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コロナ補助金・診療報酬特例の見直し、医療・介護保険における負担能力に応じた負担の実現などを早急に検討せよ―財政審

2022.11.10.(木)

11月7日開催された財政制度等審議会・財政制度分科会において、財務省が「社会保障改革」に向けた提案を行いました。「負担能力(=経済能力)に応じた負担」という全世代型社会保障構築の視点に立ち、▼新型コロナウイルス感染症対策▼医療保険▼医療提供体制▼介護保険制度—などについて、広範な見直し案を提示しています。年末の「建議」に向けて議論が活発化していきます(財務省サイトはこちらこちら(参考資料))。

この点、提案内容の中には「筋の悪い」ものも少なからず含まれていますが、我が国に置かれている状況(少子高齢化の進展など)を冷静に見極め、「医療費・介護費を、国民の財布で賄いきれる範囲にどう抑えていくか」などの点について、真剣に各所で議論・検討していく必要があるでしょう。

提案内容の良し悪しはさており、社会保障制度改革が極めて重要な課題である点の認識を

医療保険制度、介護保険制度においては財源の25%が国費です。▼医療技術の高度化(脊髄性筋萎縮症の治療薬「ゾルゲンスマ点滴静注」(1億6707万円)、白血病等治療薬「キムリア」(3350万円)の保険適用など)▼少子・高齢化の進展(ついに今年度(2022年度)から団塊の世代が後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達する。2025年度から2040年度にかけて高齢者の増加ペース自体は鈍化するが、現役世代人口が急速に減少していく)—などにより、医療費・介護費が増加していくことから、その25%に相当する国費支出も増加を続けます。これが国家財政を圧迫していると強く指摘されています。

そこで財政制度分科会では、「国家財政を健全化させる(端的に入りを増やし、出を抑える)ために、医療費や介護費の伸びを我々国民の負担できる水準に抑える」方策の検討を進め、提言を行っています。

11月7日の財政制度分科会では、財務省から社会保障改革、とりわけ医療・介護制度改革に向けて、例えば次のような考え方が提示されました。

【全世代型社会保障の構築】
▽「年齢でなく、負担能力に応じて費用(保険料や自己負担)を負担する」仕組みへの移行を急ぐ

【新型コロナウイルス感染症対策】
▽病床確保料(最高で1日・1床当たり43万6000円)は「平時の診療収益に比べて2-12倍」を支払う計算である。「空床確保が通常医療を圧迫している」との指摘もあり、その在り方や支援額の水準を引き続き検討して

▽ワクチンについて、重症化率や他の感染症とのバランス等をみながら「定期接種化」を検討し、その際、他のワクチン接種と比較して特例的な措置は廃止する

▽薬事承認された治療薬は「早期の薬価収載」を働きかけ、新たに治療薬を購入する場合にも「早期の薬価収載」を求めるとともに、一度に大量に購入するのではなく「薬価収載までに必要な数量」を段階的に購入するようにする

▽医療機関等への補助金・診療報酬特例について、「直近の診療報酬算定はコロナ禍前の水準を上回っている」「医療機関の経営が順調である」点に鑑みて、早急に縮小・廃止する

【医療保険】
▽諸外国にならい「保健医療支出の伸び」が「経済成長率」と乖離しないことを1つのメルクマールとしていく

▽75歳以上の後期高齢者の増加に伴い(2025年度に団塊世代が全員75歳に到達する)、現役世代の負担が急増する可能性があり、▼高齢者医療制度において「負担能力に応じた負担」に向けた見直し▼現役世代の後期高齢者支援金の伸びを、後期高齢者保険料の伸びの水準まで抑える見直し—を早急に実現する(関連記事はこちら

▽被用者保険の保険者間では保険料率に大きな差が生じている点などに鑑み、現行は加入者数に応じた調整となっている前期高齢者納付金を「報酬水準に応じた調整」に移行する(関連記事はこちら

▽リフィル処方箋制度の普及促進に向けて周知・広報を図り、積極的な取組を行う保険者を各種インセンティブ措置により評価していく

▽来年度(2023年度)の薬価改定(中間年改定)については、物価高における国民の負担軽減の観点から「完全実施」(「薬価と市場実勢価格との乖離率の大きなもの」に限定せず、実勢価格と連動しないルールも適用する)を実現する(関連記事はこちらこちらこちら

▽調整幅(改定後の薬価について、流通経費のバラつきなどを考慮し、市場実勢価格まで引き下げず、調整幅(現在は2%)を乗せている)について、廃止を含めて制度のあり方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現する

▽高額・有効な医薬品を一定程度公的保険に取り込みつつ、医療保険制度の持続可能性を確保していくために、▼OTC類似医薬品等の保険給付範囲からの除外▼医薬品を保険収載したまま、患者負担を含めた薬剤費等に応じた保険給付範囲の縮小—など「既存医薬品の保険給付範囲の在り方」を検討する

▽マイナンバーカードの健康保険証活用を広げていく(関連記事はこちら

【医療提供体制】
▽地域医療構想を早急に実現する

▽「かかりつけ医機能」を有する医療機関の機能を明確化・法制化し、機能発揮を促す(関連記事はこちら

▽「職種ごとの1人当たり給与額」が確実に把握できるような制度設計を行う(関連記事はこちら

【介護保険】(関連記事はこちら
▽利用者負担の原則2割化や2割負担対象の拡大、3割負担(現役世代並み所得者)の基準見直しを早急に検討する

▽介護医療院・老人保健施設についても「多床室の室料相当額の保険給付からの除外」を行う

▽ケアマネジメントの意義を認識し、サービスのチェック・質向上を図るため「ケアマネジメントへの利用者負担」を導入する

▽第1号保険料(65歳以上)について「負担能力に応じた負担」の考え方に沿って、高所得被保険者の負担による再分配を強化する(賦課限度額の引き上げなど)

▽要介護1・2への訪問介護・通所介護について、要支援者と同様に地域支援事業(総合事業)への移行を目指し、段階的にでも、生活援助型サービスをはじめ多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にする

▽介護事業所・施設の大規模化を進めるため、大規模な事業所等をメルクマールとして介護報酬を定めていくことも検討していく



すでに、社会保障審議会の医療保険部会や医療部会、介護保険部会、中央社会保険医療協議会などで議論が始まっている項目も多く含まれ、今後の議論の行方に注目する必要があります。

その際、重要となるのが「財務省が社会保障費の伸びを抑制する姿勢を極めて強く打ち出している」という点です。上記の「目立つ改革提案」を見ても「思いつきの提案が多く、現場を考慮していない。現実的でない」内容が少なからず含まれています。例えばワクチンについては「費用負担を見直す前に、コロナ感染症の感染症法の位置付け見直しを先に検討すべき」などと指摘されます。

しかし、国の財政(=我々国民の財布)には限界があり「必要なので青天井に社会保障費を用意・支出できる」わけではありません。▼医療技術の高度化▼高齢化の進展—などにより医療・介護費が増加を続けます。一方、現役世代は急激に減少していくため、「支え手」(費用の支え手、サービスの担い手)が減っていきます。このため、「医療・介護などの支出を抑えなければいけない」「負担(保険料や自己負担)を上げていかなければならない」ことは、火を見るよりも明らかきなのです。この「誰でも分かる点」から目を背けることは決して許されません。

財務省の提案内容について「手法の良し悪し」を評論家のように批判することは一旦置き、「医療費・介護費を、国民の財布で賄いきれる範囲にどう抑えていくか」などの点について、真剣に各所で議論・検討しなければならない時期に来ています。



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