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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

かかりつけ医機能報告制度の詳細が概ね固まる、17診療領域・40疾患等への対応状況報告を全医療機関に求める—かかりつけ医機能分科会

2024.7.8.(月)

2025年4月から「かかりつけ医機能報告」制度などが施行されるが、報告内容としては「かかりつけ医にかかる研修を修了した医師や総合診療専門医が配置されているかどうか」(配置されていないという報告も可)、「17診療領域に対応しているか、日常的な40程度の疾患へ対応できるか、患者の相談に応じられるか」などとする—。

これにより、ほぼすべての医療機関(特定機能病院、歯科診療所を除く)について「かかりつけ医機能を持っているか否か、持っているとすればどのような内容なのか」が明らかにされ、「患者がかかりつけ医機能を持つ医療機関を選択する場面でのサポート」にも、「地域全体でかかりつけ医機能の充実を図るための議論」にも応えられる報告制度となる—。

7月5日に開催された「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(以下、分科会)で、こういった内容がほぼ固められました。分科会では7月中に意見とりまとめ、その後の「省令等改正」「かかりつけ医機能報告ガイドライン等作成」「医療機能情報提供制度見直し(かかりつけ医機能の掲載等)」などにつなげます。

7月5日に開催された「第7回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科」

かかりつけ医機能にかかる研修修了者、総合診療専門医の有無について報告を求める

2023年の医療法改正(「全世代対応型の持続可能な社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」の一部)により、(1)医療機能情報提供制度の刷新(本年(2024年)4月施行済)(2)かかりつけ医機能報告の創設(来年(2025年)4月施行)(3)慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化(来年(2025年)4月施行)—を行うことになりました。

「まずかかりつけ医を受診し、そこから基幹病院の専門外来を紹介してもらう。専門外来での治療が一定程度終了した後には、かかりつけ医に逆紹介を行う」という外来医療の流れ・機能分化を推し進めると同時に、地域包括ケアシステムの中で極めて重要な役割を果たす「かかりつけ医機能を持つ医療機関」の明確化を図る狙いがあり、分科会で「かかりつけ医機能報告制度」等の詳細を詰めています。

かかりつけ医機能が発揮される制度整備1

かかりつけ医機能が発揮される制度整備2



かかりつけ医機能報告制度の大枠は、次のように整理できます。
(A)医療機関が、自院が「かかりつけ医機能を持っているか、持っている場合、どのようなものか」を毎年度、都道府県に報告する

(B)都道府県は報告内容をもとに、「どの医療機関がどのようなかかりつけ医機能を持っているのか」を医療機能情報提供制度を活用して公表し、住民の医療機関選択をサポートする

(C)地域の協議の場において、「地域に不足するかかりつけ医機能は何か」を明確にし、関係者で膝を突き合わせて「不足する機能を充実するためにどうすればよいか」を協議し、地域のかかりつけ医機能の底上げを図る



このうち、報告すべき「どのようなかかりつけ医機能を持っているか」という点について、「症状・症候への対応力報告を求める」べきとする考えと、「診療領域報告を求める」べきとの考えとが対立していました(関連記事はこちらこちら)。前者は「患者が医療機関を選択する際には、医療機関が『どのような症候・症状に対応可能か』という情報が重要である」との考えに基づくもの、後者は「地域全体でのかかりつけ医機能を考える際には、医療機関の『診療領域や専門性』の情報が重要である」との考えに基づくものと言え、いずれの考えにも合理性があります。

また、「かかりつけ医機能に関する研修を修了した医師や総合診療専門医が配置されていることを、かかりつけ医機能の要件とする」べきか、それとも「当面は、かかりつけ医機能に関する研修を修了した医師や総合診療専門医が配置されているかどうかを明らかにする」ことで十分か、という点でも意見が分かれていました。

7月5日の分科会では、こうした意見を踏まえて、厚生労働省大臣官房の高宮裕介参事官(救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)がそれぞれの考え方を整理した複数案を再提示。

