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人生の最終段階においても、患者・家族の意思や状況を汲んだ適切な医療提供が必要―日慢協・池端副会長

2016.8.19.(金)

 人生の最終段階の医療について急性期病院などでは「all or nothing」になっている嫌いがある。『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』に沿って、多職種で医学的妥当性・適切性を判断した上で、可能な限り痛みや不快な症状を十分に緩和し、総合的な医療とケアを行っていく必要がある―。

 日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長は、18日の定例記者会見でこのように強調しました。

8月18日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長

8月18日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長

アドバンス・ケア・プランニングの理念に沿った必要十分な医療提供を

 厚生労働省は昨年(2015年)3月25日に、従前の「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』に改訂しました。内容に特段の変更はありませんが、ガイドラインでは「人生の最終段階における医療とケアのあり方」について次のような考え方を改めて明確にしています(ガイドラインはこちら)。

(1)医療従事者からの適切な情報提供・説明に基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、「患者本人による決定」を基本とした上で、人生の最終段階における医療を進めることが最重要原則である

(2)医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止などは、「多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって、医学的妥当性・適切性を基に慎重に判断するべき」である

(3)医療・ケアチームにより「可能な限り痛みやその他の不快な症状を十分に緩和」し、「患者や家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療とケアを行う」ことが必要である

『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』の概要

『人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン』の概要

 しかし池端副会長は、「急性期病院や救急医療野の現場では、必ずしも患者・家族の意思が十分に汲み取られず、医療提供が『all or nothing』になっている嫌いがある(例えば、高齢なので治療はしないと判断されるなど)」と指摘。その上で、池端副会長は「人生の最終段階におられる方でもリハビリテーションによって口から食事を摂ることが可能になるなどQOLを高めることができる。適切に医療を提供する必要がある」旨を訴えました。

 もっとも池端副会長は「患者が事前に『人生の最終段階の医療』について意思決定をしていたとしても、意思や状態は刻々と変化するため、急性期病院の医師に『患者・家族の意思を十分に汲む』よう求めることは難しいかもしれない」とし、「急性期病院で必要な医療提供を終えた後は、すみやかに患者の意思・状況を汲み取れる慢性期医療機関に搬送していただき、適切かつ十分な人生の最終段階における医療を慢性期医療機関で提供するようにすべき」とも提案しています。

 さらに池端副会長は、日慢協が「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)の理念に沿って、患者本人の生命・生活・人生に寄り添いながら、慢性期医療を中心とした必要十分な『人生の最終段階における医療』を全国民に率先して提供する」考えも強調しました。

 実際に日慢協が会員病院を対象に行ったターミナル治療アンケート結果を見ても、患者の死亡前7日には相当程度の医療提供がなされている実態が伺えます。

 ACPは、「将来の意思決定能力低下に備え、治療方針・療養についての気がかりや自身の価値観を、患者・家族・医療者が共有し、ケアを計画する包括的プロセス」ですが、時間の経過によって意思や決定内容が変化する可能性が高い点を考慮し、「繰り返し話し合う」ことや「内容の変更を認める」点が特徴とされます。

 
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