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2024年度介護報酬改定論議スタート、地域包括ケアシステム深化・介護人材確保などがサービス共通の重要論点—社保審・介護給付費分科会

2023.5.31.(水)

社会保障審議会・介護給付費分科会で、2024年度の介護報酬改定に向けた本格議論がスタートしています。

5月24日の会合では、厚生労働省老健局老人保健課の古元重和課長から次のようなスケジュール案、すべての介護サービスに関連する分野横断的な論点が示されています。今後、委員の意見を踏まえて微調整をしながら、▼サービス全体・個別サービスに関する大枠の議論→▼個別サービスの単位数・要件・基準などに関する具体的議論—を煮詰めていきます。

【スケジュール案】
▽この6月から夏頃(2023年6月-2023年夏)まで主な論点について議論する(サービスごとの総論論議、いわゆる第1ラウンド)

▽9月(2023年9月)頃に事業者団体から意見聴取を行う

▽10から12月(2023年10-12月)にかけて具体的な方向性を議論する(個別具体的な議論、いわゆる第2ラウンド)

▽12月(2023年12月)中に報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめを行う

▽12月下旬の政府で2024年度予算案編成が行われる(改定率の決定)

▽年明け1月(2024年1月)に介護報酬改定案の諮問・答申を行う

【分野横断的なテーマ】
▽地域包括ケアシステムの深化・推進
▽自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進
▽介護人材の確保と介護現場の生産性の向上
▽制度の安定性・持続可能性の確保

自治体から条例制定のため、基準提示を前倒ししてほしいとの声もあるが・・・

5月24日の会合では、上記のスケジュール案・分野横断的なテーマを踏まえ、委員間でのキックオフ論議が行われています。

まずスケジュール案については、自治体サイド(市町村、都道府県)から「基準の詳細を自治体の条例で設定するものがある。その準備・議会での審議時間を確保するため基準については可能な限り前倒しで議論を進めてほしい」との要請が出ています。

介護報酬の基準(人員配置など)には、▼従うべき基準▼標準▼参酌すべき基準—の大きく3つがあります(項目によって3タイプに分けられる)。「従うべき基準」は国で一律に定めるもの、「標準」は一定の範囲内で柔軟性が認められるもの、「参酌すべき基準」は参酌しさえすれば相当程度自由に設定されるもの、と考えることができます。これらは、自治体の条例で定める必要があり、「国から基準が示される」→「自治体で条例案を作成する」→「地方議会で条例案を審議する」→「議会の承認を経て、条例(基準)を施行する」という流れになります。条例の施行は、原則として「2024年4月1日」(新たな介護報酬の施行にあわせる)となるため、「条例案の作成、審議時間を十分確保するために、国による基準提示を可能な限り前倒ししてほしい」と自治体サイドは要望しているのです。

もっとも、基準の詳細は「改定率」とも大きく関係しますが、上記スケジュールのとおり、改定率は12月下旬の予算案編成過程の中で決定されます。このため「基準提示の前倒し」には限界がある点にも留意が必要です。

地域包括ケアシステムの深化、介護人材確保などが全サービスに共通する重要論点

また分野横断的なテーマは、各サービス(訪問系、通所系、地域密着、施設など)すべての共通する事項と言えます。例えば、要介護度が重くなっても、可能な限り住み慣れた地域での生活を継続可能とする「地域包括ケアシステム」の構築が各地域で進められています。すべての介護サービスが、この「地域包括ケアシステム」の構成要素であることは述べるまでもありません。また、介護人材確保がすべての介護サービスの最重要事項であることも疑う余地はありません。

この点、田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)や吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)や、堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)らは「2024年度は診療報酬・介護報酬の同時改定であり、『医療・介護連携の強化』を横断的テーマに据えるべき」と進言しています。



また今後の改定論議に向けて、「簡素な報酬体系を目指し、医療保険・介護保険の線引きの明確化も図るべき」(長内繁樹委員:全国市長会、豊中市長)、「ホームヘルプサービス(訪問介護)の充実を最優先で考えてほしい」(鎌田松代委員:認知症の人と家族の会理事)、「報酬による人材確保の後押しが極めて重要である」(小林司委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、「物価高騰などに対応するため、基本報酬の引き上げや、基準費用の物価スライドなどを行うべき」(古谷忠之委員:全国老人福祉施設協議会参与、東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)、「我が国の経済回復の流れに水を差さない報酬改定とすべき」(井上隆委員:日本経済団体連合会専務理事)、「利用者負担、保険料負担の増加を招かない報酬改定とすべき」(伊藤悦郎委員:健康保険組合連合会常務理事)、「在宅限界を高めるため、訪問系サービス、これを支える定期巡回随時対応型訪問介護看護などの充実が必須である」(濵田和則委員:日本介護支援専門員協会副会長)、「在宅限界を高めるために、専門性の高い看護職員による訪問看護の評価充実を図るべき」(田母神委員)、「高齢ヘルパーの活躍が美談化されているが、『自分が辞めたら地域が崩壊してしまう』との切実な思いで業務を継続している。介護人材確保を最優先課題に据えるべき」(稲葉雅之委員:民間介護事業推進委員会代表委員)、「生産性向上論議の中では『移動時間』も論点に掲げてほしい」(田中志子委員:日本慢性期医療協会常任理事)、「介護報酬の引き下げは、人件費の縮減に直結する点を十分に認識すべき」(江澤和彦委員:日本医師会常任理事)など、さまざまな意見・提案が出されています。

なお、この分科会の後に財政制度等審議会が建議「歴史的転機における財政」をとりまとめ、「2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定において、改定率の引き上げは、必要性を慎重に議論すべき」などの提言を行っています。

また6月にはいわゆる「骨太方針2023」がとりまとめられ、介護保険制度改革の宿題(利用者負担の在り方、老健施設・介護医療院等における多床室の室料負担など)について答えが示される見込みです。

こうした動きも見ながら、6月以降、介護報酬改定論議が本格化します。



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