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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

JNAラダーを全医療・介護施設に導入し、予防から急性期・在宅に至るまで切れ目のない看護を実現―日看協

2016.11.8.(火)

 標準的な指標を用いた看護師教育を通じて、日本全国の医療機関・介護施設がつながり、重症化予防から急性期・慢性期・在宅医療に至るすべての段階で切れ目のない看護を提供する―。

 日本看護協会は4日、「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」を活用するための手引き「導入・活用編」を公表しました(日看協のクリニカルラダーはこちら、クリニカルラダーの実践例はこちら、今般の活用のための手引きはこちら)。

看護実践能力の開発・評価を行うクリニカルラダーを日看協が作成

 日看協は、今年(2016年)5月に「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」(JNAラダー)を作成・公表しています。クリニカルラダーとは、看護の能力開発・評価を行うシステムの1つで、臨床看護の実践レベルに応じて必要な能力を示すものです。例えば、レベルIでは、▼助言を受けながら受け手に必要なニーズを情報収集できる能力▼指導を受けながら看護手順に沿ったケアを実施できる能力▼助言を受けながら、看護のために必要な能力を考え、関係者と情報共有できる能力▼助言を受けながら受け手や周囲の思いを考え、希望を知ることができる能力―などが必要とされています。ラダーとは「はしご」を意味し、看護師がはしごを一段一段昇るように、年次を経るごとに、必要な能力を確実に身につけていくというイメージです。

JNAラダー『看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)』

JNAラダー『看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)』

看護実践能力の核は4つの能力にまとめることができる

看護実践能力の核は4つの能力にまとめることができる

 また「キャリアラダー」というラダーもあり、こちらは看護実践能力以外にも管理的な能力などを含めた能力開発・評価システムです。

 すでに多くの施設でラダーが作成されつつありますが、施設ごとに内容やレベルが異なっているのが実際です。そこで日看協では「あらゆる施設で利用可能な標準的化されたラダーが必要」と考え、JNAラダーを作成したものです。

 このJNAラダーが日本全国の医療・介護施設に導入され、普及していくことで、病院から介護施設、訪問看護ステーションに至る施設が「標準的な指標を用いた看護師教育」を通じつながることになります。日看協は、その結果「疾病の発症・重症化予防から急性期・慢性期・在宅療養に至るすべての健康段階で、切れ目のない看護を提供する」ことを目指しています。

 今般の「活用するための手引き」では、JNAラダーについて、看護師個人にとっては「自己評価・自己研鑽」ツールとして、組織(病院の看護部など)にとっては「人材育成・教育支援」ツールとして活用することを提唱するとともに、具体的な導入方法を提案しています。

標準的なクリニカルラダーとなるJNAラダーを全医療・介護施設で導入することで、切れ目のない看護実践が期待できる

標準的なクリニカルラダーとなるJNAラダーを全医療・介護施設で導入することで、切れ目のない看護実践が期待できる

JNAラダー導入の前に、施設・組織内で共通認識や期待する看護師像の確認を

 JNAラダーの導入にあたっては、まず(1)導入に向けた検討グループの組織化(2)JNAラダーの共通認識(3)自施設の人材育成や期待する看護師像の確認―という共通ステップを踏むことが重要です。目的などが不明確なままに導入しても「宝の持ち腐れ」で終わってしまう可能性があり、またラダーに共通認識を持たなければ「共通の指標」になり得ないからです。

JNAラダーを自施設に導入する場合のフローチャート、全施設に共通する部分と、「自施設でオリジナルラダーを作成しているか否か」で若干異なる部分とがある

JNAラダーを自施設に導入する場合のフローチャート、全施設に共通する部分と、「自施設でオリジナルラダーを作成しているか否か」で若干異なる部分とがある

 

