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新型コロナ軽症者等の宿泊療養でホテル代・食事代は不要、宿泊・自宅療養のいずれも医療従事者が健康管理―厚労省

2020.4.7.(火)

新型コロナウイルス感染患者のうち、軽症者や無症状者については宿泊施設や自宅での療養が可能となる。宿泊施設での療養(宿泊療養)については、「同居家族に高齢者や医療従事者がいる」場合を優先し、ホテル代や食事代はかからないが、タオルなどの日用品の費用は患者負担となる―。

宿泊療養・自宅療養のいずれにおいても、医療スタッフ(宿泊施設配置の看護師や保健所など)が1日1回以上、健康状態を把握し、症状の変化に応じて入院への移行などが行われる―。

厚生労働省は4月6日に事務連絡「『新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について』に関するQ&Aについて」を示し、こうした点を明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。

医師が軽症等と判断した新型コロナ患者、保健所が同居状況みて宿泊・自宅療養を調整

新型コロナウイルスの猛威は衰えるところを知らず、我が国においても感染患者が急増しています。新型コロナウイルス陽性と診断された患者については、軽症・重症を問わず「入院」することが原則です(指定感染症)。しかし患者数が増加する中で、この原則を貫ければ「感染症病床がいっぱい」となり、重症患者に適切な入院医療を提供できなくなってしまう事態が生じかねません(テレビ報道等で言われる「医療崩壊」)。

このため厚労省は4月2日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」を提示。そこでは、▼新型コロナウイルス感染患者が増加し、重症者に対する入院医療提供に支障が出る恐れがある場合には、軽症や無症状で重症化の恐れが小さい患者について「都道府県が用意する宿泊施設」や「自宅」での療養を可能とする▼軽症者であっても、家族に高齢者がいる、医療従事者がいる場合には、家庭内での感染を避ける必要性が高いために、優先的に「宿泊施設での療養」を行うこととする―などの考え方を示し、各都道府県で患者数の推計・宿泊施設の確保を進めるよう要請しています。



まず、新型コロナウイルス感染患者(陽性患者)のうち軽症者・無症状感染症(以下、軽症者等)の「宿泊療養・自宅療養の流」れは、次のようになります。

▽軽症の方のうち「重症化のおそれが高い方(高齢者、基礎疾患がある者(糖尿病、心疾患または呼吸器疾患を有する者、透析加療中の者など)、免疫抑制状態である者(免疫抑制剤や抗がん剤を用いている者)、妊娠している者)に該当しない方」で、医師が「入院の必要がない」と判断した方が、宿泊施設・自宅での療養の対象者となる

▽医師が「宿泊療養・自宅療養の対象者に該当する」と判断した場合には、当該医師から保健所に連絡を行い、保健所で「軽症者等が同居している方の中に上記の『重症化の恐れが高い方』が含まれるかどうか」などについて確認する

▽宿泊療養になった場合には、都道府県が用意する宿泊先に移動し、そこで療養する
▽自宅療養になった場合には、公共交通機関以外の方法で帰宅し、外出をせず自宅で療養する

▽同居者に上記の「重症化のおそれが高い方」が含まれる場合で、自宅療養が難しい場合には、優先して宿泊療養となるよう調整される



宿泊療養・自宅療養の前提となる「軽症者等か否か」は、「入院中の医療機関の医師」または「帰国者・接触者外来等の検査を受けた医療機関の医師」が判断することになります。



宿泊療養・自宅療養の期間中は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に基づいて、外出せずに、後述の「健康状態の報告」を行うことになります。体調が良くなったり、咳や発熱などの症状がなくなっても同じで、厚労省は「新型コロナウイルス感染症については、無症状であっても病原体を保有している場合には、人に感染させてしまうリスクがある」ことを強調。後述の「解除基準」を満たすまで▼外出自粛▼健康状態の報告―へ協力してほしいと要望しています。

宿泊・自宅療養の期間、医療従事者が症状等を確認し、必要があれば入院へ移行

入院から宿泊療養・自宅療養に移行した場合、感染患者には「医療は受けられるのか?」「症状が悪化した場合にはどうすればよいのか?」という不安が生じることでしょう。この点、宿泊療養・自宅療養の期間中、宿泊療養の場合は「宿泊施設に配置された看護師等」による、自宅療養の場合には「保健所、または保健所から依頼された者」による、定期的な健康状況の確認(1日1回以上(症状によって回数が増える)、▼体温▼咳▼鼻汁▼倦怠感▼息苦しさ―などを報告・確認)が行われます。症状に変化があった場合には、医療機関と連携し、必要な医療が提供され、症状に応じて「入院に移行」することもあります。その際、「電話や情報通信機器によるオンラインでの経過観察や重症化チェック」などが可能となる制度的な手当てがすでに行われています(関連記事はこちらこちら)。



