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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

がん医療の内容、実績、クリニカルパスを他院と比較し、がん医療の質向上を目指す―CQI研究会

2018.8.31.(金)

 がん診療連携拠点病院(以下、がん拠点病院)の間でも、がん治療の内容や実績に大きな違いがあることが知られています。このため、厚生労働省の「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」では、がん拠点病院の視点要件を大幅に見直し、来年度(2019年度)から適用する方針を固めています。

 そうした中で「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(代表世話人:望月泉:八幡平市病院事業管理者・岩手県立病院名誉院長)では、「DPCデータをもとにした各病院の治療内容・実績比較」「各病院のクリニカルパス比較」を可能とした会員サイトを設けています(CQI研究会のサイトはこちら)。

また来年(2019年)8月24日(予定)には、▼胃がん▼乳がん▼前立腺がん―を対象とした第14回研究会を都内で開催します。そこでは、患者支援に向けた「キャンサーナビゲーションシステム」、がん診療の視点から見た「地域医療構想」なども研究テーマとなります。

2019年の研究会では、「がん」を切り口にキャンサーナビや地域医療構想の研究も

CQI研究会は、全国から100を超えるがん拠点病院などが集い、自院のデータを持ち寄って比較分析することで、がん医療の質向上を目指している研究会です(2007年設立)。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、DPCデータに基づく診療内容・実績の分析を担当しています。

会員病院は、次の3事業に参加することができます。
(1)がん診療分析ツールの利用
(2)パスライブラリの利用
(3)都内で開催される研究会への参加(2年に一度)

 このうち(1)は、会員専用サイトにおいて、DPCデータを持ち寄った病院同士で、がん医療の内容・実績についてベンチマーク分析を可能とするものです。「悪性腫瘍」の名称が付く診療報酬点数のKコード(手術)すべてのデータについて、例えば、「術式の割合」(開腹手術なのか、腹腔鏡手術なのか)、「平均在院日数」「術後日数」「抗菌剤の使用銘柄と使用日数」「医療資源の投下状況」「各種加算の算定状況」などを瞬時に視覚的に把握し、▼自院の立ち位置▼他病院の状況—を見ることができます。

 今年度(2018年度)には57施設が参加しており、ドレーン抜去日や抗生剤投与日数などのプロセス面で均てん化が進んでいるもの、病院間で大きな差のある項目もある(例えば「結腸がん」症例に対するリハビリテーションの介入状況など)ことも分かりました。こうしたデータを院内で共有することで、「課題の抽出」→「改善」につなげていくことが可能です。
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 また(2)は、各施設における最新のクリニカルパスを持ち寄り、自院と他院との比較を可能とするツールです。自院で使用するパスを会員専用サイトで公開すれば、他院のパスを見ることができ、自院のパスの適正性確認や見直しにつなげることができます。現在、▼大腸がん▼肺がん▼肝がん―が対象で、順次、がん種を拡大していく予定です。

 
(3)は2年に一度、会員病院が都内に集結し、テーマに沿った検討・研究を実施する会です。来年(2019年)8月24日(予定)に開催される第14回研究会では、▼胃がん▼乳がん▼前立腺がん―を対象とした研究・討論を行うとともに、「キャンサーナビゲーションシステム」「がん医療からみた地域医療構想」の2点も研究テーマとなる予定です。

キャンサーナビゲーションシステムとは、一定の研修を受けたキャンサーナビゲータ―が、がん医療に不安を抱える患者に対し、積極的に支援を行う米国の仕組みです。がん患者からの相談を待つのではなく、ナビゲータ自らが患者にコンタクトし、必要な情報提供などを行うもので、米国のがん拠点病院指定要件の1つになっているといいます。

CQI研究会の望月代表世話人は、我が国のがん患者の不安払しょくなどに向け、こうした仕組みについて研究していく必要があると強調しています。

米国グローバルヘルスコンサルティング会長のアキよしかわは、ハワイ州のクィーンズメディカルセンターにおいて、がん化学療法を受けながらキャンサーナビゲーター資格を得ており、「患者の視点」「ナビゲーターの視点」から見たキャンサーナビゲーションシステムについて報告を行う予定です。

 
後者の「がん医療からみた地域医療構想」に関する研究では、地域において各病院がどのような機能を果たしているのかを、「がん医療」という軸で研究するものです。がん拠点病院の視点要件見直しの一環として、地域(おもに2次医療圏)で複数のがん拠点病院がある場合には、「高度型」(最も優れた実績のあるがん拠点病院)と「それ以外」に分け、さらに要件の一部を満たせない「特殊型」については、特別の指導・支援を行うことになります。今般の研究は、この類型化とも関係してきます。来年度(2019年度)の第14回研究会では、千葉県(都市)と岩手県(地方)を対象に、地域での役割・機能を分析・研究する予定です。

現在CQI研究会では、がん医療の質向上を目指す会員を募集しています。会員条件は、がん診療連携拠点病院、もしくはそれに準ずる急性期病院となります。CQI研究会への入会を希望される場合やお問い合わせは、下記までご連絡ください。

(株)グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン
CQI研究会事務局
担当:森、八木
E-mail:cqi@ghc-j.com

 
 
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