「外来医療のあるべき姿」を内閣府に提言へ―日病協
2020.3.30.(月)
全世代型社会保障検討会議の中間報告に盛り込まれた「紹介状なし外来患者からの特別負担徴収義務の拡大」案には、当事者である病院サイドの意見が全く考慮されていない。検討会議の事務局である内閣府に対し、「病院団体の考える外来医療のあるべき姿」を提言する―。
日本病院会や全日本病院協会など15の病院団体で構成される「日本病院団体協議会」の代表者会議は3月27日、こうした点を全会一致で決定しました。
4月からの相澤孝夫新議長(日本病院会会長)の下で提言内容を早急に固めることになります。
「大病院」の1語をとっても、定義も共通認識もない
安倍晋三内閣総理大臣が議長を務める「全世代型社会保障検討会議」(以下、検討会議)が昨年12月19日に中間報告をまとめました。そこでは、「大病院の外来を紹介状なしに受診する患者」に対する特別負担(現在は初診時5000円・再診時2500円)について、次のような見直しを行う方針を打ち出しています。
▽特別負担の金額を引き上げる
▽徴収義務対象病院を「200床以上の一般病院」に拡大する
▽増額分について「公的医療保険の負担を軽減する」よう改める
▽定額負担を徴収しない場合(緊急その他のやむをえない事情がある場合、地域に他に当該診療科を標榜する保険医療機関がない場合など)の要件見直し
さらに検討会議では、この方針に沿って、関係審議会(社会保障審議会や中央社会保険医療協議会など)で細部を詰め、今夏(2020年夏)に最終報告をまとめ、遅くとも2022年度中に制度化するとの考えも示しています。
厚労省ではこの方針に沿い、次の2つのレールで議論を進められています(関連記事はこちらとこちら)。
(1)社会保障審議会・医療部および「医療計画の見直し等に関する検討会」(以下、検討会)において、ベースとなる「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」に関する方向性を固める
(2)社会保障審議会・医療保険部会および中央社会保険医療協議会で「対象病院」や「金額」「医療保険の負担を軽減する仕組み」などを議論する
とくに(1)については、検討会で「外来版の地域医療構想・外来機能報告制度」と言える仕組み創設に向けた議論を始まっており、医療部会と連携しながら、4月中旬にも制度の大枠を固めるスケジュール感で検討が進んでいます(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
こうした動きについて日病協では、「検討会議の中間報告で示された内容(特別負担徴収義務の拡大等)が、日本の医療を良くする方向に向かうものとは思えない」「中間報告に当たり、病院団体からの意見聴取すら行われていない」という指摘が相次いだことが、長瀬輝諠議長(日本精神科病院協会副会長)と相澤孝夫副議長(日本病院会会長)から報告されました。
例えば、中間報告では「『大病院』は充実した人員配置や施設設備を必要とする入院医療や重装施設を活用した専門外来に集中し、外来診療は紹介患者を基本とする。一般的な外来受診は『かかりつけ医機能を発揮する医療機関』が担う」という方向を示していますが、大病院とは「何床以上の病院」であるのか、「かかりつけ医機能を発揮する医療機関」とは、具体的にどのような医療機関であるのか、明確な定義もなく、また共通認識もありません。例えば、大病院と聞いたとき、「500床以上を思い浮かべる人」「1000床以上を思い浮かべる人」「200床でも大病院ではないか、と考える人」などさまざまです。
相澤副議長は、こうした基本的な部分について、明確な定義も共通認識もないままに議論をすることの危険性を従前から強く指摘しています(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
このため日病協では、「我が国の医療のあるべき姿」を早急に取りまとめ、検討会議の事務局を務める内閣府に提言する考えを全会一致で決定しました。中間報告への批判というよりも、「我が国の(外来)医療はこうあるべきで、この考えに沿った検討をお願いしたい」という提言になる見込みです。
4月からの相澤新議長の下で早々に提言内容をまとめ、内閣府に提出されます。
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