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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

介護療養などの「新たな移行先」、一般病床はまず「療養病床」に転換してから新類型へ移行すべき―日慢協・武久会長

2016.8.18.(木)

 介護療養病床や看護配置4対1などを満たせない医療療養病床の新たな移行先(いわゆる新類型)について、一般病床からの転換も認めてよいが、その際には一旦、一般病床から療養病床に転換し、その後、新類型へ移行すべきである―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、18日の定例記者会見でこのような見解を明らかにしました。

 また、新類型と介護老人保健施設との関係について、今後、きちんと議論していくことが必要との考えも示しています。

8月16日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

8月16日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

新類型は居住機能も持つ、4.3平米・8人部屋などからの新類型移行は問題

 介護療養病床や看護配置4対1などを満たせない医療療養病床は、設置根拠が2018年3月で切れます。このため、厚生労働省は「療養病床の在り方等に関する検討会」で議論を行い、医療内包型・医療外付け型の3つの新類型案を整理しました。現在、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」でより具体的な制度設計に関する検討が進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

【案1-1】【案1-2】【案2】の機能を図示したもの。全く新たな施設類型である【案1-1】【案1-2】については、【案2】などとの組み合わせ(居住スペース)になる形態が多いのではないかと厚労省は見込んでいる

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

25対1医療療養・介護療養の新たな選択肢、【案1-1】【案1-2】【案1-3】の3つが提示された。既存の20対1医療療養(病院)と、特定施設(住まい)と対比させ、どのような機能を持つのかが明示されている

 この新類型は医療提供機能と居住機能を併せ持つ施設になる見込みで、検討会では「療養病床以外の、他の一般病床などからの転換も認めてよいのではないか」との意見も出ていました。特に検討会の田中滋会長代理(慶応義塾大学名誉教授)は、「医療と住まいの機能を合わせ持つ施設はとても魅力的である。新設を認めてもよいのではないか」との見解を明らかにしています。

 一方、検討会や特別部会で鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)らは、議論が散漫になってしまうことを危惧し、「まずは介護療養などの移行先に限定して議論する必要がある」と述べ、現時点では一般病床からの転換の是非を議論すべきでないというスタンスを明確にしています。

 このテーマについて武久会長は、「一般病床からの転換も認めてよいと思う」との見解を明らかにしました。ただし、「一般病床の中には4.3平方メートル・8人部屋という療養環境が不適切なものもある。一般病床から新類型に移行するに当たっては、一旦、6.4平方メール以上の居住面積が必要な療養病床に転換して療養環境を整え、その後、新類型に移行するというプロセスを踏むのが適切であろう」とも指摘しました。前述のように新類型は「居住・住まい」機能を持つことになるためです。

新類型と老健施設との整合性を図ることも重要

 また武久会長は、今後「新類型と介護老健施設との整合性」を議論していくことも重要と指摘しています。

 武久会長は、介護老健施設を、設置形態から▽単独型▽病院併設型▽診療所併設型―の3タイプに分類。

 現在、いずれのタイプの老健施設でも医師の常勤配置が必要です(「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」第2条など)が、武久会長は「単独型は医師の常勤が必要であるが、それ以外(病院併設型、診療所併設型)では併設する病院・診療所に医師が常勤しているのであるから、老健施設部分に医師が専従でいなくてもよいのではないか」と指摘。この武久会長の考えに沿うと、新類型の医療外付け型(案2)と老健施設とでは、どこが違うのかという問題が出てきます。

 また現在、老健施設は介護報酬上、▽在宅強化型(在宅復帰率50%超など)▽在宅支援加算型(同30%超など)▽従来型(通常型)―の3つに分けられます(関連記事はこちら)。在宅強化型・在宅支援加算型は、「病院から在宅までの中間施設」というそもそもの老健施設の設置目的を重視し、在宅復帰を促進した場合に高い介護報酬を算定することを認めるものです。

介護老人保健施設は、介護報酬上、▽在宅強化型▽在宅支援加算型▽従来型(通常)―に区分され、在宅強化型や加算型では従来型よりも高い介護報酬が設定されている(2014年8月7日 社会保障審議会・介護給付費分科会資料より)

介護老人保健施設は、介護報酬上、▽在宅強化型▽在宅支援加算型▽従来型(通常)―に区分され、在宅強化型や加算型では従来型よりも高い介護報酬が設定されている(2014年8月7日 社会保障審議会・介護給付費分科会資料より)

 しかし厚生労働省や全国老人保健施設協会の調べでは、老健施設全体に占める在宅強化型・在宅支援加算型の割合は2013年10月には32.3%でしたが、3年後の16年7月には26%に低下しています。ここから「多くの老健施設では在宅復帰機能を追求していくことは難しく、もっぱら居住・住まい機能に重きを置いている」状況になっている可能性があります。ここでも新類型と老健施設とで機能の重複が生じることが伺われます。

 こうした点を総合的に踏まえて武久会長は、「新類型と老健施設との整合性について、今後、きちんと議論する必要がある」と訴えているのです。

 武久会長は、例えば▽新類型では老健施設よりも看護師の配置を手厚くする▽新類型で「6.4平方メートル・4人部屋」を認めることで低料金を実現し、ユニット型老健施設などに居住できない低所得者の受け入れを進める(ただし長期間の入所では報酬を減額することも要検討)―という考え方もあると述べており、今後の特別部会における議論が注目されます。

 
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