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病院のスタッフ配置、医療法標準適合率は医師97.3%、看護師・准看護師99.3%、薬剤師97.1%—2019年度立入検査結果

2022.8.19.(金)

2019年度に医師配置の標準を満たしている病院は97.3%、看護師・准看護師については99.3%で、いずれも「前年度から改善」した―。

また、薬剤師については「改善」傾向が見れるものの、適合率は97.1%で厳しい状況が続いている(適合率の低い項目のワースト10)―。

このような状況が、厚生労働省が8月18日に発表した2019年度の「医療法第25条に基づく病院に対する立入検査結果」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら)。

医師配置の地域格差(偏在)が依然として存在するが、「徐々に改善」傾向も

医療法では、医療の質・安全性を担保するために、人員配置や構造設備に関する「標準」(基準)を定めています(診療報酬では、ここに上乗せした、より厳しい基準を設けている)。都道府県都知事や保健所設置市の市長、特別区の区長は毎年度、医療機関に立入検査を行い「医療法の基準が遵守されているかどうか」を確認しています(医療法第25条、前年度結果の記事はこちら)。

2019年度には、全8242病院(当時)のうち7749病院に対して立入検査が行われ、実施率は94.0%(前年度から0.2ポイント上昇)となりました。



まず医師の配置状況を見てみます。医療法では、▼一般病床は16対1(患者16人に対し医師1人、以下同様)以上▼療養病床は48対1以上―などの医師配置標準が定められています。

2019年度の標準数遵守状況は97.3%で、前年度から0.3ポイント向上しました。▼2009年度:90.0% →(1.8ポイント向上)→ ▼2010年度:91.8% →(0.7ポイント向上)→ ▼2011年度:92.5% →(1.1ポイント向上)→ ▼2012年度:93.6% →(0.9ポイント向上)→ ▼2013年度:94.5% →(1.0ポイント向上)→ ▼2014年度:95.5% →(0.4ポイント向上)→ ▼2015年度:95.9% →(0.5ポイント向上)→ ▼2016年度:96.4%→(増減なし)→ ▼2017年度:96.4%→(0.6ポイント向上)→▼2018年度:97.0%→▼2019年度:97.3%—となっています。

改善傾向を確認でき、適合率の低い項目ワースト10から抜け出すことができました(前年度はワースト5)。ただし、後述するように「項目の見直し」によるところ(新規に検体検査関連項目が入り、この適合率が極めて低い)も大きく、「医師確保に向けた努力」が強く求められている点は「変わっていない」と考えるべきでしょう。



地域別に見ると、近畿(99.2%、前年度に比べ0.1ポイント低下)や東海(98.8%、同増減なし)、関東(98.1%、同0.5ポイント低下)では高いものの、北海道・東北(93.0%、同0.3ポイント向上)、北陸・甲信越(96.7%、同0.5ポイント向上)、四国(96.9%、同1.8ポイント向上)、では若干低くなっています。また「東日本<西日本」という医師偏在があることを再確認できます。

ただし、地域ブロック間の格差(つまり医師の偏在)は徐々に縮小していると見ることもできます。2020年度からは「医師確保計画」(各都道府県が作成し、段階的に医師多数の地域から医師少数の地域への医師のシフトを促していく)がスタートしており、今後も徐々に偏在が解消していくことに期待が集まっています(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

医師の充足は「医師の働き方改革」にも強く関係します(医師が不足していれば、個々の医師の負担が大きく、働き方改革を進めにくい)。この点、「病院の再編・統合」が▼地域医療構想の実現▼医師働き方改革▼医師偏在の解消—のいずれのテーマにおいても「重要なカギ」となります。とりわけ医師確保が困難な北海道・東北ブロックや北陸・甲信越ブロックなどでは、患者のアクセスにも十分配慮したうえで、今後、「病院の再編・統合」をしっかり検討していくことが重要となってくるでしょう。

全国・地域別の医師配置適合率(2019年度立入検査結果1 220818)



また病床規模別に医師配置状況を見てみると、一般病院では▼500床以上:99.7%(前年度に比べて0.3ポイント上昇)▼400-499床:99.6%(同0.3ポイント上昇)▼300-399床:98.8%(同0.8ポイント上昇)▼200-299床:97.9%(同0.1ポイント低下)▼150-199床:97.4%(同0.2ポイント上昇)▼100-149床:97.0(同0.7ポイント上昇)▼50-99床:96.6%(同0.1ポイント上昇)▼20-49床:94.3%(同0.1ポイント上昇)―となっています。中小規模病院で医師確保が難しい状況を、ここでも再確認できます。

なお、一般病院のうち9病院では、医療法標準の50%に満たない医師しか配置できていません(一般病院の0.1%)。「標準数の半分未満の医師しか配置できていない」一般病院は再び増加に転じており(前年度から3病院増加)、今後の動向に注目する必要があります。

病床規模別の医師配置適合率(2019年度立入検査結果2 220818)

看護職員の確保、中小規模病院のみならず、大病院でも依然として厳しい

次に、看護師・准看護師(以下、看護師等)の配置状況を見てみます。医療法では、▼一般病院の一般病床は3対1以上▼同じく療養病床は4対1以上▼特定機能病院は2対1以上―などといった標準配置数が定められています(病棟単位)。

