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病床過剰地域で「ダウンサイジング」が進むよう、効果的な方策を検討せよ―経済財政諮問会議

2018.10.9.(火)

 (1)予防・健康づくりの推進(2)効率的な医療介護制度、地域医療構想等の実現(3)社会保障サービスにおける産業化の推進(4)生涯現役時代の制度構築を通じた経済活力の向上—を柱として社会保障改革を進めよ。とくに(2)では、「病床過剰地域でのダウンサイジング」を進める必要がある―。

 10月5日に開催された経済財政諮問会議では、有識者議員からこういった提言が行われました。

 新内閣(第4次安倍改造内閣)の発足に伴い、安倍晋三内閣総理大臣は「少子高齢化に真正面から立ち向かい、全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革を進めていく」考えを強調しており、今後も活発な議論が行われると予想されます。

少子化を見据えて、「生産性向上」「タスクシフト」なども進めよ

 2025年には、いわゆる団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となることから、今後、医療・介護ニーズが急速に増加していきます。その後、2040年にかけて高齢者人口の増加の程度は鈍化するものの、「生産年齢人口」が急激に減少していくため、社会保障制度の基盤が極めて脆くなっていきます。

このため、給付と負担の見直しにとどまらない「社会保障改革」が求められているのです。

 経済財政諮問会議の有識者議員(▼伊藤元重議員:学習院大学国際社会科学部教授▼高橋進議員:日本総合研究所チェアマン・エメリタス▼中西宏明議員:日立製作所取締役会長兼執行役▼新浪 剛史 サントリーホールディングス代表取締役社長)は、まず2019年度の社会保障関係予算について「高齢化の伸びが緩和される」点を指摘。つまり、2018年度までよりも「伸びを抑制する」、厳しい改革を行うよう強調しています。
経済財政諮問会議1 181005
 
その上で、改革の視点として(1)予防・健康づくりの推進(2)効率的な医療介護制度、地域医療構想等の実現(3)社会保障サービスにおける産業化の推進(4)生涯現役時代の制度構築を通じた経済活力の向上—の4点を掲げました。

まず(1)の「予防・健康づくり」(生活習慣病、認知症予防等への重点的取組)に関しては、関係府省が地方自治体・医師会等と協力して、▼現役世代への「特定健診受診、健康増進等のインセンティブ」として、ポイント制度の導入を促進する▼自治体の判断で「包括的・広域的な民間委託の仕組みを導入する」など、多様なPPP(Public Private Partnership:官民連携)/PFI((Private Finance Initiative:公共施設等の建設、管理、運営等に、民間の資金、経営能力等を活用する仕組み)の活用手法を推進する▼認知症対策について、「予防モデル構築に向けて官民を挙げて取り組む重点プロジェクト」の規模・民間資金受け入れの仕組みを具体化する▼ACP(Advanced Care Planning)や、在宅看取りを推進する―よう提案しています。

厚労省では、すでに高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施する仕組みの構築に向けた検討を進めており、今後、とかく縦割りと言われる「行政内部での連携」も重要課題となってくると考えられます。

 
また(2)の「効率的な医療介護制度、地域医療構想等の実現」では、「病床過剰地域におけるダウンサイジング支援に向けて、民間病院等の誘因になる効果的な追加方策を検討する」よう求めている点が注目されます。

地域によっては、すでに「人口減少」が進んでいます。こうした状況の下では、新規患者の獲得が困難で、「病院等の病床の稼働率を維持するために、退院を伸ばす(つまり在院日数を短縮させない)」という操作が行われがちです。不要な在院日数の延伸は、医療費の高騰につながる(現在の入院料は1日当たりで設定されているため)だけでなく、▼ADLの低下や院内感染のリスクを向上させる▼患者の社会復帰・職場復帰を遅らせ、経済的な困難をもたらす―という弊害もあります。

「本当にその病床規模が必要なのか」を、公立・公的病院だけでなく、民間病院も含めて検証する必要があるでしょう。

  
さらに(3)の「社会保障サービスにおける産業化」に関しては、▼「マイナンバー」「被保険者番号の個人単位化」を活用し、健康関連データの蓄積と活用を推進する▼AIを活用した予防、健診、治療の最適化に向けて、改革工程を具体化する▼医療システム全体のデジタル化を推進し、関連サービスにおける産業化を推進する▼医療関係者の業務分担の見直し・効率的な配置、多様な人材の活用を進め、負担軽減と生産性向上を実現する―といった幅広い改革を求めています。

少子高齢化の進行は、「社会保障費の増大」→「保険料等負担の増加」だけではなく、「医療・介護現場等で働く人材が不足する」ことを意味します。「保険あってサービスなし」という事態が、日本全国で生じる可能性も否定できず、「タスクシフト・タスクシェア」「AI等最新技術を用いた生産性の向上」に向けた取り組みを早急に進める必要があるでしょう。

 
 さらに、社会保障改革で重視しなければならないのが、いわゆる「元気高齢者」にも支え手になっていただくという視点です((4)の「生涯現役時代の制度構築を通じた経済活力の向上」)。

 年金制度改革はもちろん、元気高齢者が「医療・介護」サービスの周辺部分を支えることで、「人材不足」に一定の効果が期待できます。

 
 この点、臨時議員として出席した根本匠厚生労働大臣は、「高齢者の『若返り』が見られ(日本老年学会・日本老年医学会も指摘するように、「10-20年前と比べ、5-10歳程度の若返りが生じている」(加齢に伴う身体機能変化の出現が遅れている))、就業率も上昇している」点を強調し、今後、国民誰もが、より長く、元気に活躍できるよう、▼多様な就労・社会参加の環境整備▼健康寿命の延伸▼医療・福祉サービスの改革による生産性の向上▼給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保—に向けた検討を進めていく考えを示しています。
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