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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

原則として「すべての医療法人」がG-MIS用いて毎年度の経営情報を都道府県・国に報告、報告内容や期限などの詳細を厚労省が解説

2023.8.4.(金)

原則として、すべての医療法人にG-MIS用いて毎年度の経営情報を報告する義務が課されます。

厚生労働省は7月31日に、▼「医療法施行規則の一部を改正する省令」▼通知「医療法人に関する情報の調査及び分析等について」▼事務連絡「医療法施行規則の一部を改正する省令」「『医療法人に関する情報の調査及び分析等』の取扱いについて」—を示し、こうした点を明確にしました。8月1日から施行・適用されています。

職種別の給与などは「任意」報告である点を明確化

昨年(2022年)11月の「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、医療法を改正し▼「医療法人の経営情報データベース」を構築する▼一部の小規模法人を除き、原則、すべての医療法人に経営情報の提出を義務付ける▼データベースを活用し、医療政策の企画・立案、医療従事者の処遇改善、医療機関の経営支援などを行う▼医療法人の経営状況に関する情報を広く国民に提供するとともに、医療経済研究に向けたデータの第三者提供を行う—方針が固められ、その後、「医療部会での審議」→「国会での改正法案の審議」を経て、改正法が成立しました(関連記事はこちら)。

医療法人経営情報データベース等の大枠(社保審・医療部会(1)2 230707)



事業報告書のネット提出など一部事項が8月1日に施行されるため、今般、改正省令や関連通知、事務連絡が示されたものです(改正省令に関する社会保障審議会・医療部会での報告に関する記事はこちら)。これまでに報じた内容と重複しますが、改めて制度改正内容を眺めてみましょう。

まず、経営状況等のネット報告が義務付けられるのは「原則として、全ての医療法人」です。ただし、いわゆる「四段階税制」が適用される場合には、当該会計年度はネット報告義務が除外されます。

四段階税制は、小規模なクリニックについて、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする仕組みで、2020年度には61法人に適用されています。これら小規模法人は、データ提出負担を考慮して「データ提出義務を免除する」ものです(もちろん任意でデータ提出することは妨げられない)。



経営情報等の報告方法は、次のいずれかとなります。
(1)医療機関等情報支援システム(G-MIS)から様式をダウンロードし、これに記入した上でG-MISにアップロードすることにより報告する方法
(2)(1)による提出が難しい場合に、事業報告書等の届け出と併せて、郵送等により書面で提出をする方法



医療法人の報告期限は「当該医療法人の会計年度終了後3か月以内」ですが、外部監査が適用される医療法人(医療法第51条第2項の「負債合計額50億円以上、または事業収益合計が70億円以上の医療法人」「負債合計額20億円以上、または事業収益合計が10億円以上の社会医療法人」「社会医療法人債発行法人である社会医療法人」:医療法施行規則第33条の2)では「当該医療法人の毎会計年度終了後4か月以内」となります。



報告すべき内容は、次の事項です(どの科目にどのような事項が含まれるのかなどの詳細は▼通知事務連絡—で解説されています)。

▽病院等(病院・クリニック)の基本情報
▼医療法人整理番号(医療法人マスタで確認可能)、法人番号(は国税庁法人番号公表サイトで確認可能)
▼医療機関を表す番号(病床・外来管理番号:病床機能報告対象病院等・外来機能報告対象病院等に付された番号)、医療機関コード(保険医療機関として指定された病院等に付された番号、保険指定されていない場合には記載不要)
▼法人の正式名称、医療機関の正式名称、役員の人数(7月1日時点)、職員の人数(7月1日時点)、医療機関の所在地、会計期間、消費税の経理方式、診療所では主たる診療科(7月1日時点)

▽病院等の収益・費用の内容
▼医業収益
・入院診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・室料差額収益
・外来診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・その他の医業収益(保健予防活動収益(任意)、運営費補助金収益)
▼医業費用
・材料費(医薬品費、診療材料費・医療消耗器具備品費、給食用材料費)
・給与費(役員報酬、給料、賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利費)
・委託費(給食委託費)
・設備関係費(減価償却費、器機賃借料)
・研究研修費
・経費(水道光熱費)
・控除対象外消費税等負担額
・本部費配賦額
▼医業利益(または医業損失)
▼医業外収益(受取利息および配当金(任意)、運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼医業外費用(支払利息(任意))
▼経常利益(または経常損失)
▼臨時収益(運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼臨時費用
▼税引前当期純利益(または税引前当期純損失)
▼法人税、住民税および事業税負担額(任意)
▼当期純利益または当期純損失

▽クリニックの収益および費用の科目
▼医業収益
・入院診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・外来診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・その他の医業収益(保健予防活動収益(任意)、運営費補助金収益)
▼医業費用
・材料費(医薬品費、診療材料費・医療消耗器具備品費、給食用材料費)
・給与費(役員報酬、給料、賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利費)
・委託費(給食委託費(任意))
・減価償却費
・器機賃借料
・その他の医業費用(水道光熱費、控除対象外消費税等負担額、本部費配賦額(任意))
▼医業利益(または医業損失)
▼医業外収益(受取利息および配当金(任意)、運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼医業外費用(支払利息(任意))
▼経常利益(または経常損失)
▼臨時収益(任意)(運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼臨時費用(任意)
▼税引前当期純利益または税引前当期純損失
▼法人税、住民税および事業税負担額(任意)
▼当期純利益(または当期純損失)

▽病院等の職員の職種別人員数、その他の人員に関する事項
▼職種別の給与総額、およびその人数に係る職種(任意、1月1日から12月31日までの1年間(医療法人の会計年度内の12月31日を末日とする1年間)、これによりがたい場合は会計年度)
<職種>医師、歯科医師、薬剤師、看護職員(保健師、助産師、看護師、准看護師)、その他の医療技術者等(診療放射線技師、臨床工学技士、臨床 検査技師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士)、歯科衛生士、歯科技工士、栄養士等(管理栄養士、栄養士、調理師)、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、看護補助者、事務職員(事務(総務、人事、財務、医事等)担当職員、医師事務作業 補助者、診療情報管理士)、その他の職員)
<上記の報告に係る対象期間>



医療現場の負担を考慮し「職種別給与」については「任意報告」とすることが明示されています。また小規模医療法人においては、例えば「薬剤師は1人配置のみ」で、職種別給与=当該個人の給与費であり、個人情報保護の観点で問題があるといった点への配慮の意味もあります。



医療法人は「主たる事務所が所在する都道府県」に経営情報などの報告を行います(広域展開する場合も主たる事務所が所在する都道府県へ報告)が、都道府県がG-MIS等を活用して厚生労働大臣にデータを提出し、当該データの管理は厚生労働大臣が一元的に行います(厚生労働大臣が福祉医療機構(WAM)に分析を依頼)。広域事業展開する医療法人も少なくないためです。

ただし、厚生労働大臣等は都道府県に対して「区域内の医療機関の状況」を提示し、都道府県はこれを踏まえた分析・公表を行う努力義務が課されている点にも留意が必要です。



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