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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

2022年度に都立病院等のデータを連結し、診療の質向上や経営支援など目指す―東京都

2019.1.7.(月)

 都立病院・東京都保健医療公社病院の診療データを連結することで、診療の質・経営の質が向上することが、都立駒込病院における試行で明らかとなった。2022年度に向けて「診療の質」や「経営の質」の向上を支援する機能を持つシステム(データ集積基盤)を整備していく―。

 東京都病院経営本部は12月25日に「都立・公社病院診療データバンク構想の試行結果と今後の方向性について(最終報告)」を公表し、こうした考えを明らかにしました(都のサイトはこちら)。

異なるベンダー間のシステムで分散してしまうデータを集約する機能などの搭載目指す

 都は一昨年(2016年)12月に、すべての都立・公社病院(14病院・合計約7000床)の診療データを活用し▼臨床現場での医療水準の向上▼安全で質の高い先進医療の提供▼臨床研究・治験の推進―を目指す方針を打ち出しています(「都立・公社病院診療データバンク構想」の中間まとめ、関連記事はこちら)。

 今般、この中間まとめで提言されたデータバンクの機能((1)診療支援(2)治験・臨床研究支援(3)経営マネジメント支援(4)医療ビッグデータ―の4機能)を都立駒込病院において試行。機能の効果検証を行い、さらに国の動向等を踏まえた「今後の都立・公社病院における診療データ利活用事業の方向性」を最終報告として取りまとめています。

 
まず(1)の「診療支援」機能では、「輸血製剤投与後の感染症検査」を効果的・効率的に実施するために「日付指定のみで検査対象患者一覧を作成し、帳票出力する機能」を試行的に搭載。これにより、輸血感染症検査の実施率が従前の20%から60%程度にまで向上したことが明らかになりました。さらに、「検査対象患者のカルテを開いた際に、検査オーダの入力を促すメッセージを電子カルテシステムの画面上に表示させる機能」(試行での搭載も検討されたが、費用面から見送られた)を搭載することで、さらなる実施率の向上(検査漏れの解消)が見込まれます。
都立・公社病院診療データバンク構想最終報告1 181225
 
また(2)の「治験・臨床研究支援」機能では、臨床研究や治験対象者の選定を円滑に行う(各システムのベンダーが異なり、データが分散してしまっている)ために、「電子カルテをはじめとする各種業務システムのデータを試行システムのデータベース上に集約する機能」を試行的に搭載。これにより、データ収集に係る職員負担が軽減したことが明らかになりました。さらに、「データを指定し、合成・加工した上で抽出する機能(データマート)」(試行での搭載も検討されたが、費用面から見送られた)を搭載することで、データの即時利用が可能になると見込まれています。
都立・公社病院診療データバンク構想最終報告2 181225
 
さらに(3)の「経営マネジメント支援」機能では、急性期病院・高度急性期病院において極めて重要な「手術室の稼働率向上」を目指し、「手術室の全体状況を把握するためのグラフィカルな資料および分析に必要なデータを抽出する機能」を試行的に搭載。医事データ(診療報酬請求データ)や手術情報を突合解析することで、例えば「全身麻酔下の手術件数が前年度に比べて増加しているが、手術室の稼働状況に大きな変動はない。手術件数増加は『麻酔科医の人員増による』と考えられる」などの検証が可能になっています。ここからは、手術枠の管理をより適切に実施することで、さらなる手術件数の増加が可能となり、「収益の増加」が実現できると判断できます。
都立・公社病院診療データバンク構想最終報告3 181225
 
なお、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)の開発した多機能型経営分析ツール「病院ダッシュボードχ(カイ)」を用いれば、自院の「手術室別・曜日別・時間帯別の稼働状況」を瞬時に把握することが可能です。「特段の理由(緊急手術対応など)なく一部の病室について、特定の曜日、極端に稼働が低くなっていないか」「朝9時から手術室が適切に稼働しているか」「朝の稼働が悪いために、無駄に残業が発生していないか」などをチェックし、その原因の究明、改善に結びつけることが可能となります(関連記事はこちら)。
PFMセミナー GHC塚越4 180721
 
一方、(4)の「医療ビッグデータ」機能については、国におけるデータヘルス改革などの動きを睨み、システム開発などが進められます。

 
このような試行結果を踏まえ、都では試行システムと同様の「データ集積基盤」を構築する方向を確認しています。上記の▼日付指定のみで輸血後感染症検査の対象患者一覧を作成し、帳票出力する機能▼各種業務システムのデータを新システムのデータベース上に集約する機能▼手術室の全体状況を把握するためのグラフィカルな資料および分析に必要なデータを抽出する機能―を搭載するほか、費用面を考慮した上で「データを指定し、合成・加工した上で抽出する機能」などの搭載も検討することになります。具体的には、電子カルテシステムの更新を迎える2022年度に向けて「データ集積基盤」を構築し、2次利用に向けたデータベース整備を行う方針です。
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都立・公社病院診療データバンク構想最終報告5 181225
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顔の見える関係の構築と併せ、データを介した「地域医療連携」が実現することで、あたかも「地域の医療機関全体で、1つの超巨大病院を構成する」ような環境が実現できます。医療機関ごとの特性を維持した上で、「地域のどの医療機関を受診しても、良質な医療が受けられる」環境が整備されれば、医療機関はもとより、地域の住民・患者にとって、この上ないメリットとなるでしょう。

 
なお、厚生労働省では来年度(2019年度)予算案において「医療ICT化促進基金(仮称)」の整備費を計上。医療機関において、異なるベンダー間の電子カルテ等データを連結するコンバータシステム導入の経費を補助するもので、地域の医療機関同士での「診療データを連結した地域医療連携」が進むと期待されます(関連記事はこちらこちら)。
 
 
 
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