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看護必要度の定義見直しで、施設基準満たせなくなる大学病院本院も―GHC渡辺が18年度改定でデータ試算

2018.3.14.(水)

 日本医療マネジメント学会が2月24日に大阪国際交流センター(大阪市天王寺区)で開催した「第11回日本医療マネジメント学会大阪支部学術集会」で、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子が講演(座長は松下記念病院の山根哲郎院長)。2018年度診療報酬改定で再編・統合される7対1入院基本料から療養病棟入院基本料までの入院基本料が、医療現場にどのような影響を及ぼすかなどを予測しました。

 多くの急性期病院では、今回改定における「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の定義見直しに伴い、重症患者割合が高くなると予測されています。ただし、渡辺は「GHCの分析では特定機能病院やがん専門病院の重症患者割合はそれほど高くならない」と指摘。さらには、「施設基準を満たせなくなる大学病院本院が出てくる可能性もある」(渡辺)としました。

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急性期の実績、大学病院などが低くなる評価指標は適切か

 2018年度の診療報酬改定では、急性期から長期療養までの入院基本料・特定入院料の再編・統合が行われます(図表参照、関連記事『【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定』)。うち一般病棟入院基本料と療養病棟入院基本料については、▼現行7対1・10対1一般病棟入院基本料を再編・統合して創設される「急性期一般入院料」▼現行13対1・15対1を再編・統合する「地域一般入院料」▼現行の療養病棟入院基本料を整理する「療養病棟入院基本料」――が設定され、各入院料の中で「診療実績に応じた段階的な評価」が行われます。

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 急性期一般入院料の実績評価は主に看護必要度評価票に基づく重症患者割合などで行われます。現行7対1相当の「急性期一般入院料1」では、重症患者割合30%以上(DPCのEF統合ファイルデータに基づく計算方法の場合25%以上)が基準。現行7対1の重症患者割合の基準である「25%以上」と比べて、急性期一般入院料1の「30%以上」は大幅な基準引き上げと感じられますが、2018年度診療報酬改定では、重症患者の定義に次の2点の見直しが行われます(関連記事『DPCのEF統合ファイル用いる看護必要度II、選択可能な病院の条件を提示―厚労省』)。

  1. 「A項目1点以上かつB項目3点以上」の患者(現在は重症患者に非該当)が、B項目の「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」のいずれかに該当する場合は重症患者と見なす
  2. C項目の開腹手術(現在、手術当日から5日間は重症患者に該当)について、「4日間」に短縮する

 2点の見直しの影響を総合的に勘案すると、重症患者割合は高くなりやすくなり、厚生労働省によれば、新基準の重症患者割合「30%」は現行基準の「26.6%」に相当します(関連記事『現行7対1相当の【急性期一般入院料1】、重症患者割合は30%に決着』)。

 ただし、GHCが保有する全国の約800病院のデータを分析したところ、「見直しの恩恵を受ける病院と、受けない病院があった」と渡辺は注意を促しています。

 重症患者割合が高くなりやすい病院は、認知症の入院患者が多い病院で、B項目の「診療・療養上の指示が通じる」や「危険行動」に該当しやすいようです。

 この重症患者の定義見直しは、特定機能病院やがん専門病院でも同様に適用され、7対1の特定機能病院と専門病院では、施設基準の基準値である重症患者割合が、現在の「25%以上」から「28%以上」に引き上げられます(一般病棟7対1相当の急性期入院料1の「30%以上」と異なる基準値が設定されている)。しかし、特定機能病院・専門病院では「診療・療養上の指示が通じる」や「危険行動」に該当する入院患者が少なく、渡辺は「あるがん専門病院では、重症患者定義見直し後の新基準で計算しても0.3ポイントしか上がらない」ことを紹介しました。

 渡辺は「(28%以上に)全く追いつかない大学病院本院もある」と指摘。加えて「大学病院やがん専門病院が、急性期医療を必要としない患者を受け入れているとは考えづらい」(渡辺)ことから、「『28%以上』という重症患者割合の定義が適切だろうか」(同)と疑問を投げかけました。

診療報酬改定後の重症患者割合を試算できる

 急性期入院医療の評価をめぐっては、診療報酬改定論議を行う中央社会保険医療協議会・総会で、厚労省保険局医療課の迫井正深課長が、「将来的に、より適切な指標や評価手法の開発に向けた検討」を行う考えを示しています(関連記事『7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定』)。また、日本病院会の相澤孝夫会長(相澤病院理事長)も、「そもそも『急性期の病態』がどういうものか」をしっかりと検討する方針を示しており、今後の動きが注目されます(関連記事『急性期入院医療の評価指標は「看護必要度」でよいのか、再検討が必要―日病・相澤会長』)。

 なお、GHCが開発した「病院ダッシュボードχ(カイ)」の「看護必要度分析」にこのほど実装された「看護必要度シミュレーション」を用いれば、新定義に基づいた試算が可能です(関連記事『診療報酬改定後の重症患者割合を試算できる「看護必要度シミュレーション」』)。ご興味がある方は是非、ご確認ください。

解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。

 

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