アスベスト含有保温材など使用、18病院で健康被害の恐れあり―厚労省
2017.12.27.(水)
「アスベスト含有保温材」などを使用している病院が、全国に少なくとも1290施設あり、このうち18病院では、アスベストが飛散して患者や職員に健康被害が生じる恐れがある―。
厚生労働省は12月27日、「病院におけるアスベスト(石綿)使用実態調査に係るフォローアップ調査の調査結果」を公表し、このような実態を明らかにしました。アスベストを吸い込むと、中皮腫や肺がんなどの発症リスクが高まるため、2006年9月以降、アスベスト含有製品の製造や使用が禁止されています。調査結果を踏まえて厚労省は、患者に健康被害が及ぶ恐れがある病院に対して、施設の使用制限や修繕等の命令を直ちに行うよう、都道府県に要請しています。
病院でのアスベスト含有建材の実態把握などを、総務省行政評価局が勧告
アスベストは耐熱性や耐久性、耐摩耗性などに優れ、安価なことから、かつて建材製品などに広く使用されていました。しかし、吸引すると深刻な健康被害を発症する危険性があることが分かり、現在は、製造や輸入、使用などが禁止されています。
とはいえ、規制が適用される前に建設された病院建物などの建材の一部には、アスベストが含まれています。そこで厚労省は、病院でのアスベスト含有建材の使用事態を調べた上で、2012年3月に通知「病院における吹付けアスベスト(石綿)等使用実態調査に係るフォローアップ調査の調査結果の公表等について」 を発出し、「院内でのアスベスト含有建材の使用実態の確認」や「使用していることが判明したアスベスト含有建材の除去」などを病院に進めさせるよう、都道府県に要請しています。
しかし総務省行政評価局は、2016年5月に行った「アスベスト対策に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告」の中で、アスベスト含有建材の除去などが完了していない病院が残存しており、都道府県による指導が適切に行われていないと指摘。都道府県による病院への指導を徹底させるよう厚労省に勧告しました。
なお従前の調査では、アスベスト含有建材のうち、アスベストの飛散性が特に高い「吹付けアスベスト」(耐火性を高めることなどを目的に、アスベストを鉄骨や壁に直接吹き付ける)などの使用状況を調べています。しかし、ボイラーなどの配管等に使用する「アスベスト含有保温材」なども、劣化に伴って飛散性が高まることが分かっています。そこで総務省行政評価局は、あわせて、これまで調査していない「病院におけるアスベスト含有保温材などの使用状況」も調べるよう勧告しています。
飛散リスクある病院数は徐々に減少しているが、今後も対策が必要
総務省行政評価局の勧告を踏まえて、厚労省は今年(2017年)7月に調査を実施し、(1)吹付けアスベストなど(2)アスベスト含有保温材など―の使用実態を今般、公表しました。
15施設のうち11施設では、飛散防止措置を講じる予定が決まっていますが、4施設は未定のため、早急な対策が求められます。また、「吹付けアスベストなど」を使っているかどうかを確認できていない病院が18施設、調査に未回答の病院が1施設あり、これらの実態把握も急務だと言えます。
113施設中56施設では、飛散防止措置を行う予定が決まっていますが、57施設(うち10施設は、患者や病院職員に健康被害が及ぶ恐れがある)は未定で、極めて危険な状況です。「アスベスト含有保温材など」を使っているかどうかを確認できていない543施設や、調査に未回答だった4施設の実態把握を含めて、こちらもリスクの早期解消が求められます。
ところで、厚労省はアスベスト使用実態調査を昨年(2016年)7月にも実施しています。今回の結果と比べると、アスベストが飛散する恐れがある病院数は、「吹付けアスベストなど」を使用している病院(16施設→15施設)でも、「アスベスト含有保温材など」を使用している病院(147施設→113施設)でも減っており、徐々にではあるものの、対策が進んでいます。
今回の調査結果を踏まえて、厚労省は都道府県に対し、▼アスベストの飛散によって患者に健康被害が及ぶ恐れがある病院に、施設の使用制限や修繕等の命令を行う▼「アスベスト含有建材を使用しているかどうか」を確認中の病院や未回答の病院に対して、確認の実施時期を報告させ、指導の徹底を図る―ことなどを要請しています。
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