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画期的なアトピー治療薬「デュピクセント皮下注」、最適使用推進ガイドラインを通知—厚労省

2018.4.24.(火)

 画期的なアトピー性皮膚炎治療薬「デュピクセント皮下注300mgシリンジ」(一般名:デュピルマブ(遺伝子組換え))が4月18日に薬価収載されたが、アトピー性皮膚炎の診断・治療に精通する医師を治療責任者として配置する医療機関において、抗炎症外用薬で十分な効果が得られない患者に対してのみ使用する必要がある。また本剤投与で喘息等の他アレルギー性疾患の症状が変化する可能性があり、「それに対し、適切な治療を怠った場合には喘息が悪化する可能性がある」ことなどに留意しなければならない―。

厚生労働省は4月17日に、通知「デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(アトピー性皮膚炎)について」(厚労省のサイトはこちら)および「抗IL-4受容体αサブユニット抗体製剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について」(厚労省のサイトはこちら)を発出し、こうした点を強調しています(関連記事はこちら)。

アトピー治療に精通した医師が、喘息・アナフィラキシーの専門医と連携することが必要

 アトピー性皮膚炎では、白血球から分泌されるインターロイキン-4および13(IL-4、IL-13)とよばれる特殊なタンパク質(サイトカイン)を介して、Th2細胞を活性化させ、皮膚バリアの欠損・増大につながると考えられています。

デュピクセント皮下注は「IL-4・IL-13のシグナル伝達を阻害することでアトピー性皮膚炎を治療する」といった新規作用機序を有する医薬品で、臨床試験において安全性および有効性(そう痒スコアの改善など)が確認されています。また薬価も比較的高額(2mL1筒で8万1640円)が設定されました。

このため、医療現場での適正使用を厳格に行う必要があり、最適使用推進ガイドラインにおいて、▼施設要件▼患者要件―などを規定することになったものです。

まず、施設要件を見てみましょう。次の要件をすべて満たす医療機関のみで使用が認められます。

(1)アトピー性皮膚炎の病態、経過と予後、診断、治療(参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン)を熟知し、本剤についての十分な知識を有し、アトピー性皮膚炎の診断・治療に精通する医師(「初期研修後に5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っている」あるいは「初期研修後に6年以上の臨床経験を有し、うち3年以上アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っている」)を、当該診療科の本剤に関する治療の責任者として配置している
(2)製薬企業等からの有効性・安全性等の薬学的情報の管理や、有害事象が発生した場合に適切な対応と報告業務等を速やかに行うなどの医薬品情報管理、活用の体制が整っている
(3)喘息等の合併する他のアレルギー性疾患を有する患者に本剤を投与する場合に、当該アレルギー性疾患の担当医と連携し、その疾患管理に関して指導・支援を受ける体制が整っている(本剤使用で喘息等が緩解する傾向があるが、投与中止により喘息が急性増悪することがある)
(4)アナフィラキシー等の副作用に対し、自施設または近隣医療機関の専門性を有する医師と連携し、診断や対応に関して指導・支援を受け、直ちに適切な処置ができる体制が整っている

 本剤を保険診療で用いる場合には、このうち(1)の「医師要件」について、レセプトの摘要欄に、治療責任者が「5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っている」のか、あるいは「6年以上の臨床経験を有し、うち3年以上アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っている」のかを記載することが求められます。

ステロイド治療などで十分な効果が現れない患者等に限定した使用が求められる

 次に患者要件については、次の項目に該当していることが求められます。

(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考にアトピー性皮膚炎の確定診断がなされている
(2)アトピー性皮膚炎診療ガイドライン推奨されるステロイド外用薬(ストロング以上)やカルシニューリン阻害外用薬による治療を6か月以上行っても十分な効果が得られず、体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上などの疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者
(3)ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上などの疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者

 本剤を保険診療で用いる場合には、患者要件の(2)(3)の状況とともに、疾患活動性(▼IGAスコア▼全身または頭頸部のEASIスコア▼体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合)をレセプトの摘要欄に記載することが必要です。

 
なお、臨床試験では「投与開始後16週」の時点で有効性を評価している点に鑑み、▼投与開始から16週後までに治療反応が得られない場合は、投与を中止する▼本剤投与中は定期的に効果の確認を行う―ことが求められます。

 また、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬等との併用で、「6か月程度の期間、寛解の維持」が得られた場合には、抗炎症外用薬・外用保湿薬が適切に使用されていることを確認した上で、「本剤投与の一時中止」等を検討しなければいけません。

 もっとも、一時中止した患者のアトピー性皮膚炎が燃した場合には、患者の状態を総合的に勘案して「本剤投与の再開」を検討することになりますが、この場合、上記の患者要件(2)(3)を満たす必要はないことが明確にされています(一度、患者要件(2)(3)を確認しているため)。

ステロイドなどと本剤との「併用」から治療開始

 さらに最適使用推進ガイドラインでは、本剤使用に当たって次のような点に留意しなければならない点を強調しています。

▽本剤成分に過敏症の既往歴のある患者は「禁忌」である(投与してはならない)

ショック、アナフィラキシーが現れる可能性があり、▼血圧低下▼呼吸困難▼意識消失▼めまい▼嘔気▼嘔吐▼そう痒感▼潮紅—などの異常がみられた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う

▼本剤投与中の「生ワクチンの接種」は、安全性が確認されていないので避ける

▼寄生虫感染患者に対しては、本剤投与前に寄生虫感染の治療を行う。本剤投与中に寄生虫感染を起こし、抗寄生虫薬による治療が無効な場合には、寄生虫感染治癒まで本剤の投与を一時中止する

喘息等の合併する他のアレルギー性疾患の症状が変化する可能性があり、当該アレルギー性疾患に対する適切な治療を怠った場合、喘息等の増悪で死亡に至るおそれもあるため、本剤投与中止後の疾患管理も含めて、投与中から「合併するアレルギー性疾患を担当する医師」と適切に連携する。また患者に対して、医師の指示なく、それらの疾患に対する治療内容を変更しないよう指導する

▽ステロイド外用薬等に不耐容の患者を除き、治療開始時には「ステロイド外用薬等の抗炎症外用薬および外用保湿薬と併用」して用いる

【更新履歴】タイトル、本文中に「デュピクセント皮下注の使用で喘息が悪化する」との誤解を招きかねない表現がありました。あくまで「喘息等の他アレルギー疾患が、本剤使用で変化する可能性があり、これに対する適切な治療を行わない場合には、喘息等が悪化しかねない」ものです。お詫びして、訂正いたします。記事は訂正済です。

 
 
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