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新型コロナ陽性でも、軽症者・無症状者は「宿泊療養・自宅療養」の対象に―厚労省

2020.4.3.(金)

新型コロナウイルス感染患者が増加し、重症者に対する入院医療提供に支障が出る恐れがある場合には、軽症や無症状で重症化の恐れが小さい患者について「都道府県が用意する宿泊施設」や「自宅」での療養を可能とする―。

軽症者であっても、家族に高齢者がいる、医療従事者がいる場合には、家庭内での感染を避ける必要性が高いために、優先的に「宿泊施設での療養」を行うこととする―。

厚生労働省は4月2日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」を示し、こうした考えを明らかにしました(厚労省のサイトはこちら)。

地域の患者動向踏まえ、保健所と連携して「軽症患者の自宅療養への移行」を判断

新型コロナウイルスが我が国でも猛威を振るっており、患者数の急増や院内感染の増加なども生じています。

新型コロナウイルス陽性と診断された患者については、軽症・重症を問わず「入院」することが原則です(指定感染症)。しかし患者数が増加する中で、この原則を貫ければ「感染症病床がいっぱい」となり、重症患者に適切な入院医療を提供できなくなってしまう事態が生じかねません(テレビ報道等で言われる「医療崩壊」)。

このため厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策本部は3月1日に、「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」を示し、新型コロナウイルス感染症疑い患者の増加に応じて、▼必要な感染予防策を十分に整えたうえで、外来に関して「一般医療機関でも外来診療を行う」体制を、入院に関して「感染症指定医療機関のみならず、一般医療機関において、一般病床も含めて必要な病床を確保する」体制を段階的に整える▼感染患者が大幅に増加した場合には、「▼高齢者▼基礎疾患を有する方▼免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方▼妊産婦―以外で症状がない、または医学的に症状が軽い方」は、PCR等検査で陽性であっても、自宅での安静・療養を原則とする―ことを明らかにしています。「入院医療は重症患者や重症化リスクの高い患者(基礎疾患を持つ患者など)に限定し、軽症者・無症状者は自宅等で療養する」ことで、限られた医療資源を有効活用し、いわゆる「医療崩壊」を防止することが狙いです。

今般、患者数の急増等の状況を踏まえ、「軽症者・無症状感染者(以下、軽症者等)の宿泊施設・自宅での療養」に関して、▼対象者▼都道府県等の自治体における準備▼帰国者・接触者外来等における準備―などについて厚労省が考え方を示したものです。

まず、「軽症者等の自宅療養」への移行については、リスクもあることから、各地域で「入院を要する患者が増大し、重症者や重症化するおそれが高い者に対する入院医療の提供に支障を来たす」と判断される場合かどうかを判断することが必要です。厚労省は▼地域の感染拡大状況▼患者受入れ状況―はもちろん、「今後の感染者の増加の兆候」(クラスター(患者集団)が断続的に発生し、大規模化や連鎖が生じているか、感染源の分からない患者の継続的な発生数はどの程度か、など)や「入院医療提供体制の整備状況」なども勘案して判断するよう求めています。

また「軽症者等の自宅療養」への移行に当たり、「保健所等と連携して宿泊療養体制や自宅療養患者へのフォローアップ体制(指導管理の実施や重症化徴候のチェックなど)を整備する」ことが前提になることはもちろんです。

医師の判断で、「宿泊」「自宅」での療養が可能な軽症者等を選別

次に、「自宅療養」等の対象者を見てみましょう。

まず、次の患者は必ずしも入院勧告の対象とならず「都道府県が用意する宿泊施設」や「自宅」での安静・療養が可能となります。

●軽症者等(無症状病原体保有者および軽症患者)のうち、「感染防止にかかる留意点が遵守できる」者で、次のいずれにも該当せずに、帰国者・接触者外来または入院医療機関の医師が「症状(熱、呼吸器症状、呼吸数、胸部レントゲン、酸素飽和度(SpO2)など)や病床の状況等から必ずしも入院が必要な状態ではない」と判断した者
・高齢者
・基礎疾患がある者(糖尿病、心疾患または呼吸器疾患を有する者、透析加療中の者など)
・免疫抑制状態である者(免疫抑制剤や抗がん剤を用いている者)
・妊娠している者



