要支援者への訪問・通所サービス、総合事業への移行後も「適切な単価」設定を―厚労省
2016.10.31.(月)
要支援者に対する訪問・通所サービスの、市町村の総合事業への移行に関連して、「従前の介護保険サービス相当」のサービスについては、専門的なサービスであることを踏まえた十分な単価とする必要がある―。
厚生労働省は27日に行った事務連絡「介護予防・日常生活支援総合事業の円滑な施行について」の中で、自治体に対してこういった注意喚起を行いました(関連記事はこちら)。
不適切な「単価切り下げ」は、事業所の総合事業からの撤退を招いてしまう
2014年の介護保険制度改革の一環として、要支援者に対する訪問・通所サービスを介護保険給付から、市町村の総合事業(地域支援事業のうちの、介護予防・日常生活支援総合事業)に移管することになりました。完全移行は2017年4月とされ、現在、移行が進められている最中で、2016年4月時点では78自治体で移行が完了しています(関連記事はこちら)。
この移管の目的は「市町村が地域の実情に応じて多様なサービスを展開する」ところにあります。従前と同じ「専門的なサービス」(従前相当サービス)だけでなく、ボランティアを積極的に活用したサービスや、保健師を中心とした訪問指導など、さまざまなサービスを厚労省は例示しています。
しかし、介護保険制度改革を議論する社会保障審議会・介護保険部会では複数の委員から「介護保険給付から総合事業への移管に伴い、サービス単価が引き下げられるケースが少なくない。これでは総合事業から介護事業者は撤退してしまい、移管が進んでいかない」といった厳しい指摘がなされています。これを重く見て厚労省は今般、サービス単価は次のように設定することを改めて周知しています。
▼従前相当サービス:訪問介護員などによる専門的サービスであることなどを踏まえ、地域の実情に応じて、ふさわしい単価を定める
▼基準を緩和したサービス:サービス内容や時間、基準などを踏まえ、ふさわしい単価を定める
▼直接実施の場合の費用:直接実施、委託および補助(助成)の場合、それぞれの費用額・委託額・補助額は、「それぞれの利用者見込み数で除した額」が、「介護予防訪問介護などの単価以下の額」となるよう設定する。ただし、保健・医療の専門職により提供される3-6か付きの短期間サービスは子の限りではない
さらに厚労省は、「サービス単価は、事業者の採算に影響を与えるため、これまで築き上げてきた地域や事業者との関係性を損ねることのないように考慮する」「根拠に基づく説明により、サービス事業者をはじめとした関係機関と十分な協議を重ねる」ことを求めるとともに、「介護専門職以外の担い手」の確保にも十分に力を注ぐ(生活支援体制整備事業において、地域支援事業交付金の活用が可能)よう訴えています。
なお厚労省は、「福岡県北九州市えは、介護保険サービスを実施する法人に対して、掃除や洗濯等の介護保険外サービスの実施状況や利用料についてアンケートを実施し、利用料の水準を参考として単価を設定した」といった事例も紹介しています。
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