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希少がん「皮膚血管肉腫」に対する「キイトルーダ点滴静注・レンビマカプセル併用療法」の医師主導治験を開始—国がん

2025.3.7.(金)

希少がん(本邦では人口100万人当たり2.5人に発症)である「皮膚血管肉腫」に対し、「ペムブロリズマブ」(販売名:キイトルーダ点滴静注100mg)と「レンバチニブ」(販売名:レンビマカプセル4mg、同カプセル10mg)の併用療法の有効性・安全性を評価する医師主導治験を開始する—。

国立がん研究センターが3月5日に、こうした研究方針を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

希少がん(人口100万人当たり2.5人)の皮膚血管肉腫の有効治療法開発を進める

希少がんは、患者数が少ないため「標準治療が十分に確立されていない(確立が困難)」「新しい薬剤治療を受けられる機会が限られる」といった問題があります。

血管の内側の内皮細胞ががん化した「皮膚血管肉腫」は、悪性度の高いがんですが、希少がん(本邦では人口100万人あたり2.5人程度の発症にとどまる)であるため、これまで有効な治療法が十分に開発されてきませんでした。

「皮膚血管肉腫」には、▼半数が頭皮に発生する▼高齢者や頭皮・顔面の外傷をきっかけに発生することが多い▼乳がん、子宮がんなどの手術後の「腕や足の浮腫が続く部位」「がん治療のための放射線照射部位」の皮膚にできることもある—などの特徴があります。

また、「皮膚血管肉腫」には、▼正確な範囲が分かりにくく、効果的な手術方法が定まっていないため手術での完全な切除が難しい▼手術後に再発や転移することが少なくない—という特徴があり、現状では「がん細胞を死滅または抑制する殺細胞性抗がん薬を用いた薬物療法」「放射線治療」「両者の組み合わせ」による治療が広く行われていますが、長期成績は芳しくありません。日本人は「髪が黒い」ため病変の発見が遅れがちであり、高齢者での発症が多いがん種であるため、高齢化が進む日本では「有効な新規治療」の開発が強く求められています。

そこで国がんの研究チームでは今般、次の2つの薬剤を組み合わせた治療(2剤併用療法)に注目。この併用療法は、子宮体がんや腎細胞がんの細胞増殖を抑える効果が報告されており、「皮膚血管肉腫」に対しても、より有効な治療法となる可能性があります。
(1)がん細胞を攻撃する免疫機能のブレーキを解除する抗がん剤である免疫チェックポイント阻害薬「ペムブロリズマブ」(販売名:キイトルーダ点滴静注100mg)
(2)がん組織に栄養を与える血管を新たに作り出すサインの伝達役を阻害する抗がん剤であるチロシンキナーゼ阻害薬「レンバチニブ」(販売名:)レンビマカプセル4mg、同カプセル10mg)

キイトルーダ点滴静注とレンビマカプセルの作用イメージ



ただし、両剤ともに「皮膚血管肉腫」に対する効能・効果は承認されておらず保険診療の中では使用できないため、今般、2剤併用療法を「医師主導治験」として実施することになりました。

具体的には、本医師主導治験に登録された患者全員に、次のような2薬剤投与を行い、2剤併用療法の有効性・安全性を確認します。

▽21日を1コースとして、ペムブロリズマブ(キイトルーダ点滴静注)とレンバチニブ(レンビマカプセル)を投与(ペムブロリズマブが効かなくなったり副作用が出たりする可能性があるため、最大35コースまでとする)

▽ペムブロリズマブ(キイトルーダ点滴静注)は、各コースの1日目に1回(21日間隔で)、静脈内に点滴で投与する

▽レンバチニブ(レンビマカプセル)は、毎日1回、なるべく同じ時間に内服する

【対象患者】(本医師主導治験の主な産科規準)
・組織の病理検査で「皮膚血管肉腫」と診断され、切除不能ながん組織がある
・免疫チェックポイント阻害薬および血管新生阻害薬による治療を受けたことがない
・年齢が18歳以上85歳以下
・血圧が安定しており、直近の血圧値が150/90 mmHg以下
・重篤な心疾患、胃腸疾患、肺疾患、糖尿病、感染症がない
・治っていないケガや傷がない
・妊娠可能な女性や妊娠可能な女性のパートナーの場合、避妊に協力する
・医師主導治験参加について、患者本人が文書で同意できる
(上記以外にも基準があり、上記基準に該当しても医師主導治験に参加できないケースがある)

【目標人数】
38名

【主な評価指標】
▽有効性を評価する主な指標
・奏効割合(特定の治療を受けた患者のうち、治療の効果がみられた患者の割合)
・生存期間(患者が本医師主導治験に登録された日から、原因にかかわらず死亡するまでの期間)
・奏効期間(治療の効果がみられた期間)

▽安全性を評価する主な指標
・副作用発現割合

【医師主導治験実施医療機関】
国立がん研究センター中央病院(東京都中央区、今後、実施医療機関を増やす予定)



この医師主導治験のデータは、現在闘病中の「皮膚血管肉腫」患者にとっても有用となるほか、将来の両剤の効能・効果拡大(保険適用に直結)を検討する際の重要な参考値となります。

今後も、優れた「がん治療法」の研究・開発が進むことに期待が集まります。



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