がんゲノム医療中核拠点病院、2020年度から静岡がんセンター含む12病院を指定―厚労省
2020.4.1.(水)
2020年度から21年度までの2年間、(1)北海道大学病院(2)東北大学病院(3)国立がん研究センター東病院(4)慶應義塾大学病院(5)国立がん研究センター中央病院(6)東京大学医学部附属病院(7)静岡県立静岡がんセンター(8)名古屋大学医学部附属病院(9)京都大学医学部附属病院(10)大阪大学医学部附属病院(11)岡山大学病院(12)九州大学病院―の12病院を「がんゲノム医療中核拠点病院」として指定する―。
厚生労働省は3月30日に、がんゲノム医療中核拠点病院等の指定に関する検討会(3月4日から持ち回り開催)の意見を踏まえて、こうした点を決定しました。2020年4月1日から発効し、有効期間は2022年3月末までとなります(厚労省のサイトはこちら)。
静岡がんセンターが加わり、がんゲノム医療中核拠点病院は12病院に
ゲノム(遺伝情報)解析技術が進む中で、「Aという遺伝子変異の生じているがん患者にはαという抗がん剤投与が効果的、Bという遺伝子変異のある患者にはβとγという抗がん剤の併用投与が効果的である」などといった情報が明らかになってきています。こうしたゲノム情報に基づいた治療法選択が可能になれば、個々のがん患者に対し「効果の低い治療法を避け、効果の高い、最適な治療法を優先的に実施する」ことが可能となり、▼治療成績の向上▼患者の経済的・身体的負担の軽減▼医療費の軽減―などにつながると期待されます。
我が国においても、産学官が一体的に「がんゲノム医療」を推進すべく、「がんゲノム医療推進コンソーシアム」(共同体)を構築。次のような流れで、がんゲノム医療を提供する仕組みが整ってきています。また、「多数の遺伝子の変異の有無を一括して検出する検査」(遺伝子パネル検査)が開発され、すでに保険適用も行われています。
▽がんゲノム医療を希望する患者に対し、がんゲノム医療中核拠点病院等が十分な説明を行い、同意を得た上で、検体を採取する
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▽検体をもとに、衛生研究所などで「遺伝子情報」(塩基配列など)を分析し、「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)に送付する
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▽がんゲノム医療中核拠点病院等は、あわせて患者の臨床情報(患者の年齢や性別、がんの種類、化学療法の内容と効果、有害事象の有無、病理検査情報など)をC-CATに送付する
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▽C-CATでは、保有するがんゲノム情報のデータベース(がんゲノム情報レポジトリー・がん知識データベース)に照らし、当該患者のがん治療に有効と考えられる抗がん剤候補や臨床試験・治験情報などの情報をがんゲノム医療中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)に返送する
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▽がんゲノム医療中核拠点病院の専門家会議(エキスパートパネル)において、当該患者に最適な治療法を選択し、これに基づいた医療をがんゲノム医療中核拠点病院等で提供する
このような流れの中で、▼遺伝子検査等の実施▼エキスパートパネルによる遺伝子情報の解釈▼医療提供▼人材開発▼治験―などを実施する医療機関も整備が進んでおり、現在、次の3類型の「がんゲノム医療を提供する病院」が設けられています。
▽がんゲノム医療中核拠点病院:エキスパートパネルを設置し、そこでの解釈をもとに最適な抗がん剤治療を提供するとともに、がんゲノム医療に携わる人材の育成や治験等を実施する
▽がんゲノム医療拠点病院:エキスパートパネルを設置し、そこでの解釈をもとに最適な抗がん剤治療を提供する病院(関連記事はこちら)
▽がんゲノム医療連携病院:中核病院と連携しがんゲノム医療を提供する
このうち「がんゲノム医療中核拠点病院」の指定要件については、昨年(2019年)7月に、「小児がん症例を検討する場合には、小児がんに専門的な知識を有し、かつエキスパートパネルに参加したことがある者が1名以上含まれていること」などの見直しが行われています(関連記事はこちら)(見直しを受けた整備指針(指定要件)はこちら)。
今般、15病院から「がんゲノム医療中核拠点病院への指定申請」がありました(従前の11病院の指定期限が2020年3月末で切れる)。審議(書面審査とヒアリング)の結果(厚労省のサイトはこちら)、次の12病院を指定することが妥当と判断され(がんゲノム医療中核拠点病院等の指定に関する検討会)、原案どおり厚生労働大臣が指定を行ったものです。新たに静岡がんセンターが加わり、がんゲノム医療中核拠点病院は12病院となりました。
【北海道ブロック】
(1)北海道大学病院(北海道、継続)
【東北ブロック】
(2)東北大学病院(宮城県、継続)
【関東信越ブロック】
(3)国立がん研究センター東病院(千葉県、継続)
(4)慶應義塾大学病院(東京都、継続)
(5)国立がん研究センター中央病院(東京都、継続)
(6)東京大学医学部附属病院(東京都、継続)
【東海北陸ブロック】
(7)静岡県立静岡がんセンター(静岡県、新規)
(8)名古屋大学医学部附属病院(愛知県、継続)
【近畿ブロック】
(9)京都大学医学部附属病院(京都府、継続)
(10)大阪大学医学部附属病院(大阪府、継続)
【中国四国ブロック】
(11)岡山大学病院(岡山県、継続)
【九州ブロック】
(12)九州大学病院(福岡県、継続)
指定期間は2022年3月末までの2年間で、がんゲノム医療中核拠点病院では「がんゲノム医療連携病院」を選定し、「がんゲノム医療拠点病院」とともに、がんゲノム医療の実施・研究を推進していきます。
2019年にはがんゲノム医療のベースとなるパネル検査(複数の遺伝子変異を一括して解析できる)が保険適用され(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)、2020年度の診療報酬改定ではHBOC(遺伝性の乳がん卵巣がん)患者に対する「未発症部位の切除」等が保険適用されるなどしており(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちら)、がんゲノム医療に対する期待はますます高まります。
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