高収入の病院はより収益が増加し、低収入の病院では大幅減となるところも―厚労省
2018.5.3.(木)
病院の1施設当たり医療費は、2016年度には平均は26億3600万円で、前年度に比べて3600万円・1.4%増加した。ただし「収入の多い病院ではより高収入となり、収入の少ない病院では、大幅な収入減となる」とのバラつきがさらに拡大してきている―。
厚生労働省が5月2日に公表した2016年度版の「施設単位でみる医療費等の分布の状況~医科病院、医科診療所、歯科診療所、保険薬局~」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。
病院収入のバラつきは年々拡大、収入の大きな病院では、より収入が増加
厚生労働省は、毎月公表している「医療費の動向」(MEDIAS)の中で医療機関1施設当たりの医療費データなどを明らかにしています。しかし、医療機関の規模や状況はさまざまで、単純に「医療費÷医療機関数」で1施設当たりの数値を出しても実態とかけ離れてしまいます、そこで医療機関の規模(病床数ではなく、「1施設当たりの医療費階級」)別に医療費の状況を分析し、「施設単位でみる医療費等の分布の状況」を示しているのです(前年度の状況はこちら、前々年度の状況はこちら)。
医科病院について見てみると、2016年度の1施設当たり医療費は平均で26億3600万円となりました。2011年度からの変化を見ると、平均医療費は増加傾向にあり(11年度:23億4900万円→12年度:24億1600万円→13年度:24億6400万円→14年度:25億2200万円→15年度:26億円→16年度:26億3600万円)、かつ、バラつき(標準偏差)も大きくなっています(11年度:37億3900万円→12年度:39億900万円→13年度:40億600万円→14年度:40億9800万円→15年度:42億8100万円→16年度:43億7100万円)。
1施設当たり医療費は「病院の収入」に読み替えることができます。このバラつきが大きくなっていることは、「地域における競争が激化している」、つまり「収入の多い病院はより高収入となり、収入の少ない病院はより減少している」可能性の高いことをうかがわせます。平均在院日数の短縮が進み、その中で病床稼働率を維持するためには、新規患者をこれまで以上に獲得することが必要となります。このため「より広域での新規患者獲得」を目指すことになりますが、この状況はすべての病院で同じであり、競争が激化するのです。自院の等身大の姿を確認した上で、「競合となる近隣の他院の状況」「全国における自院の状況」「地域での立ち位置」(今後果たすべき機能)「地域の患者動向」などを総合的に把握して、病床削減や統合・再編すらも視野に入れた経営戦略を練る必要があります(関連記事はこちら)。
また「1施設当たりの医療費階級」別に「1施設当たり医療費の伸び率」を見ると、医療費の少ない病院では医療費の伸び率に大きな幅があり、逆に、医療費の多い病院では、伸び率の幅が小さいこと、また医療費の多い病院のほうが医療費の伸び率が高くなることも分かりました。1施設当たりの医療費とは、病院収入を意味するので、次の点が浮かび上がってきます。
▼収入の少ない病院(医療費の少ない病院)では、収入が大きく増加している病院もあるが、大幅に減収となっている病院もある(伸び率の幅が大きい)
▼収入の多い病院(医療費の多い病院)では、安定的に収入が増加している(伸び率が高く、幅が小さい)
入院と入院外に分けると、2016年度も「入院外においてこの傾向がより強い」ようです。こうした差が、前述の「収入のバラつき拡大」につながっていると考えられます。とりわけ収入の少ない、小規模な病院では経営戦略の見直しを急ぐ必要がありそうです。
また、機能別に病院の「1日当たり医療費」を見ると、▼特定機能病院:7万円▼地域医療支援病院:5万7000円▼DPC対象病院:5万円▼それ以外の病院:2万3000円—となっており、施設数の関係もありますが、特定機能病院でバラつきが小さく、一般の非DPC病院でバラつきが大きな状況が伺えます。
【関連記事】
収入の大きな病院はさらに収入が増加する傾向、病院の競争が激化―厚労省
病院の1施設当たり収入のばらつきがさらに拡大、地域における競争が激化―厚労省
収益の少ない病院群では、増収する病院と減収する病院とのばらつきが大きい―厚労省