訪問看護体制の強化、看護師の夜勤負担軽減、ナース・プラクティショナー制度創設など検討せよ―日看協
2021.4.9.(金)
訪問看護に携わる看護師の確保に向けた取り組み、夜勤負担軽減、外来看護配置の強化、ナース・プラクティショナー制度の創設に向けた検討を早急に進めてほしい―。
日本看護協会は3月30日、厚生労働省医政局の迫井正深局長に宛ててこうした2022年度予算案・政策に関する要望書を提出しました(日看協のサイトはこちら)。
外来機能報告制度の中で「外来看護」データの収集を
今般の要望では、(1)訪問看護の強化(2)看護職員の確保・勤務環境の改善(3)資格活用基盤の強化(4)外来における看護配置基準の強化(5)ナース・プラクティショナー制度の創設―の5つを重点事項に掲げました。
まず(1)の訪問看護に関しては、▼訪問看護人材確保に係る法改正・推進体制の整備▼訪問看護による薬剤投与体制の整備―の2点を求めています。
訪問看護ステーションに勤務する看護職は、2018年時点で5万1740名で、看護職全体の4%強にとどまります(衛生行政報告例)(関連記事はこちら)。
少子高齢化が進行する中では、今後、地域包括ケアシステム(要介護状態になっても住み慣れた地域で在宅生活を継続可能とする仕組み)を各地域で構築していくことが急務となっており、その要として「訪問看護ステーション」が注目されています。このため訪問看護に従事する看護職の養成も重要で、国は「2025年度には約12万人が必要となる」と試算しており、「倍増以上」の養成が必要です。日看協では「看護師等の人材確保の推進に関する法律」の中に「訪問看護人材の確保」に関する規定(基本方針、都道府県等の責務)を設けるとともに、訪問看護人材の確保と提供体制を一体的に実施する「訪問看護総合支援機能」を設けるよう求めています。
また、後者は「訪問看護現場において、医師の指示の下で患者の苦痛緩和、重症化予防を即時に行う」ために、「速やかに薬剤を確保できる」仕組みを設けることを求めています。
また(2)では、次の3点を「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(1992年の厚労省告示)に盛り込むことを要望しています。
▽夜勤負担軽減(11時間以上の勤務間インターバル確保、3交代制では「月8回以内」とするなどの回数制限など)
▽雇用管理体制整備(患者、家族等からのハラスメント対策をとることを院長等の責務とする)
▽国民の理解向上(看護職へのハラスメント禁止)
夜勤については「離職率と大きな関係がある」ことがデータ上からも明らかとなっており、制度的な対応を図るとともに、各医療機関での「体制見直し」も重要です。もちろん、そのために「看護職の確保」がベースとなる点にも留意が必要でしょう。
また(4)では、外来医療の高度化、患者の高齢化などに対応するために、看護配置基準について、現行の「30対1」を見直す(引き上げる)ことを求めるとともに、医療法改正の中で創設される「外来機能報告制度」の中で「外来看護に関するデータ収集」を行うよう求めています。
看護外来は「医師の負担軽減」に資することはもちろん、患者サイドのニーズも高く(「医師にはなかなか話しにくい事柄であっても、看護師さんには伝えやすい」という心理がある)、先進的な病院では設置が進められています。
(5)のナース・プラクティショナーとは、医師の指示を待たず、自身の判断で一定の医行為を実施できる看護師のことで、米国等では制度化され、▼医療へのアクセスの改善▼待ち時間の短縮▼重症化予防▼高い患者満足度―というメリットがあると指摘されます。
医師(勤務医)の働き方改革を進める中で、医師からのタスク・シフティング先として「ナース・プラクティショナー」に注目が集まりました。ただし、これまでに正面から議論されたことはなく、日看協では「特定行為研修制度では対応できない医療ニーズがあり、医師の指示が得られるに症状が悪化する利用者が少なくない。ナース・プラクティショナー制度創設について早急に検討を開始してほしい」と強く要望しています。
このほか日看協では、▼看護師基礎教育の4年化▼准看護師要請の停止・准看護師制度の課題解決▼救急外来における看護配置基準の設定▼看護補助者との協同推進のための環境整備―なども進めるよう求めています
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