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物価・人件費等の急騰で病院経営は危機、入院基本料の大幅引き上げ・人員配置によらないアウトカム評価の導入などが必要—日病協

2025.4.21.(月)

昨今の物価・人件費等の急騰に対応できるよう、病院収益の柱である「入院基本料」の大幅な引き上げ、「コスト上昇に迅速に対応できる診療報酬上の新たな仕組み」の導入などを求める—。

また、人材確保が困難となる中で「人員配置でなく、アウトカムやプロセスを評価する仕組み」を段階的に導入してほしい—。

医療DX推進のためのコスト、食事提供に係るコストを十分に賄えるような診療報酬上の対応を求める—。

医療DXを推進し、サイバー攻撃に備えるために「ICT対応への診療報酬評価」を充実せよ—。

日本病院団体協議会が4月16日、福岡資麿厚生労働大臣に宛てて、こうした内容を盛り込んだ「令和7年度(2026年度)診療報酬改定に係る要望書【第1報】」を提出しました(厚生労働省保険局医療課の林修一郎課長が代理受領、日本病院会のサイトはこちら)(関連記事はこちら)。

4月16日に日病協幹部が2026年度診療報酬改定に向けた要望書(第1報)を提出。向かって左から、津留英智・全日本病院協会常任理事)、林修一郎・厚生労働省保険局医療課長、望月泉・日病協議長(会長全国自治体病院協議会会長)、猪口雄二・日病協副議長(全日本病院協会会長)、仲井培雄・日病協前議長(地域包括ケア推進病棟協会会長)(敬称略)

「物価・人件費の急騰」に迅速に対応できる診療報酬の仕組みを導入せよ

日本病院団体協議会は、日本病院会、日本私立医科大学協会、地域医療振興協会など15の病院団体で構成される組織で、主に「診療報酬改定に向けて病院団体の意見をすり合わせ、共同提案・要望を行う」などの活動をしています(もちろん、診療報酬以外の医療の諸課題についても議論を行っている)。

2026年度には診療報酬改定が予定され、すでに中央社会保険医療協議会でキックオフ議論が行われており、具体的な診療報酬項目の議論に入る前に「医療を取り巻く状況」などの確認を行う方針を固めています。こうした状況を踏まえ、今般「総論的な要望」となる第1報を福岡厚労相に提出しました。今秋には、より具体的・個別的な「第2報」が提出されます。

要望書ではまず、エネルギー価格上昇・円安・経済のインフレ基調により「物価高騰・人件費高騰」が続く(消費者物価指数(総合指数)は2020年を100とすると2024年度は108.5となっている)中、一般企業は物価・賃上げコスト増を商品やサービス提供価格に転嫁できるが「医療機関はコスト増を診療報酬に上乗せすることが出来ない」点を強調。結果として「病院経営はこれまでに経験のない極めて厳しい状況」におかれており、「地域医療を破綻させない、安心・安全を守れる、ある程度余裕を持たせた診療報酬改定」が必要と訴えます。

さらに、「社会保障関係費の伸びを高齢化の伸びの範囲内に抑制する」との財政フレームの根本的な見直しも要望しました(関連記事はこちら)。

こうした前提に立って日病協では、2026年度診療報酬改定にむけて次の5点を実現するよう要望しています。
(1)入院基本料の引上げ
→諸物価・人件費・各委託費の高騰、建築費の高騰などのコストが上昇する中でも、病院経営の持続性確保・質の高い医療サービス提供の維持・患者への適切なケアを継続することが可能となるよう「入院基本料の大幅な引き上げ」を要望する

(2)物価高騰や人件費高騰に適切に対応する仕組みの導入
→2年に1度の診療報酬改定では「物価・人件費高騰のスピード」に対応できないために病院経営が悪化している
→「コスト上昇に迅速に対応できる診療報酬上の新たな仕組み」(自動調整システム、加算制度等)の導入を要望する

(3)「人員配置を基本要件とした従来型の診療報酬体系」の抜本的な見直し
→少子超高齢社会の到来により医療スタッフの確保は困難を極め、看護補助者や事務職員等の処遇が一般企業の賃上げに追い付かないために他業種への人材流出に歯止めが掛からない
→「人員配置基準ありき」の診療報酬体系を柔軟化し、「医療の質やアウトカム評価、医療サービス提供の質を維持するためのプロセス評価」などの段階的な導入を要望する

(4)医療DX推進に係る費用に対する適切な評価
→マンパワー確保が困難な中で、医療の質を維持するために医療DXの推進が避けられないが、相当の初期投資と維持費(ランニングコスト)、人材育成が必要となる。電子カルテについてもベンダーから物価高騰、人件費高騰を踏まえて巨額の更新費用を求められており、病院経営を著しく圧迫する原因となっている
→「医療DXの推進に係る費用」に対する適切な評価の仕組み導入を要望する

(5)入院時食事療養費に対する継続的かつ適切な評価
→入院時食事療養費について、1食当たり2024年度に「+30円」2025年度に「+20年」の引き上げが行われたが、今なお各医療機関における給食部門はほぼ赤字の状態から改善していない
→現状の「食材費・人件費・給食委託費の高騰に見合う適切な評価」を要望する



今後の2026年度診療報酬改定に向けた中央社会保険医療協議会等の議論に注目が集まります。



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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