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見守り機器や介護ロボ、介護助手等導入による「介護現場の生産性向上」効果を検証—社保審・介護給付費分科会

2022.7.6.(水)

見守り機器や介護ロボット、介護助手などの導入による「介護現場の生産性向上」を拡大していくことに期待が集まるが、「個々のスタッフの負担が増加しないか」「ケア・サービスの質は保たれるのか」などの不安もある。そこで、20-40程度の介護保険施設等において、見守り機器や介護ロボット、介護助手などの導入による効果を測定する調査研究を行う—。

7月5日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会(持ち回り開催)で、こういった方針が固められました。2024年度の次期介護報酬改定に向けて、例えば「見守り機器を導入する介護保険施設などにおいて、夜間の人員配置基準の柔軟化(緩和)を拡充することができないか」などを検討・議論する際の重要な基礎資料になります。

特養ホームでの「見守り機器導入した場合の夜間人員配置基準緩和」を拡充できないか

今年度(2022年度)から、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代が75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が後期高齢者となります。このため介護ニーズは今後急速に増大していきます。

その後2040年度にかけては、高齢者の増加ペース自体は鈍化するものの、支え手となる現役世代人口が急速に減少していきます。少なくなる一方の支え手(サービス提供者)で、増大する一方の高齢者(サービス利用者)を支えなければならず、「どのように介護現場の生産性を向上していくか」が今後の介護保険制度運営にとって極めて重要なテーマとなります。

政府も、この点を放置しているわけではなく、例えば▼介護ロボットやICT導入のコストを地域医療介護総合確保基金で支援する▼生産性向上の資するガイドラインを作成し、普及促進を図る▼見守り機器を活用する特別養護老人ホームにおいて、夜間の人員配置基準の緩和や夜間職員配置加算の要件を緩和する(2018年度・2021年度介護報酬改定)—などの取り組みを進めてきています。

2018年度の介護報酬改定では、▼特別養護老人ホーム▼ショートステイ—における【夜勤職員配置加算】について、通常「1名分の人員を多く配置」することが必要なところ、見守り機器の導入によって効果的に介護が提供できる場合には「0.9名分の人員を多く配置」することで足りる(つまり10%の人員基準緩和)ことが認められました。

さらに2021年度改定では、次のように、見守り機器などを活用した場合の人員配置基準緩和を拡充しています(関連記事はこちら)。

▽特養ホーム等の【夜勤直院配置加算】について「見守り機器導入が100%の場合には、40%の人員基準緩和を認める」(通常1名分多くの人員配置が求められるところ、0.6人分多く配置すればよい)区分を設けるなどの拡充を図る

2021年度介護報酬改定(見守り機器などを導入する特養ホームで、夜勤直院配置加算の人員配置基準をさらに緩和する)



▽特養ホームなどにおいて、全床に見守り機器を導入し、夜勤職員全員がインカムなどを使用する場合、夜間の人員配置について、通常の80%(20%緩和、例えば利用者数が26-60人の特養では夜間に2人以上のスタッフ配置が求められるが、1.6人以上で可とするなど)に緩和する

2021年度介護報酬改定(見守り機器などを導入する特養ホームで、夜間人員配置基準を緩和する)



他方、6月7日に閣議決定された規制改革実施計画では「ICT技術活用などを行う特定施設(介護付き有料老人ホーム)などにおける人員配置基準の柔軟化」を2024年度介護報酬改定に向けて検討する方針が示されました(関連記事はこちら)。



介護人材確保が難しい中では、特養ホーム等以外において「夜間スタッフ配置基準の緩和」を拡大することも含め、「介護現場の生産性向上」を進めることが重要ですが、「スタッフ配置が少なくなることで、個々のスタッフの負担が増えはしないか?介護サービスの質は保たれるのか?」などが気になります。この点を放置して人員配置基準の緩和などを進めることはできないため、厚生労働省は今般、厚生労働科学研究において、次の4テーマにわたる「テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証」を行うことを介護給付費分科会に提案しました。

