でも診療内容に大きなバラつき、パス見直しなど検討を―第14回CQI研究会(1)
がん医療の内容、実績、クリニカルパスを他院と比較し、がん医療の質向上を目指す―CQI研究会
胸部食道がん、平均値では胸腔鏡手術のほうが開胸手術よりも術後日数が長い―CQI研究会
ベンチマークと臨床指標でがん医療の均てん化を推進―CQI研究会、8月開催
大腸がんの在院日数、短縮傾向もなお病院格差-CQI研究会が経年分析
乳がんの治療法、放射線実施率など格差鮮明―CQI研究会、臨床指標20項目を調査
前立腺がん手術、在院日数最短はダヴィンチ、合併症発生率は?―第10回CQI研究会
拠点病院は現場の使命感で支えられている、今こそ「医療の質評価」の普及を――九がん・藤院長