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医師働き方改革スタートから1年、地域医療提供に大きな支障は出ていないが、将来の医療の質確保に不安も—全自病・望月会長

2025.4.18.(金)

「医師働き方改革」の本格スタートから1年が経過した。地域医療提供体制の状況を見ると、心配された救急医療の確保については、「集約化」や「病院間の機能分化」などの工夫が行われ、大きな支障は出ていないようだ—。

ただし、若手医師は「積極的に自己研鑽をする医師」と「プライベートを重視し、早々に仕事を切り上げる医師」に二極化していると感じられ、「将来の医療の質」という面で不安がある—。

全国自治体病院協議会の定例記者会見が4月17日に開かれ、望月泉会長(八幡平市病院事業管理者兼八幡平市立病院統括院長)ら幹部から、こうした感想が示されました。

4月17日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の望月泉会長(岩手県立中央病院 名誉院長・岩手県八幡平市 病院事業管理者)

4月17日の定例記者会見に臨んだ全自病幹部。左から田中一成参与(静岡県立病院機構理事長)、松本昌美副会長(奈良県・南和広域医療企業団副企業長)、望月会長、小阪副会長、野村幸博副会長(国保旭中央病院長)

救急医療提供体制を確保するために「集約化」「輪番制」「機能分化」などの工夫進む

昨年(2024年)4月から、勤務医の新たな労働時間規制(いわゆる【医師の働き方改革】)がスタートしています。すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されています。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



ちょうど1年が経過し、全自病では(1)地域医療提供体制への影響(2)医療機関経営への影響(3)今後の課題—などについて情報交換を行い、その内容が望月会長ら幹部から紹介されました。

まず(1)の地域医療提供体制については、医師働き方改革スタート前には「医師の労働時間が短くなり、また大学病院からの派遣医師が引き揚げられるなどして医師数確保も難しくなり、救急を中心に崩壊する危険がある」との懸念がありました。

しかし、意見交換の中では「大きな支障は出ていない」「救急医療については地域で様々な工夫がなされている」との声が多数出ています。

救急医療の工夫としては、例えば▼1市4町で「22時以降の夜間救急は中核病院が対応して、周辺の中小救急医療機関の負担を軽減し、宿日直許を取得する(大学病院からの派遣医師確保のため)」との協定を結ぶ▼4病院で輪番制をとり、「当番日は宿日直許可を得ずに手厚い救急体制を確保し、それ以外の3日間は宿日直許可を取得し、医師負担を軽減する」体制を強化する▼ある地域では「A病院は脳卒中等の救急搬送患者に対応する」「B病院は呼吸器系の救急搬送患者に対応する」などの病院機能分化を進める—などの取り組みが紹介されました。

「救急医療の集約化」が相当程度進んでいることが伺え、「新たな地域医療構想」で目指す方向とも一致しています。今後求められている「地域の実情にマッチした医療提供体制構築」に向けて、医療現場自らが動いていることには大きな期待が持てます。



また(2)の医療機関経営への影響について望月会長は「時間外手当の計算などを正しく行っている(従前、一部病院で計算方法に誤解があった)こと、中堅医師の時間外労働が従前よりも増えていること(管理職にも時間外手当がきちんと支給されるようになった)ことなどにより、人件費が増加している」ことが明らかにされました。病院経営が厳しさを増す中で、今後の動向に注意する必要があるでしょう。

関連して、労働時間等の勤務管理に多くの病院が尽力しているが、難しい部分もあることを望月会長は強調します。この点で最も気になるのが「労働と自己研鑽との峻別」です。多くの病院で峻別ルールを明確化しているものの、例えば、指導医が若手医師に「明日は●●手術などで予習等しておくように」と指示し、これに従って若手医師が勉強等とした場合には「労働」に該当するが、単に「明日は●●手術だからよろしく」と伝えるのみで、若手医師が勉強した場合には「自己研鑽」に該当する可能性があるなど、現場での運用には「曖昧な部分が多くある」と望月会長は指摘します。

もっとも「労働時間の管理」や「勤務間インターバルの確保」などの面では、多くの病院がしっかりした配慮をしているほか、「特定行為研修を修了した看護師や、診療看護師(NP:Nurse Practitioner)の確保により、医師の負担軽減はもちろん、オペ術後の合併症発生の低下という医療の質の向上も実現できている」状況も明らかにされています。さらに望月会長は「DXの推進による業務効率化が、今後ますます重要になる」点も強調しています。

より豊富な知識・より高いスキル獲得のための自己研鑽が妨げられてはいけない

他方、望月会長ら全自病幹部の間では「将来的に、医療の質の低下が生じはしないか」という不安も抱えていることも明らかにされました。望月会長は、「若手医師が『積極的に自己研鑽をする医師』と『プライベートを重視し、早々に仕事を切り上げる医師』に二極化していると感じる」とコメントし、自己研鑽をしっかり行わない医師が増えれば「将来、医療の質が低下するのではないか」と心配しています。

あわせて、▼研修医や専攻医を含め、若手医師には「勉強する、研鑽する」ことが強く求められ、純粋な「労働者」と扱うことで良いのか▼「より豊富な知識を持ち、より高いスキルを身につけ、病気・けがを治したい」という志を持って医師になっているはずであり、自己研鑽が妨げられるようなことがあってはいけない—との考えも示しています。

なお小阪真二副会長(島根県立中央病院長)は「自院(島根県立中央病院)は『救急医療等で大変な病院』との評判が立っており、入職する医師は『積極的に自己研鑽する』タイプであり、実際に積極的に自己研鑽・切磋琢磨しているが、稀に疲弊する若手医師も現れる」ことを紹介しました。医師働き方改革では、「労働時間の管理」だけではなく、「心身の健康確保」のための面談の仕組みなども盛り込まれており、「積極的に自己研鑽する医師、頑張りすぎる医師」に対するフォローも重要です(関連記事はこちらこちら)。

4月17日の定例記者会見に臨んだ、全国自治体病院協議会の小阪真二副会長(島根県立中央病院長)



病院ダッシュボードχ ZEROMW_GHC_logo

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