新たな医豪機能案(かかりつけ医機能分科会1 240705)



分科会では、その複数案を討議し、次のような考え方を固めました。

研修については「案2」、機能については「案3」で分科会意見がまとまった(かかりつけ医機能分科会2 240705)



◎次の(1)から(3)すべてを満たす医療機関について「かかりつけ医機能を持つ」と考える(詳細な報告の流れなどは後述)

(1)「具体的な機能」を有すること、「報告事項」について院内掲示により公表していること

(2)かかりつけ医機能に関する研修修了者の有無、総合診療専門医の有無を報告すること
→施行5年後に、研修充実の状況等を踏まえ、「研修修了者・総合診療専門医に関する要件」を改めて検討する

(3)17診療領域ごとの1次診療対応可能の有無を報告・1次診療の実施を行うこと、1次診療を行える疾患の報告を行うこと、医療に関する患者からの相談に応じられること(継続的な医療を要する者への継続的な相談対応を含む)

[17診療領域]
皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系および外傷領域、小児領域

[1次疾患を行える診療の範囲例](患者調査をもとに外来患者数の多い疾患をピックアップ、さらに精査する)
高血圧、腰痛症、関節症(関節リウマチ、脱臼)、かぜ・感冒、皮膚の疾患、糖尿病、外傷、脂質異常症、下痢・胃腸炎、慢性腎臓病、がん、喘息・COPD、アレルギー性鼻炎、うつ(気分障害、躁うつ病)、骨折、結膜炎・角膜炎・涙腺炎、白内障、緑内障、骨粗しょう症、不安・ストレス(神経症)、認知症、脳梗塞、統合失調症、中耳炎・外耳炎、睡眠障害、不整脈、近視・遠視・老眼、前立腺肥大症、狭心症、正常妊娠・産じょくの管理、心不全、便秘、頭痛(片頭痛)、末梢神経障害、難聴、頚腕症候群、更年期障害、慢性肝炎(肝硬変、ウイルス性肝炎)、貧血、乳房の疾患

1号機能における「1次診療対応可能な疾患」の例、患者調査から「外来患者」の多い疾患をピックアップ(かかりつけ医機能分科会3 240705)



このうち(2)の「研修」については、現時点で「かかりつけ医機能に関する研修」の内容が固まっていないこと、総合診療専門医の養成開始からそれほど時間が経過していないことから、「研修修了者、総合診療専門医の配置」を要件とすれば、「かかりつけ医機能を持っている医療機関」がごくごく限られてしまい、後述するように「地域でのかかりつけ医機能の底上げ・充実」論議に大きな弊害が出てしまいます。そこで、当面は「研修修了者の有無、総合診療専門医の有無」に関する報告のみを求めることとするものです。「研修修了者はいない、総合診療専門医もいない」と報告することで十分とされます。

また、今後、かかりつけ医機能に関する研修内容を明確化し、研修受講の推進が進められ、研修修了者や総合診療専門医の配置が各医療機関で相当進むと考えられます。そこで5年後を目途に「研修等に関する要件」の在り方を改めて検討することになります。

17診療領域での対応、日常的な40疾患等への対応状況などの報告を求める

また、(3)では、例えば「17診療領域のいずれに対応しているかをチェックするとともに、40疾患のいずれに対応できるかをチェックし、それを都道府県に報告する」というイメージが浮かびます(診療領域と疾患が紐づくものもある(目の疾患は眼科など)ためどういったチェック方法にするなどは今後、技術的に検討する)。

「診療領域」の報告をもとに「地域のかかりつけ医機能充実」に向けた議論が可能となり(この点を重視する構成員の要望を満たせる)、「疾患への対応」の報告をもとに「患者の医療機関選択をサポートする」ことも可能(この点を強く求める構成員の要望にも応えている)となります。

