メニエル治療などに用いるダイアモックス注射用、脳梗塞患者の脳循環予備脳検査への適用外使用を認める―支払基金、厚労省
2016.9.28.(水)
▽緑内障▽てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)▽肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善▽メニエル病およびメニエル症候群―にのみ使用が認められている『アセタゾラミドナトリウム』(販売名:ダイアモックス注射用 500mg)について、▼脳梗塞▼もやもや病―などの閉塞性脳血管障害における「脳循環予備能」の検査を目的に処方することを、審査上認める―。
こうした審査情報を社会保険診療報酬支払基金がこのほど発出しました。厚生労働省も地方厚生局などにこの情報を23日通知し、審査上のトラブルが生じないよう求めています(関連記事はこちらとこちら)(支払基金のサイトはこちらとこちら)。
医療現場の強い要望に応え、審査において一定の「柔軟な取扱い」を認める
医薬品の保険診療における使用は、薬事食品衛生審議会で有効性・安全性が認められた傷病の治療に限定されています。医療安全を確保するとともに、限られた医療保険財源を適切に配分するためです。
もっとも医療現場においては、医学的・薬学的知見に照らして「薬食審で認められていない疾病にも一定の効果があると強く推測定される」ケースが生じます。
本来であれば、こうした推測が及ぶケースでも、改めて薬食審で効能追加などの手続きを踏む必要があります。しかし、薬食審における審査に当たっては治験データなどを揃える必要があり、患者が医薬品に迅速にアクセスする機会を奪うことにもつながります。そのため医療現場から「医学・薬学上、一定の有用性・安全性があれば、保険適用されていない疾病への使用(適応外使用)を例外的に認めるべきである」との強い要望があり、1980年(昭和55年)に当時の厚生省保険局長が、この例外を認める通知(いわゆる55年通知)を発出し、一定の柔軟な取り扱いが行われています。
支払基金では、審査の透明性、公平・公正性を高めるため、こうした柔軟な取り扱いについて各支部はもちろん、医療関係者らに情報提供しています(関連記事はこちらとこちら)。
その一環としてこのほど、次のような適応外使用を審査上認めることが公表されました(厚労省からの通知は23日、支払基金サイトでの公表は26日)。
▼『アセタゾラミドナトリウム』(販売名:ダイアモックス注射用500mg)について、▽脳梗塞▽もやもや病―などの閉塞性脳血管障害における「脳循環予備能(安静時および負荷時の脳血流量の増加)の検査(SPECTまたは非放射性キセノン脳血流動態検査)」を目的に、静脈内に「500-1000mg」または「患者の体重1kgあたり15-17mg」を処方した場合、当該使用事例を審査上認める
これは、同製剤は、現在、▽緑内障▽てんかん(他の抗てんかん薬で効果不十分な場合に付加)▽肺気腫における呼吸性アシドーシスの改善▽メニエル病及びメニエル症候群―に対する効能・効果が認められており、今般の「脳循環予備能」の検査においても、「「薬理作用(炭酸脱水酵素抑制作用)が同様と推察される」ことから適応外使用が認められるものです。
なお、支払基金では、日本脳卒中学会、日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本核医学会の4学会が合同で「アセタゾラミド(ダイアモックス注射用)適正使用指針」を2015年4月に作成し、そこでは▼検査の必要な症例に限る▼検査について同意書を取得する▼検査実施時の安全管理と必要な措置について習熟する―ことなどが求められている点に留意して使用するよう注意喚起しています。
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