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GemMed塾 看護モニタリング

介護保険の要となる「ケアマネの確保、ケアマネ事業所の安定経営」、訪問介護人材の確保にどう対応すべきか—社保審・介護給付費分科会(2)

2023.7.26.(水)

ケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)の再編・統合が進んでいるように見るが、それでも当面は「ケアマネ事業所の安定経営確保」「ケアマネ人材の確保」が非常に重要となり、介護報酬上でどのような対応を進めるべきか—。

訪問介護の人材不足が非常に深刻であり、抜本的な対策を練っていく必要がある—。

訪問入浴介護は、重度者・看取り期に極めて重要なサービスであるが、対象者が限られる一方で、高コストであり、経営安定が非常に難しい点にどのように対応していくべきか—。

7月24日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こうした議論も行われました(同日の訪問看護・訪問リハビリに関する記事はこちら)。

ケアマネ事業所の再編・統合が進んでいるのか?ケアマネ事業所の経営安定が重要論点

2024年度の介護報酬改定論議が進んでいます。
【介護給付費分科会】
訪問看護、訪問リハビリ
通所リハビリ、短期入所生活介護、短期入所療養介護
通所介護、認知症対応型通所介護、療養通所介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、認知症対応型 共同生活介護
スケジュール等
ICT・ロボット活用等

【介護給付費分科会と中央社会保険医療協議会との意見交換会】
ACP等
訪問看護等
身体拘束ゼロ等
施設での医療、認知症等
要介護高齢者の急性期入院医療、リハ・口腔・栄養の一体的推進等



7月10日の分科会では、訪問系サービス((1)訪問介護(2)訪問入浴介護(3)訪問看護(4)訪問リハビリ(5)居宅療養管理指導(6)居宅介護支援(ケアマネジメント)(7)福祉用具・住宅改修—)を議題としました。本稿では、(6)のケアマネジメントのほか、訪問介護・訪問入浴介護・福祉用具・住宅改修などに焦点を合わせます(訪問看護・訪問リハビリに関する記事はこちら)。



ケアマネジメントは、専門職である介護支援専門員(ケアマネジャー、ケアマネ)が、利用者の状況、家族や居住家屋の状況、地域の介護資源の状況、医師や他職種の意見などを総合的に勘案し、「利用者の重度化防止、自立支援に向けて最適なサービス提供計画を作成する」介護保険ならではの仕組み・サービスです(介護保険制度の「要」に位置づけられている)。

高齢化に伴う介護保険利用者の増加、利用者ニーズの複雑化、サービス提供体制の複雑化、介護報酬の複雑化が進む中で、ケアマネジメント・ケアマネジャーの重要性は増す一方ですが、次のような課題も指摘されています。

(1)利用者が増加する中で、請求事業所は減少傾向にある

ケアマネ事業所数は減少傾向にある(介護給付費分科会(2)1 230724)



(2)ケアマネ事業所の経営状況は厳しい(2021年度の前回介護報酬改定後に平均での赤字を脱したが、依然、収支差率は低い水準である)

ケアマネ事業所の経営状況は厳しい(介護給付費分科会(2)2 230724)



(3)医療機関との情報連携(入院時、退院時)について更なる推進・改善の余地がある



まず(1)に関しては、介護保険制度の「要」であるケアマネ事業所の減少に危機感を覚えます。もっとも▼(2)の経営状況とも関連し「小規模な事業所では経営が不安定」である▼主任ケアマネ管理者要件(2021年4月以降、ケアマネ事業所(居宅介護支援事業所)の管理者は「主任ケアマネジャー」(主任介護支援専門員)であることを原則とする。ただし「2021年3月末時点で主任ケアマネ以外のケアマネが管理者であり続ける場合には、2027年3月まで原則の適用を猶予する、など」をクリアすることが難しい―ことなどを背景に「統合・再編が進んでいる」ためと見る向きもあります(実際にそうした動きはある)。ただし、「それにしては事業所数の減少幅が大きい」と見る識者も少なくありません。

この点について詳細な分析を進める必要がありますが、「ケアマネ資格取得者が減っている」「ケアマネ資格を保有しても、別の業務に携わる者が増えている」といった「ケアマネ人材不足」が指摘される中では、やはり「当面はケアマネ事業所の拡大、ケアマネ養成の推進を図る」必要がありそうです。

ケアマネ人材確保が難しくなってきてる(介護給付費分科会(2)3 230724)



この点について介護給付費分科会では、「主任ケアマネとケアマネ事業所管理者とでは役割が異なる。主任ケアマネ管理者要件を見直し、主任ケアマネの有効活用を図るとともに、業務効率化、ICT化の推進や管理業務負担の軽減などを図り、働きやすい職場環境を整えるえき」(稲葉雅之委員:民間介護事業推進委員会代表委員)、「地域医療介護総合確保基金を活用した、主任ケアマネ研修などの費用助成を拡大すべき」(小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、「ケアマネ業務が、利用者・家族の意見調整調整、主治医とのスケジュール調整、ヤングケアラー対応など幅広くなる中で現場が疲弊し、都市部でもケアマネ確保が困難になってきている。ケアマネ報酬の充実を含め、複合的な支援強化が必須である」(長内繁樹委員:全国市長会、大阪府豊中市長)、「ケアマネについても処遇改善加算などの対象に含めたり、基本報酬を大幅に引き上げるなど、処遇改善に向けた環境を整えるほか、主任ケアマネ研修の受講推進策を強化すべき」(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)、「主任ケアマネ研修の受講要件が厳しすぎるのではないか、またケアマネ試験の内容が厳しすぎるとの指摘もある。研修内容・試験内容の見直しなどを検討すべき」(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)などの意見が出ています。介護報酬で対応できる提案内容と、それ以外の施策で対応すべき提案内容が含まれており、厚労省で整理し、秋以降の第2ラウンド論議につなげられます。