 その上で、まだラダーを導入していない施設でJNAラダーを導入する場合には、(a)期待する看護師像を「看護実践能力」と「その他の能力」とに整理する(b)(a)のうちの「看護実践能力」についてJNAラダーと照合する(c)作成したラダーをもとに自施設オリジナルの実践例を作成する(d)作成したラダーに連動した人材育成計画や方針を検討する―というプロセスを踏むことが必要です。

 (a)の「看護実践能力」としては、例えば▼患者を全人的な視点で捉えられる▼患者の個別性に配慮した看護を実践できる▼多職種と円滑な情報共有・交換ができる▼患者の意向を多面的に捉え、最善の選択に向けた支援ができる―といった能力があげられます。

 次に(b)で、こうした求められる「看護実践能力」がJNAラダーの▼ニーズを捉える能力▼ケアする能力▼協働する力▼意思決定を支える力―のいずれに該当するのか、さらにJNAラダーに規定する看護師のレベルに応じてどう分類できるのかを照合。日看協では「看護実践能力の部分についてはJNAラダーをそのまま取り入れ、その他、JNAラダーで表現されていない側面については、各施設オリジナルの実践例(後述)の中で表現してはどうか」と提案しています。

自施設ですでにラダーを導入している場合、JNAラダーとの照合を

 一方、すでに自施設独自のラダーを作成・運用している場合には、(A)JNAラダー導入の方向性を決定する(B)自施設オリジナルのラダーを「看護実践能力」と「その他の能力」とに整理する(C)(B)のうちの「看護実践能力」についてレベルの整理を行う(D)「看護実践能力」についてJNAラダーと照合する(E)作成したラダーに連動した人材育成計画や方針を検討する―というプロセスを踏むことが提案されています。

 (A)の方向性とは、例えば自施設オリジナルラダーの「看護実践能力」部分について▼JNAラダーを基盤として導入する▼JNAラダーを見直し・評価ツールとして導入する―という大きく2つが考えられます。

施設オリジナルのラダーがある場合、JNAラダーを基盤とするのか、自施設のラダーの見直し・評価をするのか、大きく2つの導入パターンが考えられる

施設オリジナルのラダーがある場合、JNAラダーを基盤とするのか、自施設のラダーの見直し・評価をするのか、大きく2つの導入パターンが考えられる

 後者は、自施設のラダーの形は維持しながら、自施設ラダーとJNAラダーを照合し、自施設ラダーを見直していくといったイメージです。例えば、自施設では8段階のレベルを設定している場合、自施設のラダーレベルがJNAラダーレベルのどこに該当するかを確認し、JNAラダーに合わせるのか、既存のオリジナルラダーのレベルを維持するのかを検討していくといった具合です。

 「既存のオリジナルラダーには表現されているが、JNAラダーに表現されていない」項目については、▼ラダーをより具体化した「実践例」の中で表現する▼ラダーの中に組み込む―という2つの手法が考えられ、各施設にマッチした手法を選択する必要があります。

 「実践例」とは、ラダーで表現された能力を、より具体的な行動などに落とし込んだものです。これは当然、施設ごと、診療科ごと、施設ごとなどで異なってきます。日看協では、レベルIの「指導を受けながら看護手順に沿ったケアを実践できる」能力について、例えば消化器外科では「指導を受けながら、胃瘻の交換・ストーマの装具交換・胃管挿入患者のケア・開腹術後のドレーン管理について、看護手順に沿ったケアを実施できる」、整形外科では「指導を受けながら、コルセットの装着・CPM訓練・股関節術後患者の体位変換・ギプス固定・脊椎術後の管理について、看護手順に沿ったケアを実施できる」といった具合に落とし込むことを例示しています。

自施設オリジナルラダーとJNAラダーを照合し、どこが一致しているのか、異なる部分については「ラダーに組み込む」のか、より具体的に落とし込んだ「実践例」の中で表現するのかを各施設で検討する

自施設オリジナルラダーとJNAラダーを照合し、どこが一致しているのか、異なる部分については「ラダーに組み込む」のか、より具体的に落とし込んだ「実践例」の中で表現するのかを各施設で検討する

  
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