また宿泊療養・自宅療養の解除については、退院と同様に「2回連続でPCR検査結果が陰性になる」ことが原則として必要になります。ただし、地域の医療体制の状況(PCR検査の患者宅での実施によりスタッフに感染の恐れがある場合など)により「自宅療養の開始から14日間の経過」で解除されることもあります。

宿泊療養の場合、食事・ホテル代はかからないが、日用品の費用は負担を

次に「宿泊施設での療養」の具体的な内容が気になります。例えば、「ホテル等の部屋から一歩も出ることができないのか」「食事はどうなるのか」「宿泊等の費用は自分で負担しなければならいのか、いくらくらいかかるのか」などさまざまあります。こうした点について厚労省は、次のような考えを示しています。

▽都道府県が用意した宿泊施設で一定期間過ごし、その間、外出はできない(4月2日付の事務連絡ではホテル内での移動は可能としている)
家族との面会はできない(家族に感染する可能性がある)
▽食事は、宿泊施設で用意される
基本的に「食費やホテルの滞在費はかからない」が、タオルなどの日用品に要する費用は患者が負担することになる(詳細は宿泊施設ごとに定められる)
▽健康管理は宿泊施設において行われ、症状に変化があった場合には、すぐに宿泊施設職員に連絡することが必要である
▽詳細は、宿泊施設職員の指示に従う



なお、軽症者等の宿泊施設等における廃棄物については、廃棄物処理法施行令で定める感染性廃棄物としての取り扱いが義務付けられてはいませんが、当該施設内や廃棄物処理業者の従業員への感染防止の観点から、「ごみに直接触れない、ごみ袋等に入れて封をして排出する、捨てた後は手を洗う」などの感染防止策を実施する必要があり、さらに、より慎重に「廃棄物処理法施行令で定める感染性廃棄物に準じた取り扱い」をすること、また「医師等の訪問に伴い生じた廃棄物等のうち、特に感染性の危険が高いと判断される注射針等の廃棄物については、医療関係機関等で回収するなど、医療関係機関等により感染性廃棄物として処理することが望ましい」ことなどの考えが示されています。詳細は、▼新型コロナウイルス感染症にかかる廃棄物の適正処理等について廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル廃棄物処理における新型インフルエンザ対策ガイドライン在宅医療廃棄物の処理に関する取組推進のための手引き―などに示されています。

自宅療養では、同居家族との接触が最小限とし、清掃と換気を十分に行う

一方、「自宅での療養」については、次のような内容が示されています。

▽外出せずに、自宅(基本的に個室)で療養し、家族との接触は最小限とする
▽外部からの不用不急の訪問者は受け入れない
▽リネンやタオル、食器などの身の回りの物は共用せず、トイレやお風呂も軽症者等の方専用が望ましく、共用する場合には清掃と換気を十分に行い、入浴は最後に行う
▽「軽症者等の方が触れる物」については、1日1回以上清掃するし
▽保健所(またはは保健所から依頼された方)に、1日1回以上(症状によって)、▼体温▼咳▼鼻汁▼倦怠感▼息苦しさ―などを報告する
▽症状が変化した場合には、あらかじめ保健所から伝えられた相談先へ、我慢せず速やかに連絡する(連絡を受けた相談先で、医師、看護師等や医療機関との調整等の対応が取られる)

宿泊療養の患者が多い場合、「高齢、医療従事者が同居している軽症者等」を優先

ところで、自宅療養となった際に、患者には「同居家族がいるが、家族に新型コロナウイルスをうつしてしまわないか」という心配が生じるでしょう。この点について厚労省は、次のような点を改めて示しています。

まず、感染した場合に重症化リスクの高い「高齢者」と同居している場合には、「軽症者等と高齢者との生活空間を必ず分ける」ことが必要となります。具体的には、▼居室を分けて接しないようにする▼トイレやお風呂も分ける方が望ましいが、共用の場合は「トイレについては感染者が使用する都度に消毒・換気をする」、「お風呂については、感染者が最後に入浴し、入浴後に十分な清掃と換気をする」―ことが必要です。

もっとも一般家庭では、こうした対応が難しいことが多いでしょう。このため厚労省は「生活空間を分けることが物理的に困難な場合」「療養上の留意点を守ることが困難な場合」には、宿泊療養で対応する必要があると述べています。



また、「自宅療養」と「宿泊療養」とのいずれとなるのかについては、▼軽症者等と同居している方の状況(高齢者等のハイリスク者が同居しているか否か)▼都道府県が用意する宿泊施設の受入可能人数▼患者(軽症者等)本人の意向―などを踏まえて、都道府県が調整することになります。また、宿泊施設には受け入れ可能人数の上限があるために、受け入れ可能人数を超過すると想定される場合には、▼高齢者等と同居している方▼医療従事者等と同居している方―が、優先的に宿泊療養となることを明確にしています。



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