また(3)は、ケアマネと医療サイドとの連携をより充実することで、より質の高い医療・介護サービスの実現を目指すものです。例えば、在宅の要介護者が入院する際に、ケアマネから「日頃の患者の生活状況、認知機能やADLなどの状況、介護保険の利用状況」の情報が入院医療機関に正確に伝達されることで、より適切な入院医療提供が可能になります。また、退院時に入院医療機関からケアマネに「傷病の治療経過、退院後に留意すべき点」などの情報が伝達されれば、より適切な在宅医療・介護サービス提供が可能となり、在宅限界が高まります。さらに、在宅療養中の要介護者が通院する際、ケアマネが同行し「日頃の患者の生活状況、介護保険の利用状況」などを医師に伝達することで、より適切な医療サービスにつながります。

こうした取り組みは、例えばケアマネ報酬(居宅介護支援費)において「入院時情報連携加算」や「通院時情報連携加算」として評価されていますが、算定状況は「横這い」「微減」となっています。

ケアマネの入院時情報連携加算、通院時情報連携加算の算定は横ばい・微減で推移している(介護給付費分科会(2)4 230724)



また、ケアマネから入院医療機関への情報提供時期を見ると、「入院当日から3日以内」が8割超を占めていますが、一部には10日以上かかっているケースもあります。より密な連携関係を構築することで、「より早期の情報提供・共有」が期待できます。

ケアマネから入院医療機関の連携のほとんどは3日以内に行われているが、一部に時間のかかるケースもある(介護給付費分科会(2)5 230724)



この点については、「ケアマネからの医療機関への情報提供について、評価を充実してはどうか」(古谷忠之委員:全国老人福祉施設協議会参与)、「入院時情報連携加算の算定要件等を見直し、より早期の情報連携につとめるべき」(井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事)、「ケアマネからの情報伝達についてICT活用や、運用の簡素化も図るべき」(濵田委員)などの提案が出ています。例えば、入院時情報連携加算については、3日以内の連携であれば200単位(加算I)が、4-7日の連携であれば100単位(加算II)を算定可能という具合に、「早期の連携をより高く評価する」仕組みとなっています。今後、「より早期の情報連携をさらに高く評価し、時間がかかった場合の評価を引き下げる」などの対応が考えられそうですが、「ケアマネサイドで、情報連携に時間がかかる背景に何があるのか」などを詳しく探ったうえで、見直し内容を考える必要があります。

なお、自治体サイドからは「ICT化を進める場合には、機器購入や操作技術講習などの面でのサポートも重要である」との意見が出ている点に留意が必要です。

訪問介護の人手不足は深刻、重度者への訪問入浴介護をどう維持すべきか

また、7月24日の介護給付費分科会では、「訪問介護」「訪問入浴介護」「居宅療養管理指導」「福祉用具・住宅改修」に関して、次のような総論論議も行われています。

【訪問介護】
▽人手不足が極めて深刻(2022年度時点で有効求人倍率は15.53倍、8割の事業所が訪問介護員の不足を感じている。また人手不足を理由にサービス提供を断るケースも非常に多い)であり、また現在のスタッフの高齢化(介護職種全体では平均年齢は50.0歳、65歳以上割合は14.6%だが、訪問介護では平均年齢は54.4歳、65歳以上割合は24.4%)が進んでおり、「効果的な人材確保対策」(より大幅な処遇改善など)が必要と思われるが、「処遇改善で解決になるのか」も十分に考える必要がある
▽地方では「移動コスト」(時間、ガソリン代など)が極めて大きく、そうした点への配慮も必要である
▽都会では「駐車場確保」などの問題が逆に生じることがある点に留意が必要である
▽患者の居宅中心に行う訪問介護と、サービス付き高齢者向け住宅併設事業所からの訪問介護では、内容もコストも大きく異なるのではないか。両者を分けて議論すべき

訪問介護人材の不足は深刻である(介護給付費分科会(2)6 230724)

訪問介護人材不足によるサービスお断りもある(介護給付費分科会(2)7 230724)

訪問介護人材の高齢化がさらに進んでいる(介護給付費分科会(2)8 230724)



【訪問入浴介護】
▽要介護度高い重度者、看取り期において、極めて重要な介護サービスであるが、事業所数の減少が続いている(対象者が限定され、一方で高コストであり経営安定化が困難)。看取り期などの入浴介助における特性(褥瘡等の保護・防水処理、呼吸状態や意識状態など)を踏まえた報酬上の対応が必要ではないか

訪問入浴介護の利用者は要介護4・5が多い(介護給付費分科会(2)9 230724)

看取り期の訪問入浴介護には特別な配慮が必要とな(介護給付費分科会(2)10 230724)



【居宅療養管理指導】
▽オンラインでの療養支援、服薬指導なども重要だが、対象が「高齢の要介護者」である点を踏まえた慎重な対応が必要ではないかある
▽ケアマネと医療職種との連携をさらに強化していく必要がある

【福祉用具・住宅改修】
▽福祉用具について「貸与から購入へのシフト」が検討されているが、最も重要なのは費用面よりも「利用者の安全確保」である点を忘れてはならない



とりわけ「訪問介護人材の不足」が深刻な問題ですが、大幅な処遇改善には莫大な予算が必要となることから、そう容易には実現できません。この点、日本慢性期医療協会では「人手(介護者)が限られ、増加が見込めない中では、要介護者を減らしていくしかない」と強調し、寝たきり防止などに力を入れることを提言しています(関連記事はこちらこちら)。こうした「違った角度からの検討」も非常に重要になってくるでしょう。



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