(1)見守り機器等を活用した夜間見守り
(2)介護ロボットの活用
(3)介護助手の活用
(4)介護事業者等からの提案手法

介護ロボット等による生産性向上に関する効果測定を行う



まず(1)は、上述の「見守り機器などを導入した場合の夜間人員配置基準緩和」によって、▼個々の職員の業務負担(身体的・精神的)が増えないか▼利用者へのサービス・ケアの質・量が低下していないか—を特養ホームも含めた介護保険施設等(40施設程度)で効果検証するものです。



また(2)は、40程度の介護保険施設や居住系サービスにおいて、各施設の課題を踏まえた介護ロボット(移譲支援、排泄予測、介護業務支援、見守りの様々な組み合わせ)を導入することで、例えば「スタッフの腰痛予防効果があるか」「業務の効率化が可能になるか」「利用者のケガなどが減少するか」「利用者に関する記録の正確性が向上するか」などを調べるものです。複数ロボット等の組み合わせによる相乗効果にも期待が集まり、調査結果が注目されます。



他方、(3)は20程度の介護保険施設等において、いわゆる「介護助手」を導入し、「間接業務を介護助手が担い、介護福祉士などは直接業務に専念する」という役割分担を進めることで「サービス・ケアの質が向上するのか」「スタッフの負担軽減が図れるのか」などを検証するものです。

この点、介護助手の導入・役割分担を進めるためには、「どの業務を介護助手に担ってもらうのか」の明確化、さらにその前に「どの職種が、どの業務をどの程度の時間行っているのか」の明確化がなされていなければなりません。こうした明確化の過程で「この業務はそもそも必要なのだろうか」など業務の整理・仕分けが進むことも期待されます。厚労省では「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」を施設系・居住系・医療系に分けて整備しており、こうした業務の整理・仕分けや介護助手活用の手順などを示しており、ガイドラインの普及という附随的な効果にも期待が集まります(ガイドラインに関する厚労省のサイトはこちら)。

ガイドラインにおける「介護助手の活用手順」

介護助手の活用に向けた手順



さらに(4)は、介護事業者サイドでの「自施設では生産性向上に向けて、このような取り組みを行っている」という事例について効果検証や評価を行い、今後の改善方向を見出すものです。▼社会福祉法人善光会▼SOMPOケア社▼チャーム・ケア・コーポレーション社—の運営する合計17施設において、ICT技術や介護ロボット、介護助手活用などを組み合わせた生産性向上策が実施されており、その効果や課題を評価していきます。

テーマ4(介護事業者サイドの提案を評価する)



こうした調査研究については「結果のみ」が介護給付費分科会に報告されることが一般的ですが、厚労省では「生産性向上は極めて重要なテーマであり、分科会委員の意見を早期に把握して、丁寧に調査研究を進めたい」との考えの下、「設計段階から」介護給付費分科会に諮られました。

分科会委員からは「生産性向上に向けた取り組みの評価はしっかりやる必要がある」との賛同の声が多く出され、調査研究実施が了承された格好です。あわせて、▼利用者・家族の視点でのデータ収集に力を入れてほしい▼利用者・家族の声を把握するに当たっては、調査の透明性を確保するために「第三者が行う」ことが望ましい▼中小規模の施設も調査対象に加えてほしい—などの建設的な提案が出ています。

こうした意見・提案も踏まえて調査研究の詳細を詰めていきます。見守り機器やロボット、助手などを導入する前の状況(事前調査)と、これらを導入した後の状況(事後調査)を行い、「介護業務に費やした時間」「利用者のADL」「利用者の認知機能」「個々のスタッフの心理的負担や肉体的負担(世痛など)」「個々のスタッフの夜勤状況」などの変化を比較することで、「スタッフの負担が増えていないか」「サービス・ケアの質が下がっていないか」などを確認します。

また、見守り機器や介護ロボット、介護助手については「導入直後には効果は十分にあがらないが、導入から時間が立つことで効果が上昇していく」と考えられるため、事後調査は時間をあけて2回に分けて行われます。

効果データやその解析結果は、介護給付費分科会に報告され、2024年度介護報酬改定論議の重要な基礎資料となります。



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