2019年度は99.3%の病院で医療法標準を満たしています(前年度から0.3ポイント上昇)。▼2009年度:99.2% →(0.2ポイント向上)→ ▼2010年度:99.4% →(増減なし)→ ▼2011年度:99.4% →(0.4ポイント低下)→ ▼2012年度:99.0% →(0.2ポイント低下)→ ▼2013年度:98.8% →(0.5ポイント向上)→ ▼2014年度:99.3% →(増減なし)→ ▼2015年度:99.3% →(0.1ポイント向上)→ ▼2016年度:99.4% →(0.2ポイント低下)→ ▼2017年度:99.2→(0.2ポイント低下)→▼2018年度:99.0%→▼2019年度:99.3%—と「増減を繰り返し」ており、日本全国で「看護師等の確保・定着に苦労している」状況は変わっていません。

適合率の高い地域は▼中国:100.0%(前年度から0.8ポイント上昇)▼四国:99.8%(同0.5ポイント上昇)▼九州:99.7%(同0.1ポイント低下)—などですが、逆に低い地域は▼関東:98.5%(同0.4ポイント上昇)▼近畿:99.1%(同0.5ポイント上昇)▼東海:99.3%(同0.9ポイント上昇)—となっています。医師の適合率と状況は若干異なりますが、「東日本<西日本」という構図は同じです。

また、適合率の比較的高い九州と北海道・東北では「前年度から適合率が低下」していますが、東海や中国では「適合率の上昇」が見られ、地域ごとの看護師の動態を詳しく見ていくことが重要でしょう。

全国・地域別の看護師等配置適合率(2019年度立入検査結果3 220818)



病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:99.7%(前年度から0.3ポイント低下)▼400-499床:99.6%(同1.0ポイント上昇)▼300-399床:100.0%(同0.2ポイント上昇)▼200-299床:99.8%(同0.3ポイント上昇)▼150-199床:99.5%(同0.5ポイント上昇)▼100-149床:99.5%(同0.9ポイント上昇)▼50-99床:98.8%(同0.2ポイント上昇)▼20-49床:98.4%(同0.2ポイント上昇)―となっています。中小規模の病院はもちろん、大規模な病院でも看護師等確保に苦戦している状況を再確認できます。

なお、看護師等を標準の50%未満しか配置できていない病院は、2015年度には解消しましたが、2016年度には3病院、さらに2017年度には1病院、2018年度には2病院、2019年度には1病院となりました(一般病院)。看護師等の配置不足は、個々の看護師等の負担増に直結する(50%未満であれば、単純計算で100%病院の2倍以上の負担となっている計算である)ため、地域全体による支援(個々の病院の努力には限界もある)充実が求められます。

病床規模別の看護師等配置適合率(2019年度立入検査結果4 220818)

病院薬剤師の配置、中国ブロックで適合率が大幅上昇

薬剤師については、医療法上、▼一般病院の一般病床は70対1以上▼同じく療養病床は150対1以上▼特定機能病院は30対1以上―などといった標準配置数が定められています(病棟)。

適合状況を見てみると、2019年度は97.1%の病院で医療法標準を満たしていることが分かりました。前年度と比べて0.4ポイント向上しています。

地域別に適合率を見ると、▼近畿:98.8%(前年度から増減なし)▼関東:98.0%(同0.8ポイント上昇)▼北陸・甲信越:97.9%(同増減なし)—などで高く、逆に▼九州:94.5%(同0.4ポイント低下)▼四国:95.7%(同0.4ポイント低下)▼北海道・東北96.9%(同0.8ポイント上昇)―などで低くなっています。この点、中国ブロックにおいて前年度から3.6ポイントの大幅増となっており、「どのような取り組み、テコ入れを行ったのか」を詳しく見て、他地域でも参考にする必要があるでしょう。

全国・地域別の薬剤師配置適合率(2019年度立入検査結果5 220818)



病床規模別に見ると、一般病院では▼500床以上:99.4%(前年度に比べて0.3ポイント低下)▼400-499床:99.6%(同0.1ポイント低下)▼300-399床:99.6%(同0.4ポイント上昇)▼200-299床:98.7%(同0.1ポイント低下)▼150-199床:97.9%(同0.1ポイント上昇)▼100-149床:97.8%(同012ポイント低下)▼50-99床:97.4%(同0.7ポイント上昇)▼20-49床:94.1%(同3.0ポイント上昇)―となりました。中小規模病院では「薬剤師適合率が低い」状況ですが、前年度に比べて大きく上昇しており、「努力の跡」が強く伺えます。

病床規模別の薬剤師配置適合率(2019年度立入検査結果6 220818)



この点、診療報酬改定を議論する中央社会保険医療協議会などでは「病院と薬局とでの報酬格差が大きく、これが病院での薬剤師確保を困難にしている。格差是正に向けた報酬上の手当て」を求める声も多く、今後の動きに注目する必要があります。



なお、病院全体で法令遵守の度合いが芳しくない項目は、低い順(悪い順)に(1)検体検査に係る台帳作成:90.4%(2)検体検査に係る作業日誌作成:90.9%(3)検体検査に係る精度管理体制整備:91.5%(4)検体検査に係る標準作業書の常備・周知:92.2%(5)職員の健康管理:92.4%—となっており、前年度までと「項目の顔ぶれ」に変化があります。これは「検体検査」関連の調査項目が新設されたためであり(関連記事はこちら)、「従来の適合率が低い項目が、改善した」とは言い切れない点に留意が必要です(依然として早急な改善と公的な支援が求められる)。

適合率が低い項目(2019年度立入検査結果7 220818)



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