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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

免疫療法を第4のがん医療に、社会全体で予防推進―次期がん計画で中釜・国がん理事長

2016.8.29.(月)

 2016年4月に国立がん研究センターの理事長に就任した中釜斉氏は、8月26日開催の「第59回がん対策推進協議会」で、「第3期のがん対策推進基本計画に向けた課題」と題し、同計画に対する自身の問題意識を発表しました(関連記事『第3期がん対策推進基本計画、ゲノム医療や希少・小児がん対策などを柱の1つに―がん対策推進協議会』)。国際的ながん研究の潮流を踏まえて、従来の手術療法、放射線療法、化学療法に次ぐ第4のがん医療として「免疫療法」に注力する必要性を指摘。また、欧米諸国と比較して日本のがん罹患率が高いことを問題視して、「今できることに社会を挙げて取り組むべき」と強調しました。

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次の10年に向けた3つの課題

 日本のがん対策は、5年を1期とするがん対策推進基本計画に沿って進められています。現在、第2期の基本計画(2012-16年度)が進行しており、17年度からは第3期計画にバトンを渡します。

 門田守人会長(堺市立病院機構理事長)は、10年でがん対策の最大目標「死亡率の20%減少」を第1期で策定したことを振り返り、第3期でも10年先を見据えた計画の立案が重要であると指摘(関連記事『がん対策基本計画の中間評価まとまる、「死亡率20%減」は達成できず―がん対策推進協議会』)。日本のがん医療発展を推進する軸の一つである国がん新理事長の中釜委員から、10年先を見据えた第3期の「がん対策推進基本計画」に向けた問題意識を共有した上で、この日の議論を開始する流れとしました。

 中釜委員は、(1)一人一人の状況に即した個別医療の実現(2)健康寿命延伸に向けた予防の確立(3)がんとともに生きるサバイバーシップ―の3つに課題を整理。その上で、「死亡率のさらなる低減」「安心・納得してがんとともに生きる社会の構築」を二大目標として、がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会へ向けて、国がんはデータに基づく対策の推進に向けて最大限の貢献をしていく決意があるとしました。

 具体的には、(1)の個別医療の実現で、まず最適な医療提供の必要性を指摘。具体的には、従来型の医療にとらわれない新たな医療を積極的に取り入れていく姿勢を示すことで、一例として免疫療法を挙げました。がんの免疫療法は、体内の免疫力を高めることでがん治療を行う手法です。「免疫チェックポイント阻害剤」が新たな免疫療法として注目されているほか(関連サイト『がん治療が変わる ~日本発の新・免疫療法~』)、国際的な学会などでも治療成果を示す免疫療法のデータが数多く確認されているとのことです。そのほかでは、一律の医療から患者自身の選択に基づく医療の実現、希少がん・難治がん(小児・AYA世代がん含む)への対峙、ゲノム(オミックス)情報に基づく個別医療の実現、がん診療連携拠点病院を中心とした医療提供体制の整備などを挙げました。

 (2)の予防の確立では、公共スペースの全面禁煙や禁煙への大胆なインセンティブの導入、保険者(職域保険)と市町村が行う健診・検診の一体化など、今できることに社会を挙げて取り組むと明記。そのほかには、早期診断技術・バイオマーカーの開発など医療経済的視点から有用性を検証するとしました。がん登録情報など大規模データベースを用いることで、分かりやすく説得力ある根拠を提示したり、実際の行動変容につなげるための具体的な介入手法についても実証したり、ゲノム情報を適切に活用した予防についての社会的合意形成も目指します。予防の確立について、中釜氏は「これが非常に重要」として「これまでの枠組みを超えて、問題の根源に切り込む視点が必要」と強調しました。

 (3)のサバイバーシップは、がん患者と家族の診断後に、一貫した相談・支援を、医療機関における支援に加えて、地域社会でも展開する必要があると指摘。政府が掲げる「一億総活躍社会」に呼応する就労支援も充実させ、健康づくりの推進とライフステージごとで課題に取り組む必要性を掲げました。

玉石混交、医療側のコントロールも

 協議会の委員は、中釜氏の提案について大筋で賛成しており、発表後に意見交換をしました。

 北川雄光委員(慶応義塾大学医学部外科学教授)は、免疫療法が国際的な学会で最も注目されていることを認めた上で、エビデンスがあるものとないものが混在している点を指摘。また、免疫療法が最先端の第4のがん医療として注目されているため、標準的治療を通り越して、過剰に最先端を望む患者が出てくることを危ぶみました。そのため、免疫療法による個別医療の推進には「医療機関側がどうコントロールするかという課題がある」としています。

 予防については、米国のがん罹患率、死亡率が減少傾向に向かっていることを踏まえて、ビッグデータ活用などのさらなる推進を求める意見などがありました。

 この日の協議会では、がん登録について、がん対策情報センターがん登録センター全国がん登録分析室室長の柴田亜希子氏が参考人として発表。全国がん登録情報を用いて、検診、診断、治療のベンチマーク分析をすることで、死亡率改善に向けて行政が対策に取り組む道筋が見えてくる可能性などを紹介しました。

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