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「ピロリ菌除菌後の健康人における初発胃がんリスク」を予測可能に、超ハイリスク集団も同定—国がん他

2025.4.18.(金)

ピロリ菌除菌後の健康人において、「発がん前の胃粘膜組織におけるDNAメチル化レベル」を測定することによって、初発胃がんのリスクを予測できることを明らかにした—。

さらに「胃がん超ハイリスクリスク集団」を同定するための「発がん前の胃粘膜組織におけるDNAメチル化レベル」を決定した—。

国立がん研究センターと星薬科大学が4月16日に、こうした研究成果を公表しました(国がんのサイトはこちら)。

超ハイリスク者では毎年の経過観察により、内視鏡治療が可能なうちに胃がん発見を

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は胃がんの原因の1つであり、除菌により胃がんリスクが低下することが知られています。本邦では、2013年にピロリ菌除菌が保険適用になり(関連記事はこちら)ましたが、除菌後も年に0.5-1.2%程度で胃がんが発生するため、2年に1回の胃がん検診が推奨されています。しかし、画一的な検診は患者にとっても医療経済にとっても負担が大きく、「個人のリスクに応じた検診」の必要性が指摘されています。

ところで、がんは「突然変異やDNAメチル化異常など、細胞が分裂しても消えない遺伝子の異常によりがん遺伝子が異常に働く・がん抑制遺伝子が働かなくなる」ことで発生します。これらの異常は病原菌や発がん物質などへの曝露により様々な遺伝子に生じ、がんが発生する前の正常組織に徐々に蓄積していきます。

一般に、がん発生前の組織では「突然変異の蓄積はとても少ない」ために測定が困難でしたが、「DNAメチル化異常については胃や大腸などに多く蓄積している」場合があり、その測定が比較的容易です。そこで、古くから「がんが発生する前の胃粘膜組織に蓄積したDNAメチル化異常の量と胃発がんリスクが相関する」ことが横断的研究により示されてきました。

今般、この知見をもとに「DNAメチル化異常の測定により、健康人で初発胃がんリスクを予測できる」ことを証明するために、「ピロリ菌除菌後の健康人」を対象とした多施設共同前向き研究を実施しました。具体的には次のような内容です。

(対象者)
ピロリ菌除菌後でも臨床的に胃がん高リスクと考えられ、新たな対策が必要な可能性のある開放型胃粘膜萎縮を持つ健康人

(実施方法)
胃前庭部および体部から胃粘膜の生検を実施→採取した検体由来DNAを用いて「胃がんリスクマーカーRIMS1遺伝子のDNAメチル化レベル」を測定→その後、5年間、毎年「内視鏡検査による胃がんの検査」を実施



生検は1757名に実施され、うち「1624名」で1回以上の追跡が行われ、「27名」に胃がんが発生しました。

1回以上の追跡を受けた「1624名」を、「胃がんリスクマーカーRIMS1遺伝子のDNAメチル化レベル」によって4つのグループ(メチル化レベル最高群(Q4)・メチル化レベル高群(Q3)・メチル化レベル低群(Q2)・メチル化レベル最低群(Q1))に分けて、胃がん発生との関連を見ると、「メチル化レベル最高群(Q4)では、メチル化レベル最低群(Q1)に比べて、初発胃がん発生リスクが7.7倍高い」ことがわかりました。

メチル化レベルと胃がん発生率との関係



ここから、「ピロリ菌除菌後の健康人において、発がん前の胃粘膜組織におけるDNAメチル化レベルを測定することで初発胃がんのリスクを予測できる」ことが明らかになりました。



さらに、「胃がん発生リスクのとりわけ高い『超ハイリスク』群」の特定に向けた研究も実施したところ、「『胃がんリスクマーカーRIMS1遺伝子のDNAメチル化レベル』が25.7%を超えると、1年間で胃がんを発生する頻度が急速に増加する」(超ハイリスクと考えられる)ことが分かりました。

メチル化レベルと胃がんリスクとの関係(超ハイリスク者の同定)



国がんでは、この「超ハイリスク者」に対しては、「2年に一度の経過観察」よりも「毎年の経過観察」を推奨しています。がんが発生したとしても「内視鏡治療が可能」なうちに発見が可能になると期待できるためです。

国がんでは、この研究をベースとして、次のような発展的研究等につながると期待しています。
▽胃がん超ハイリスク者に対して、検査間隔を短くすることで胃がんの早期発見および内視鏡的治療が効率的に可能となり、患者のQOLを向上できる

▽胃がんリスクの低い(胃粘膜萎縮がない、または、閉鎖型胃粘膜萎縮を有する)健康人も含めた研究によって、「検診不要な低リスク集団」を同定し、「心配の軽減、検診費用の削減」につなげられる

▽日本以外のピロリ菌による胃がんが多い外国(特に東アジア)でも、DNAメチル化リスク診断による個別化医療が実現できる

▽胃以外でも「慢性炎症によりがんが発生する臓器(子宮、肝臓など)」でも、DNAメチル化リスク診断により発がんリスクを予測できるようになる(外国では、子宮頸がんについて実用化されつつある)

メチル化レベルに応じた検査間隔の調整が可能となる



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