外国医学部出身医師は、米国医学部出身医師よりも質の高い医療を提供している
2017.2.3.(金)
米国において、米国国内の医学出身の医師よりも、海外の医学部出身の医師のほうが、内科疾患においては30日死亡率が低い―。
米国ハーバード公衆衛生大学院の津川友介医師らのチームは、このような研究結果を公表しました。3日付(英国時間)の英国医学誌British Medical Journal(BMJ)に掲載されています。
我が国(日本)でも、質の高い医療を提供する「良医」の評価が重要に
医療の質(QI)を評価し、改善する取り組みが我が国でも始まっていますが、米国では以前からこうした研究が積極的に進められています。医療の質を評価する指標の1つとして「入院後30日以内の死亡率」などが注目されています。
今般、津川医師らは「米国国内の医学部出身医師」と「海外(米国以外)の医学部出身医師」との間で医療の質に差があるのか、という点に着目。米国の急性期病院に内科疾患のために入院した120万件程度の入院症例と、その担当医師(約4000人)の診療データについて、▼患者要因(年齢、主病名、重症度、社会経済的要因など)▼医師要因(年齢や治療した患者数など)▼病院要因(同じ病院の医師同士を比較)―の差を統計学的にリスク補正して分析しました。
その結果、次のような点が明らかになりました。
(1)入院後30日以内の死亡率は、「海外医学部出身医師」のほうが良い(死亡率が0.4ポイント低い)
(2)退院後30日以内の再入院率は、有意な差がない
(3)1入院当たり医療費は、「米国医学部出身医師」のほうが低い(47米国ドル低い)
津川医師らは、「死亡率0.4ポイントの差は、新薬や新医療機器、ガイドラインなどによって米国が10年かけて改善してきたものと同レベル」であるとし、外国医学部出身医師の優秀さを強調(さらに外国人医師のほうがより重症で低収入の患者を診ている傾向にある)。また現在、トランプ大統領が一部国籍者の米国入国を禁止する措置をとっており「外国出身の医師が米国に入国できない」状況も生じているといいます。津川医師らは、「質の高い医療を提供している外国人医師を追い出すことになりかねない」と懸念を示したほか、「日本においても、質の高い医療を提供する『良医』の評価が重要」と提言しています。
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