介護療養は「小規模で重度者が入所する」など、介護保険3施設の特徴が浮き彫りに―厚労省
2018.9.21.(金)
訪問看護利用者の要介護度が上がるほど、利用頻度が高くなる。介護保険3施設では、それぞれに特徴があり、例えば介護療養では「小規模で、極めて要介護度が高い人の入所先」となっている―。
厚生労働省が9月20日に公表した2017年の「介護サービス施設・事業所調査」の概況から、こういった状況がわかりました(厚労省のサイトはこちら)(前年調査の記事はこちら)。
目次
定期巡回や看多機、増加しているが、実数ベースでは1000事業所にも満たず
調査は介護サービスの提供体制、提供内容を把握し、基盤整備の課題などを明らかにすることを狙いとして毎年実施されています。
まず事業所数・施設数の動向を見てみましょう。昨年(2016年)からの増加が目立つのは、やはり▼看護小規模多機能型居宅介護(看多機、旧「複合型サービス」)の27.9%増▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護の17.1%増▼訪問看護ステーションの8.2%—などです。ただし、地域包括ケアシステムの要と期待される「看多機」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、伸び率こそ大きいものの、実数は1000に届かず、さらなる整備に期待が集まります。
一方、介護療養の施設数は、前年(2016年)に比べて9.7%減少しています。2018年から介護医療院が新たな転換先として創設されており、減少ペースがさらに早まると見込まれます。
介護保険3施設それぞれに特徴、介護療養は小規模で重度者を多く受け入れ
次に、介護保険3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設)の状況を見てみましょう。
1施設当たり定員について見てみると、次のような状況となっています。
【特養ホーム】
「50-59人」が全体の31.5%、「80-89人」が全体の16.2%を占め、平均は68.8人
【老健施設】
「100-109人」が全体の36.7%、「80-89人」が全体の14.0%を占め、平均は87.3人
【介護療養】
「10-19人」が全体の19.6%、「1-9人」が全体の171.1%を占め、平均は44.6人(うち診療所では9.0人)
また、3施設の利用率(1施設当たりの在所者数/1施設当たりの定員)を見ると、▼特養ホーム:96.9%▼老健施設:89.9%▼介護療養:90.7%(うち診療所は73.4%)—となっています。老健施設では、介護報酬上「在宅復帰」に力を入れることが求められていますが、一方で「新規入所者の獲得」が追いついていないようです。
次にユニットケア(一部ユニット型を含む)の実施施設数が占める割合を見ると、▼特養ホーム:37.9%(前年より1.2ポイント向上)▼老健施設:10.4%(同0.1ポイント悪化)―となり、定員に占める割合は▼特養ホーム:38.6%(同1.8ポイント増)▼老健施設:6.8%(同0.2ポイント増)―という状況です。特養ホームではユニット化が前進する一方で、老健施設では「足踏み状態」となっているようです。今後の詳細な背景・要因の分析が待たれます。
また、介護保険3施設別に入所者の要介護度を見てみると、次のような状況です。
▽特養ホーム:要介護5が32.6%(同0.3ポイント減)、要介護4が36.8%(同1.1ポイント増)、要介護3が23.8%(同0.8ポイント増)で、要介護3以上が93.2%(同1.6ポイント増)と重度化している(平均要介護度は3.94で前年から0.03ポイント上昇)
▽老健施設:要介護5が18.2%(同0.5ポイント減)、要介護4が26.7%(同0.1ポイント減)、要介護3が24.3%(同0.2ポイント増)で、要介護3以上が69.2%(同0.4ポイント減)とわずかに軽度化している(平均要介護度は3.21で前年から0.02ポイント低下)
▽介護療養:要介護5が51.9%(同1.7ポイント減)、要介護4が35.5%(同1.6ポイント増)、要介護3が8.5%(同0.5ポイント増)で、要介護3以上が95.9%(同0.4ポイント増)とわずかに重度化している(平均要介護度は4.35で前年から0.01ポイント低下)
介護保険3施設で、▼規模▼利用率▼要介護度―に特徴があることが分かります。うち、介護療養には「小規模で、極めて要介護度の高い方が入所する」という特徴があると言えそうです。前述したように、2018年度からは▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ「介護医療院」が創設され、当面は、介護療養からの転換が進むと考えられますが、将来的にどのような特徴を持つ施設となるのか注目したいところです。
訪問看護、重度者で利用頻度が上がっている
居宅介護サービス利用者の要介護度に目を移すと、「訪問入浴介護は、要介護5の利用者が約半数」、「訪問看護、特定施設入居者生活介護は、比較的重度の利用者が多い」といった特徴があることが再確認できます。
また1人当たりの利用回数(9月・1か月分)を見ると、訪問系サービスでは、▼訪問介護:19.3回▼短期入所生活介護:10.3回—などが、地域密着型サービスでは、▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護:106.3回▼看護小規模多機能型居宅介護:42.9回▼小規模多機能型居宅介護:35.6回―などが多くなっています。
このうち「訪問看護」に焦点を合わせると、「1人当たりの訪問回数が、要介護度が高い利用者ほど増加傾向にある」ことが見えてきました。この要因が「重度者において訪問看護ニーズが高まっている」ところにあるのか、あるいは「介護報酬の加算等算定のため、ステーション側が重度者への訪問に力を入れている」ためなのか、詳細な分析が期待されます。
1事業所当たりの常勤看護・介護職員数は、サービス種類で増減あり
最後に、介護提供体制確保における「最大の課題」である「従事者」の状況を見てみましょう。
各サービスについて、1事業所当たりの看護・介護職員数(常勤換算)を見ると、▼訪問介護7.3人(前年から増減なし)▼訪問看護5.1人(同0.3人増)▼通所介護7.4人(同0.1人減)▼通所リハビリ7.7人(同0.1人減)▼短期入所生活介護14.3人(同0.1人増)▼特定施設入居者生活介護20.0人(同0.1人増)▼認知症対応型共同生活介護11.6人(同0.1人増)▼特養ホーム2.0人(同増減なし)▼老健施設21.1人(同増減なし)―などと大きな変化はなさそうです。
介護人材確保は、少子高齢化が進む我が国では、極めて深刻な問題であり、例えば【介護職員処遇改善加算】の類似の充実(来年(2019年)10月には、さらなる大規模な処遇改善が予定)が行われてきています(関連記事はこちら)。これらの効果がどの程度なのか、あるいは「他に介護人材を確保する手立てはないのか」などを検証していく時期に来ていると言えるでしょう。
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