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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

都立8病院は地方独法へ移行し、経営基盤の強化を図れ―東京都・都立病院経営委員会

2018.1.30.(火)

 今後、都立病院は(1)行政的医療の安定的かつ効率的提供(2)特性・専門性を生かした高水準な医療提供(3)地域医療の充実への貢献―を目指す必要があり、そのためにこれまで以上に経営基盤を強化し、同時に「いかなる環境下でも持続可能な運営体制」を早期に構築しなければならない。具体的には「一般地方独立行政法人」へ移行すべきである―。

東京都の都立病院経営委員会(以下、経営委員会)は1月29日に、こういった内容の提言「今後の都立病院のあり方について—東京の医療を支え、地域で安心して暮らせるために―」を公表しました(都のサイトはこちら)(関連記事はこちらこちら)。

都立病院の収支、同規模の自治体病院よりも悪い

 東京都立病院は、▼広尾病院(渋谷区、478床)▼大塚病院(豊島区、508床)▼駒込病院(文京区、815床)▼墨東病院(墨田区、765床)▼多摩総合医療センター(府中市、789床)▼神経病院(府中市、304床)▼小児総合医療センター(府中市、561床、小児病院)▼松沢病院(世田谷区、898床、精神科病院)―の8施設があります。

現在、都立病院は8施設ある

現在、都立病院は8施設ある

 
8都立病院全体の医業収支比率は2012年度移行、80%前後(赤字)で推移し、2016年度には約400億円が都の一般会計から繰り入れられています。これは「感染症医療や小児医療など、いわゆる不採算医療と呼ばれる医療提供にも力を入れているため」と説明されますが、同様に不採算医療を担う同規模の自治体病院(400床以上)や公的病院(400床以上)と比べて低い水準にとどまっています。この原因として経営委員会は、▼職員の年齢構成・経験年数に大きな差があり、給与勧告制度の適用などの違いにより「人件費が高い」▼医薬契約の方法(単年度契約か、複数年度契約か)や委託内容・範囲などの違いにより「委託費が高い」―こともあると分析しています。
都立病院の収支は80%(赤字)で横ばい状況だが、同規模の自治体病院・公的病院よりも「悪い」

都立病院の収支は80%(赤字)で横ばい状況だが、同規模の自治体病院・公的病院よりも「悪い」

 
都では、経営状況を好転させるために会計の特例を設けるなど「地方公営企業法の一部適用」などの取り組みを行っていますが、十分とは言えません。今後、少子高齢化の進展(患者動向が変わる)、地域医療構想(機能分化、連携の推進)の実現など、医療を取り巻く環境がさまざまに変化していくことは確実で、都立病院の機能を改めて考え直さなければいけない時期に来ているといえます。その際には、「85ある特定機能病院のうち15施設が存在する」など、東京都の特性も十分に踏まえる必要があります。

効率的な医療提供を目指し、「規模の適正化」も検討せよ

検討委員会はこうした状況を踏まえて、都立病院に今後求められる3つの機能・方向性を提示しています。

(1)行政的医療の安定的かつ効率的な提供
(2)特性や専門性を生かした高水準な医療の提供
(3)地域医療の充実への貢献機能

このうち(1)では、民間病院と連携・協働して政策医療(小児、周産期など)を実現していくことのほか、「大学病院など高度医療を提供する医療機関が集積している都心部においては、都立病院の果たすべき役割や地域の医療提供体制の充足状況を踏まえ『適切な規模』を検討することが必要」とも言及しています。都立病院では病床利用率も低下(2012年度:85.2%→13年度:85.5%→14年度:83.7%→15年度:81.8%→16年度:80.8%)しており、規模の適正化(ダウンサイジング)も重要な選択肢と言えそうです。

都立病院の病床利用率は年々低下している

都立病院の病床利用率は年々低下している

 
また(2)の高水準な医療提供に向けて検討委員会は、▼高度・先駆的な技術の開発・導入▼チームでの患者支援▼複数診療科を持つなどの総合診療基盤を活用した「身体合併症患者の受け入れ」推進▼臨床研究の推進―などのほか、「都立病院が一体となり、その特性や専門性を一層効果的・効率的に発揮し、都民に還元できる仕組みづくりが必要」とコメント。例えば「機能の拠点化・集約化」なども行うべきと提言しています。

地方独法に移行し、優れた経営者の手腕発揮が可能な体制を構築せよ

ただし、こうした3つの機能・方向性を目指すためには、「経営基盤の強化」が必要不可欠です。大きな赤字を抱えたままで、例えば「高水準医療提供のために高額な最新医療機器を導入する」ことなどは困難です。さらに検討委員会は、一歩踏み込んで「いかなる環境下においても持続可能な運営が実現できる体制の早期構築」にも言及しました。

経営基盤の強化・安定に向けては、▼在院日数短縮傾向を踏まえた新規入院患者獲得などの「収益力の向上」▼都立病院8病院のスケールメリットを生かした「経費の圧縮」(共同購買の推進や価格交渉力の強化)―という基本的な取り組みを着実に進めていくことが必要です。この点に関連して「病院経営に必要な知識とノウハウを有する人材の育成・確保が不可欠」と検討委員会は強調。

そのために、現在の「地方公営企業法の一部適用」から「一般地方独立行政法人」への転換を進めてはどうかと検討委員会は提案しています(もちろん「経営形態の見直し」だけで経営改善が図れるわけではない)。

公立病院の経営形態見直しに当たっては、「地方公営企業法の一部適用」や「同法の全部適用」、「指定管理者制度」「一般地方独立行政法人化」などがありますが(下表参照)、検討委員会は都立病院の特性などに鑑みて、次のような「一般地方独立行政法人化」のメリットに着目しています。

▼管理者の権限強化等:首長が定めた中期目標の下で、病院の自律的な事業運営、独自の意思決定が可能になり、経営上の責任が明確化される

▼弾力的な人事・給与・服務規程など:法人が独自に病院の実情にあった適切かつ柔軟な人員配置、経営状況や職員の業務実績を反映させた給与体系の設定、中長期的な視点に立った職員育成を行うことができる。また多様な雇用形態(兼業禁止の排除など)をとることも可能となる。ただし、職員は公務員でなくなるため、十分な説明・調整が必要である

▼経済性の発揮:「予算単年度主義」でないため、事業運営の機動性、弾力性が向上する。複数年度契約など自由度が増し、より経済性を発揮できる。

地方公営企業法の適用(全部または一部)、指定管理者制度、地方独立行政法人の比較(その1)

地方公営企業法の適用(全部または一部)、指定管理者制度、地方独立行政法人の比較(その1)

地方公営企業法の適用(全部または一部)、指定管理者制度、地方独立行政法人の比較(その2)

地方公営企業法の適用(全部または一部)、指定管理者制度、地方独立行政法人の比較(その2)

 
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