ただし、「高齢でない」「基礎疾患がない」などの軽症者等であっても、「当該軽症者等と同居している者の中に高齢者等がいる」と確認された場合には、利用可能な入院病床数の状況を踏まえて「可能な場合には、入院措置を行う」ことが求められます。軽症者等から高齢の家族等に感染(家庭内ので感染)が生じ、家族である高齢者が感染すれば重症化の恐れが強くなるためです。

高齢者や医療従事者と同居する軽症者等は、優先的に「宿泊療養」の対象に

さらに、「都道府県の用意する宿泊施設等での療養」を行ってもなお入院患者が増大し、重症者への入院医療に支障が出る場合には、次のように「宿泊施設での療養」と「自宅での療養」の、言わば「振り分け」を行うことが求められます。

【宿泊療養】
上記の「都道府県が用意する宿泊施設での安静・療養」の受入可能人数を超えると想定される場合などは、▼高齢者等と同居している軽症者等▼医療従事者や福祉・介護職員など(業務において高齢者等と接触する者(以下、医療従事者等)と同居している軽症者等―を優先的に宿泊療養させる。とくに「自宅療養で、生活空間を分けることができない」場合には、「確実に宿泊施設を利用できる」よう配慮する

【自宅療養】
▽入院病床・宿泊施設の受入可能人数の状況を踏まえ、必要な場合には「外出しない」ことを前提に、自宅での安静・療養を行う

▽軽症者等が、適切に健康・感染管理を行えるようフォローアップ、感染管理対策を行う

▽当該軽症者等が高齢者等や医療従事者等と同居している場合には、軽症者等と同居家族等の生活空間を必ず分ける(例えば、トイレについては、軽症者等が使用する都度「次亜塩素酸ナトリウムやアルコールで清拭する、換気する」などの対応を取れる場合には共用が可能)

▽「近くに親戚宅等があり、高齢者等が一時的に当該親戚宅等に移動することができる」などの場合には、こうした対応を検討する(ただし、当該高齢者等は「濃厚接触者」に当たるため、移動に際しては保健所の指示に従う)

▽自宅療養を行う場合、軽症者等と同居する家族は「濃厚接触者」に該当するため、当該家族の健康観察等について保健所と相談する

PCR検査で2回連続陰性、または14日間増悪ない場合には、宿泊・自宅療養を解除

こうした「宿泊療養・自宅療養」患者は、感染拡大の恐れがあるため外出は禁止されますが、入院患者の退院と同様に、一定の状態に回復すれば「宿泊療養・自宅療養』が解除され、外出等が可能となります。

その解除基準については、次のような考えが示されました。
●原則として、退院基準(症状軽快の確認から24時間後にPCR検査を実施し、陰転化が確認された場合には、当該検査に係る検体採取から24時間以後に再度検体採取を実施。2回連続でPCR検査での「陰性」が確認された場合に退院可能)と同様の基準により、宿泊療養・自宅療養を解除する


●宿泊療養・自宅療養中の軽症者等にPCR検査を実施する体制をとることで、「重症者への医療提供に支障が生じる」おそれがある場合には、宿泊療養・自宅療養開始した日から14日間経過したときに解除できることとする


●当該14日間は、保健所等が健康観察を実施し、症状に大きな変化がある場合などは医師の診察を受け、必要な場合には入院することとする

(退院基準については4月2日に見直されており、厚労省のサイトはこちらととこちら

新型コロナウイルス患者の退院基準見直し内容



こうした「軽症者等の自宅療養」への移行を可能とするために、都道府県では▼宿泊療養の調整窓口の設置▼宿泊療養に関する準備(施設の確保や移動手段の確保など)▼自宅療養の調整窓口の設置▼自宅療養に関する準備(地域におけるフォローアップの体制や体調急変時の対応など)▼帰国者・接触者外来との連携強化―を早急に進めることが求められます。

