新型コロナ重症者受け入れた場合、救命救急入院料や特定集中治療室管理料を2倍+αに―中医協・総会
2020.4.20.(月)
新型コロナウイルスに感染した中等症・重症の患者を受け入れる医療機関を支援するために、特例的に次のような診療報酬上の対応を行うこととする―。
▽【特定集中治療室管理料】等を算定する病棟に入院している重症の新型コロナウイルス感染症患者(ECMOや人工呼吸器による管理等を要する患者)に対する治療への評価(診療報酬)を2倍に引き上げる
▽中等症以上の新型コロナウイルス感染症患者について、【救急医療管理加算】の2倍相当の加算(1900点)算定などを可能とする
▽ハイケアユニット入院医療管理料等について、同等の人員配置とした病床において、簡易な報告での入院料算定を認める
4月17日に持ち回り開催された中央社会保険医療協議会・総会で、こういった内容が了承されました。同日に、加藤勝信厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣とで、「新型コロナウイルス感染症への診療について国費300億円程度の予備費を活用した評価を行う」旨を合意。これを踏まえて厚生労働省で具体的な内容を詰め、それを中医協が認めたものです(厚労省のサイトはこちら)。
厚労省は4月18日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その12)」として、こうした内容を示しています(厚労省のサイトはこちら)。
目次
重症の新型コロナ患者受け入れるICU等、点数を2倍にし、算定可能日数も延長
新型コロナウイルスの猛威はとどまるところを知らず、我が国でも感染患者が急増しています。これまでのデータでは「感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっている」ことを明らかにしており、感染患者数の増加は「人工呼吸器による呼吸管理や、集中治療室での集中管理が必要な重症者等の増加」にもつながります。
ところで、重症患者への対応に関しては、▼集中管理に通常の2-4倍のスタッフが必要になる▼最重症患者を治療するためのECMO(体外式膜型人工肺、extracorporeal membrane oxygenation)の管理には、多職種による高度な知識、技術が必要となる▼新型コロナウイルス感染患者を集中治療室で受け入れる場合、他疾患も含めて「集中治療管理が必要な患者」を他の治療室や一般病棟などに移送することとなり、そこでの負担が大きくなってしまう―ことなどから、例えば日本集中治療医学会や日本救急医学会、日本病院会などが「診療報酬による手当て」を強く求めていました(関連記事はこちら)。
政府もこの要望を受け止め、4月17日に加藤厚労相・麻生財務相が「重症、中等症の感染患者への診療、医療従事者の感染リスクを伴う診療について特例的な評価を行う。このため予備費300億円程度を確保し、迅速に対応する」旨を合意。この合意内容に沿って、診療報酬上の特例措置が固められたものです。
新たな特例措置(すでに実施されている【院内トリアージ実施料】等の特例算定とは別に実施される)は、大きく次の3点です。
(1)重症の新型コロナウイルス感染症患者の治療に係る評価
(2)患者の重症化等を防ぐための管理、および医療従事者の感染リスクを伴う診療の評価
(3)新型コロナウイルス感染症患者の受け入れに伴い必要な手続き等への柔軟な対応
まず(1)「重症の新型コロナウイルス感染症患者の治療に係る評価」では、【特定集中治療室管理料】等を算定する病棟に入院している重症の新型コロナウイルス感染症患者(ECMOや人工呼吸器による管理等を要する患者)に対する治療への評価(診療報酬)が2倍に引き上げられます。具体的には下表のとおりで、例えば【救命救急入院料1】のイ「3日以内の期間」であれば、通常1日につき1万223点(10万2230円)のところ、ECMO(体外式心肺補助)や人工呼吸器(持続陽圧呼吸法(CPAP)等を含む)による管理など、呼吸器を中心とした多臓器不全に対する管理を要する患者については、臨時特例的に1日につき2万446点(20万4460円)を算定することが可能となります。
また、新型コロナウイルス感染患者では、集中治療期間が長くなることを踏まえ、次のように【救命救急入院料】または【特定集中治療室管理料】の算定可能日数上限が臨時特例的に延長されます。
▼急性血液浄化(腹膜透析を除く)を必要とする状態、急性呼吸窮迫症候群または心筋炎・心筋症のいずれかに該当する患者:21日まで
▼ECMO(体外式心肺補助)を必要とする状態の患者:35日まで
中等症以上の新型コロナ患者受け入れた場合、救急医療管理加算の2倍(1900点)を算定
一方、(2)「患者の重症化等を防ぐための管理、および医療従事者の感染リスクを伴う診療の評価」では、まず新型コロナウイルス感染症患者の重症化防止、他の患者・医療従事者への感染拡大防止のために、「中等症以上(酸素吸入が必要な状態)の新型コロナウイルス感染症患者」(入院基本料または特定入院料のうち、【救急医療管理加算】を算定できるものを現に算定している患者に限る)について、14日を限度として「1日につき【救急医療管理加算1】の2倍に相当する点数(1900点)の算定を認める」ことになりました(例えば【救命救急入院料】算定病棟では救急医療管理加算を算定できず、本特例は適用されないが、一般病棟では救急医療管理加算が算定できるため、本特例の対象となりうる)。
さらに、新型コロナウイルス感染症患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として、看護配置に応じて、1日につき下表の点数(A210の2【二類感染症患者入院診療加算】に相当する点数)を算定できることになります。
最大、1日につき救命救急入院料1では2万946点、ICU1では2万9422点を算定
