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外来診療 経営改善のポイント 2024年度版ぽんすけリリース

脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」を保険適用、患者1人当たり1億6707万円―中医協総会(2)

2020.5.14.(木)

指定難病である脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」について保険適用を認める。類似薬(スピンラザ髄注12㎎:949万3024円)に比べて、「疾患の根治可能性がある」「1回の投与で治療が終了する可能性が高い」「静脈点滴であり、患者の負担が軽くなる」などの有用性があることなどを踏まえ、薬価は患者1人当たり1億6707万円7222円に設定する―。

5月13日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こういった点も了承されています。このほかにも18成分・28品目の新薬について保険適用が認められ、5月20日に薬価基準に収載される予定です。

有用性が高く、患者負担も減少すると考えられ、極めて高額な薬価を設定

脊髄性筋萎縮症(SMA:spinal muscular atrophy)は、脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)の病変により、体幹や四肢の筋力低下、筋萎縮が進行性に生じる指定難病(告示番号3)です。

これまでの研究から、原因が運動神経細胞生存(SMN:survival motor neuron)遺伝子の欠失・変異にあることが分かっています。今般、保険適用が認められた「ゾルゲンスマ点滴静注」(成分名:オナセムノゲン アベパルボベク)は、このSMN遺伝子を搭載した「非増殖性組換えアデノ随伴ウイルス」(AAV)を成分とする再生医療等製品です。

本製品の投与により、次のような作用機序で患者の生命予後が改善されると期待されます。
▼本製品(ウイルス)が患者の運動ニューロンや筋細胞に感染する

▼本製品に搭載された遺伝子発現構成体が細胞核内に留まり、SMN遺伝子が長期間安定して発現する

▼脊髄性筋萎縮症(SMA)の原因であるSMN遺伝子の欠失・変異が補われ、発現したSMNタンパク質によって筋細胞の死滅が防がれ、神経や筋肉の機能が高まる



脊髄性筋萎縮症(SMA)は、小児期に発症する▼I型(重症型、「ウェルドニッヒ・ホフマン」(Werdnig-Hoffmann)病)▼II型(中間型、「デュボビッツ」(Dubowitz)病)▼III型(軽症型、「クーゲルベルグ・ウェランダー」(Kugelberg-Welander)病)―、成人期に発症するIV型―に分類されます。

海外の臨床試験では、I型の15名の患者全員について、「13.6か月齢に達した時点」「本製品投与後24か月のフォローアップ完了した時点」のいずれにおいても「永続続的な呼吸補助を必要とせず生存」していた(自然経過では25%が「永続的な呼吸補助が必要」となり、25%が死亡する)などの有用性が確認されています。また、薬価算定組織で実施されたヒアリング(本製品を使用した医師から)において「かつては『首も座らず、歩行もできない』状態であったような患者について、本製品の早期投与により歩行が可能となっている」ことなどが紹介されています。

このように、「これまでと異なる作用機序であること」「疾患の根治可能性があること」「1回の投与で治療が終了する可能性が高いこと(類似薬のスピンラザでは長期間の頻回投与が必要)」「静脈点滴であり、患者の負担が軽くなること(類似薬のスピンラザでは髄腔内への投与が必要)」などの有用性が認められ、また「先駆け審査指定加算」の要件を満たしていることなどを踏まえ、「患者1人当たり1億6707万円7222円」という極めて高額な薬価が設定されました。ただし、高額療養費制度・小児慢性疾患医療費助成制度(言わば小児の難病に対する医療費助成)、各自治体における小児への医療費助成制度などにより、患者負担は極めて小さくなります(実質ゼロというケースが多くなる)。

医療費削減効果も期待され、費用対効果評価で「さらなる価格引き上げ」の可能性も

指定難病のみを効能効果とした医薬品ですが、このように極めて高額な薬価が設定されたことから「費用対効果評価」の対象(区分H3)となり、今後、製薬メーカーにおいてデータ収集等を進めることになります。

この点、本製品については1回投与で治療が終了する可能性が高く、既存の治療法に比べて医療費が削減されることが考えられます(類似薬であるスピンラザでは投与期間が長く、結果として医療費が高くなる)。つまり、「少ない費用で、より高い効果が得られる」可能性があるのです。こうした点が確認された場合、費用対効果評価のルールでは「価格の引き上げ」(比較対照品目(技術)と比べた患者1人あたりの費用削減額の2分の1が上限)が行われます。

極めて高額な医薬品について、さらに薬価が引き上げられる可能性がある点について中医協総会では、「十分なデータ収集を求め、しっかりと費用・効果を確認する必要がある」(診療側の松本吉郎委員:日本医師会常任理事ら)との意見が多数だされています。

日本小児神経学会の「適正使用指針」の則った使用が強く求められる

また、本製品については極めて高額な薬価が設定されていることから、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)から「適正な使用」を強く求める意見が出されています。この点については、日本小児神経学会の「適正使用指針」に則った使用が必要となります。ただし、限られた施設で限られた患者(2歳未満の脊髄性筋萎縮症患者で(臨床所見は発現していないが、遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予測されるものも含む)、抗AAV9抗体が陰性の患者、2020年度には25人と予測)にのみ使用されるため、最適使用推進ガイドラインは作成されていません。

先駆け審査指定加算の在り方を検討すべきではないかとの指摘多数

ところで、本製品の薬事承認に当たっては、▼「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されているにもかかわらず、PMDAの相談制度などを活用していない▼臨床試験において不適切なデータ操作が行われていた―などの問題点が指摘されています。

中医協では、とりわけ前者の「先駆け審査指定制度を活用していない」ことが問題視され、「先駆け審査指定加算」(10%)を適用すべきではないのではないかという意見が支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会)や診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)らから相次ぎました。しかし、現時点では「加算からの除外」ルールが設けられておらず、厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は「今後、先駆け審査指定加算の在り方について検討してほしい」とコメントしています。

なお、2020年度の薬価制度改革では、極めて高額な再生医療等製品について「補正加算率の傾斜配分」を可能とする仕組みが創設されました。一律の補正加算率では、ベースの価格が高いために「加算の額そのものが極めて大きくなってしまう」点を是正するものです。具体的には「補正加算前の価格が1000万円を超える」かつ「ピーク時市場規模(予測)が50億円を超える」再生医療等製品について、補正加算率を傾斜配分する(引き下げる)ものです。

今般のゾルゲンスマでは、ピーク時の市場規模が42億円(薬価1億6707万円×患者数25人)と予測され、上記の傾斜配分が適用されていませんが、今村委員は「この点(傾斜配分の適用対象)についての見直しも検討する必要があるのではないか」と指摘しています。



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