宿泊施設「内」に限り居室からの外出が可能、入院の代替である点考えた費用負担を検討

なお厚労省では、同日に「宿泊療養に関するマニュアル」を公表。そこでは、宿泊施設スタッフの感染防止策として、例えば▼入所者の居室は「建物の中で一定地域に集めて配置」し、入居時も、近い場所(同じフロア、隣室など)の部屋から順に入室させる(コホーティング)▼標準予防策に加え、飛沫接触予防策を原則実施する▼建物外(フロア単位管理の場合は、フロア)から出ないように指導・協力のアナウンスをする▼十分な換気を行うことについて指導・協力のアナウンスをする▼対面しての説明時は、職員は、手袋・サージカルマスク・眼の防護具(フェイスシールドまたはゴーグル)をつけ、軽症者等側もサージカルマスクを着用する―ことなどを提示。

また、利用者は「時間を区切った上で、建物内に限り居室から出る」ことが認められます(サージカルマスクを必ず着用する)。居室から出られる時間帯については、「職員による食事等の配布時間帯を避ける」など、職員と接触しないような時間帯を設定することが求められます。

なお、「施設利用者の費用負担」について、「入院の代替手段として行うものであり、例えば、入院措置と同様の費用負担とするなどが考えられる。都道府県においては、宿泊軽症者等が負担すべき費用の範囲をあらかじめ定める」などの考えを示しています。

自宅療養、同居家族と生活空間を分け、マスクやゴーグル着用・消毒・清掃など徹底を

さらに厚労省は同日に「自宅療養におけるフォローアップと感染管理対策」についても明らかにしました。

フォローアップに関しては、オンライン診療を活用した指導管理や重症化徴候の確認が可能となっており、電話や情報通信機器を活用した1日1回または2回の経過観察と相談対応が行われます(関連記事はこちらこちらこちら)。

また感染管理対策に関しては、次のような考え方が示されていますが、一般家庭で「どこまで遵守できるのか」、難しい部分もあることから、「宿泊療養」に期待が集まります(関連記事はこちら)。

【居住環境】
▽患者専用の個室確保が望ましい
▽個室が確保できない場合は、同室内の全員がマスク(サージカルマスク等)を着用し、十分な換気を行うこと
▽患者の行動範囲は最小限とし、患者と接する人は十分な距離(1m以上)を保つ
▽部屋の出入り時には、サージカルマスク等を着用し、流水と石鹸・擦式アルコール性消毒薬による手洗いを行う
▽患者専用の洗面所・トイレを確保することが望ましい
▽洗面所・トイレを共用する場合は十分な清掃と換気を行う
▽リネン(タオル、シーツなど)、食器、歯ブラシなどの身の回りのものは共用しない
▽入浴は家族の中で最後に行う
▽外部からの不要不急な訪問者は受け入れない

【同居者の感染管理】
▽患者のケアは特定の人(基礎疾患がない健康な人が望ましい)が担当する
▽患者とケア担当者が接触する際には、どちらもサージカルマスク等を着用する
▽「口腔内・気道のケア」「体液・汚物に触れる」「清掃・洗濯」の際には、▼サージカルマスク等▼手袋▼プラスティックエプロンやガウン(身体を覆うことができ、破棄できる物で代替可:例カッパ等)―を使用する
▽マスクの外側の面、眼や口などに手で触れないよう注意する
▽「患者や汚物との接触」「清掃・洗濯」の後は、石鹸と流水で手を洗う

【清掃】
▽患者が触れるものの表面(ベッドサイド、テーブル、ドアノブなど)は家庭用除菌スプレーなどを用いて、1日1回以上清拭する
▽リネン、衣類等は通常の洗濯用洗剤で洗濯し、しっかりと乾燥させる(洗濯表示に記載されている「上限の温度」での洗濯、乾燥が望ましい)



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