患者の医療機関選択という視点からは「どのような症状、症候に対応できるのか」という情報が有用ですが、「報告すべき症状、症候をどのように設定するか」が確立されていません。これまでに示された「35症状」の中にも「リンパ節腫脹など、患者にとって必ずしも分かりやすいか疑問なもの」が含まれることや、そもそも「35症状は、臨床研修での目標であり、本来はすべての医師が対応可能なもの」であることから、「このままかかりつけ医機能報告制度に載せることは好ましくない」との声も多数出されていました。

そこで、患者調査をもとに「外来患者が多い疾患」をピックアップし、「それらへの対応能力」を報告してもらうことに落ち着いたと言えます。この点、「産褥」や「頚腕障害」など、一般国民にはなじみのない疾患名も含まれており、「一般国民に公開する際には工夫(疾患の説明を行うなど)が必要である」と山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)は指摘しています。

ただし、患者が「自分はどの疾患に罹患しているのか」を正確に判断することは不可能であり、やはり5年後を目途に「どのような症状、症候に対応できるのかを報告してもらう仕組みへと見直すべき」との声も河本滋史構成員(健康保険組合連合会専務理事)らから出ています。

また医師も医療機関も万能ではないため、「自院ですべての訴えに、患者が満足する程度の対応を行う」ことは不可能です。しかし「その症状などは専門外なので分かりません」とけんもほろろな対応を取られたのでは、患者は「どこに行けばよいのか分からない」と不安になります。そこで、(3)の後段「医療に関する患者からの相談に応じられる」要件を設け、「自院の専門外、カバーする診療領域外の相談内容であっても、門前払いにせずに相談に応じ、必要に応じて当該相談内容に応じられる医療機関等を紹介する」ことを求めるものと言えます。医療・医学に明るくない患者が「自分で医療機関を探す」よりも、医療・医学の専門家である医師等が「そうした症状であれば、●●病院にかかってはどうか」などと紹介してくれれば患者は安心できます。「かかりつけ医機能を持つ医療機関」に、我々一般国民はそうした対応をとっていただくことを強く期待しています。

なお、1号機能の要件ではありませんが、▼医師数、外来の看護師数、専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了看護師数▼かかりつけ医機能に関する研修の修了者数、総合診療専門医数▼全国医療情報プラットフォームに参加・活用する体制の有無(オンライン資格確認を行う体制、オンライン資格確認等システムの活用により診療情報等を診察室等で閲覧・活用できる体制、電子処方箋により処方箋を発行できる体制、電子カルテ情報共有サービスにより取得される診療情報等を活用する体制▼全国医療情報プラットフォームの参加・活用状況、服薬の一元管理の実施状況—についても報告が求められます。全国医療情報プラットフォームは、医療DXの基盤であり、かかりつけ医間・かかりつけ医と他医療機関等との情報連携において極めて重要です。多くの医療機関が体制を整備することに期待が集まります。

全国医療情報プラットフォームの一部に、介護情報を広く関係者で共有し「質の高い介護サービス提供」を目指す【介護情報基盤】を構築する(介護情報利活用ワーキング1 240205)

ほぼすべての医療機関が「かかりつけ医機能の状況」を毎年、都道府県に報告へ

ところで、かかりつけ医機能報告制度は、医療法上、次のような複雑な立て付けとなっています。
▽報告対象対象医療機関(特定機能病院・歯科診療所以外のすべての病院・診療所)は、「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療、その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」を持っているか否かと、持つ場合にはその機能の内容を都道府県に報告する(医療法第30条の18の4第1項目第1号に規定されているため、法令では「1号機能」と呼ばれる)

▽対象医療機関のうち「(1)の機能(1号機能)を持つ医療機関」は、▼時間外の診療▼病状が急変した場合の入院支援、病院等からの退院支援▼在宅医療対応▼介護連携—などの機能を持っているか否かと、持つ場合にはその機能の内容を都道府県に報告する(同第2号に規定されているため、「2号機能」と呼ばれる)

かかりつ医機能報告制度の医療法上の立て付け(Gem Med編集部で作成)