これらを整理すると、重症・中等症の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるユニット・病棟では、例えば次のような報酬を1日につき算定できることが分かります。
▽救命救急入院料1
【通常】
▼1万223点(3日以内)▼9250点(4-7日)▼7897点(8-14日)
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として500点を加算】((2)の後段)
▼1万723点(3日以内)▼9750点(4-7日)▼8397点(8日以降)
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、500点を加算】((1)、(2)の後段)
▼2万946点(3日以内)▼1万9000点(4-7日)▼1万6294点(8日以降)
▽救命救急入院料2
【通常】
▼1万1802点(3日以内)▼1万686点(4-7日)▼9371点(8-14日)
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として1000点を加算】((2)の後段)
▼1万2802点(3日以内)▼1万1686点(4-7日)▼1万371点(8日以降)
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、1000点を加算】((1)、(2)の後段)
▼2万4604点(3日以内)▼2万2372点(4-7日)▼1万9742点(8日以降)
▽特定集中治療室管理料1
【通常】
▼1万4211点(7日以内)▼1万2633点(8―14日)
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として1000点を加算】((2)の後段)
▼1万5211点(7日以内)▼1万3633点(8日以降)
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、1000点を加算】((1)、(2)の後段)
▼2万9422点(7日以内)▼2万6266点(8日以降)
▽特定集中治療室管理料3
【通常】
▼9697点(7日以内)▼8118点(8―14日)
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として1000点を加算】((2)の後段)
▼1万697点(7日以内)▼9118点(8日以降)
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、1000点を加算】((1)、(2)の後段)
▼2万394点(7日以内)▼1万7236点(8日以降)
▽ハイケアユニット入院医療管理料1
【通常】
▼6855点
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として500点を加算】((2)の後段)
▼7355点
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、500点を加算】((1)、(2)の後段)
▼1万4210点
▽ハイケアユニット入院医療管理料2
【通常】
▼4224点
↓
【新型コロナ感染患者に対する「医療従事者の感染リスクを伴う診療に係る評価」として500点を加算】((2)の後段)
▼4724点
↓
【ECMOや人工呼吸器管理等を要する患者を受け入れる場合として、入院料を2倍とし、500点を加算】((1)、(2)の後段)
▼8948点
▽急性期一般病棟入院料1(ここでは14日以内を考える)
【通常】
▼2100点(1650点+450点(14日以内の加算))
↓
【軽症の感染患者を受け入れる場合】
▼3300点(2100点+950点(救急医療管理加算、4月8日の中医協決定を受けた措置)+250点(二類感染症患者入院診療加算、4月8日の中医協決定を受けた措置))
↓
【中等症の感染患者を受け入れる場合】
▼4250点(2100点+1900点(救急医療管理加算×2、4月17日の中医協決定の(2)前段を受けた措置)+250点(二類感染症患者入院診療加算、4月8日の中医協決定を受けた措置))
集中治療等が必要な患者の他病棟での受け入れ、特例的にICU等の報酬算定認める
さらに(3)「新型コロナウイルス感染症患者の受け入れに伴い必要な手続き等への柔軟な対応」としては、次のような内容が盛り込まれました。
▽新型コロナウイルス感染症患者を受け入れたため、または受入体制を整えるために、▼救命救急入院料▼特定集中治療室管理料▼ハイケアユニット入院医療管理料―と同等の人員配置とした病床において、新型コロナウイルス感染症患者または本来当該入院料を算定する病床において受け入れるべき患者を受け入れた場合に、それぞれの入院料に係る簡易な報告を行うことにより、該当入院料の算定を認める(この場合、報告に用いた書類や配置職員の勤務実績を記録・保管しておくことが求められる)
▽救命救急入院料について、新型コロナウイルス感染症患者のけ受入れ等により、当該医療機関内の特定集中治療室管理料等を算定する病棟に入院できない場合には、患者の同意を得た上で、入院元を問わず救命救急入院料を算定できることとする(通常は、「救命救急入院後症状の安定等により他病棟に転棟した患者」「他病棟に入院中の患者が症状の増悪等をきたしたことにより当該救命救急センターに転棟した場合」には、救命救急入院料は算定できない)(この場合、「本来入院すべき病棟の種別」「本来入院すべき病棟に入院できない理由とその期間」「当該病棟と同等の人員配置とした病棟に入院する必要性」を記録・保管しておくことが求められる)
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