つまり、1号機能を持たない医療機関は、時間外対応や在宅医療対応などの2号機能報告を行わないのです。

この点、「地域全体でのかかりつけ医機能の充実」を議論する視点からは、「どの医療機関が時間外対応や在宅医療対応などを行っているのか」などのデータが幅広く報告・集積されることが重要です。さもなければ「実際の時間外対応を行う医療機関はどの程度あるのか、在宅医療対応を行う医療機関がどこに何か所あるのか」が分からず、地域の医療提供体制を考えていくことができないためです。

このため、例えば城守国斗構成員(日本医師会常任理事)や織田正道構成員(全日本病院協会副会長)らは「1号機能は厳格に設定せず、できるだけ多くの医療機関が報告できるようにすべき」と述べていました。

上述の(1)から(3)を持つ医療機関が、すなわち「1号機能を持つ医療機関」となり、時間外対応や在宅医療などの「2号機能をどの程度持っているのか」(時間外対応をしているのか、在宅医療を行っているのか)を報告することになります。

翻って、上述の(1)から(3)を見ると、ほぼすべての医療機関が「1号機能を持つ」ことになるでしょう。「17診療領域のいずれにも対応してない」医療機関や、「40疾患のいずれにも対応できない」医療機関はまず存在しないと考えられ、城守構成員らの主張にもマッチする内容と言えます。

なお、医療法の「1号機能を持つ医療機関のみが2号機能を報告する」とする立て付けには疑問の声も出ており(関連記事はこちら)、5年後を目途とした「かかりつけ医機能報告制度の見直し、検証」の際には、この点の見直しも検討される可能性があります。例えば「対象医療機関は、1号機能・2号機能の両方を報告する義務を負う」などの見直しを行えば、「1号機能を厳しく設定し、例えば、かかりつけ医機能にかかる研修を修了した医師等が配置されている医療機関のみが1号機能を有すると考える」とした場合でも、時間外対応や在宅医療対応などの2号機能は、すべての医療機関から報告されるために「「地域でのかかりつけ医機能の底上げ・充実」論議に弊害は出なくなります。こうした点にどう対応していくのかも、今後、注目していく必要があります。

さらに、▼2号機能(時間外加算、深夜加算、休日加算の算定状況などの報告も新たに求める)▼患者への書面等を用いた説明(2号機能を持つ医療機関に努力義務となる)▼一般国民への情報提供(医療機能情報提供制度「ナビイ」で、上述のかかりつけ医機能を持つ医療機関を検索可能とする)▼協議の場での議論の進め方▼かかりつけ医機能が発揮されるための基盤整備、国等による支援—などの方向も概ね了承されました(関連記事はこちら(情報提供など)こちら(地域における協議など)こちら(2号機能など))。

2号機能について、「時間外加算、深夜加算、休日加算の算定状況」報告を求める(かかりつけ医機能分科会4 240705)

2号機能について、「健康相談」を削除する(かかりつけ医機能分科会5 240705)



この点について香取照幸構成員(未来研究所臥龍代表理事/兵庫県立大学大学院特任教授)は「協議の場をテーマごとに設置することとなれば、参加者の顔ぶれも変わってくるであろう。その際、ガイドライン等で『誰が、どのような役割を期待されて協議の場に参加するのか』などを分かりやすく示すべき。またかかりつけ医機能報告制度は、新たな地域医療構想の1要素ともなる。地域医療構想や介護保険事業(支援)計画の中で、かかりつけ医機能を持つ医療機関が、どのような位置づけとなるのかなども明確にすべき」と提案。

とりわけ「市町村の役割」も重要となりますが、市町村は医療行政などに詳しくないケースが多い(とりわけ小規模自治体)ため、「都道府県等によるサポート」を十分に手当すべきと大橋博樹構成員(日本プライマリ・ケア連合学会副理事長/多摩ファミリークリニック院長)や今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は強調しています。



分科会では、7月中に「意見のとりまとめ」を行い、その後の「省令等改正」「かかりつけ医機能報告ガイドライン等作成」「医療機能情報提供制度見直し(かかりつけ医機能の掲載等)」などにつなげます。



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