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大学病院での医師働き方改革に向け、「人員の確保、ICT化の推進」、これらを下支えする「財源の確保」が必要不可欠—医学部長病院長会議

2024.9.17.(火)

2024年度からの医師働き方改革により、大学病院でも業務効率化等を進めているが、限界があり、「人員の確保」「ICT化の推進」、さらにこれらを下支えする「財源の確保」が必須である—。

また、「診療」はもちろん、「研究」「教育」に割く時間も減少している点が心配され、大学病院の医師・研究者等をサポートする体制の整備が必要である—。

全国医学部長病院長会議が9月11日に公表した「大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果」から、こうした状況が明らかになりました(医学部長病院長会議のサイトはこちら)。

「研究」「教育」に割く時間も減少している点が心配される

Gem Medで繰り返しお伝えしているとおり、2024年4月から、【医師の働き方改革】がスタートしています。

すべての勤務医に対して新たな時間外労働の上限規制(原則:年間960時間以下(A水準)、救急医療など地域医療に欠かせない医療機関(B水準)や、研修医など集中的に多くの症例を経験する必要がある医師(C水準)など:年間1860時間以下)を適用するとともに、一般労働者と比べて「多くの医師が長時間労働に携わらなければならない」状況に鑑みた、追加的健康確保措置(▼28時間までの連続勤務時間制限▼9時間以上の勤務間インターバル▼代償休息▼面接指導と必要に応じた就業上の措置(勤務停止など)―など)を講じる義務が医療機関の管理者に課されるものです。

医師働き方改革の全体像(中医協総会1 210721)



厚生労働省の調査では「違法となる1860時間超の時間外・休日労働を行う医師が激減している」ことが、全国自治体病院協議会の調査では「2021年1年間に960時間以上の時間外・休日労働を行った自治体病院勤務医は全体の5%、1860時間超は0.1%にとどまる」ことが分かるなど、医師働き方改革に向けた取り組みが各病院で相当程度進んでいることが分かってきています。

そうした中で医学部長病院長会議は、働き方改革施行後の状況を把握するために本調査を実施(82の大学病院本院を対象に、本年(2024年)4-5月に実施)。そこから次のような状況が明らかになりました。

【全体的事項】
▽本年(2024年)4月時点で、「特例水準」(B・C等)申請医師は41.4%(2022年7月調査(34.2%)から7.2ポイント増加)

大学病院医師の働き方



労働と自己研鑽に関して、88.3%が「理解している」と回答
→臨床研修医や専攻医の7割程度は理解しているが、医学部長病院長会議は「もう少し理解促進が必要」とコメント

▽医師の勤務時間短縮に向けて、「チーム制の導入」「勤務時間内の患者説明、会議実施」などの取り組みが進められている

医師勤務時間短縮に向けた取り組み



▽働き方改革の影響について、「診療に与える影響が最も大きい」との回答が全体では58.0%と最も多い
→教授の65.5%、准教授の48.8%が「研究に与える影響が最も大きい」と考えている(2022年7月調査(教授43.8%、准教授34.3%)よりも増加)

働き方改革の影響



▽働き方改革においては「ICT化の推進が寄与する」との意見が多い

【他職種との連携】
▽特定行為研修修了看護師の配置は1345人(2022年7月調査(808人)から537人・66.5%増加)

特定行為研修修了看護師の配置状況



▽看護師が「特定行為以外」でも医師の時間外労働削減につながる業務を実施している

看護師による特定行為「以外」の業務



▽医師事務作業補助者が、「診療録の代行入力」「紹介状の作成」など、医師の負担軽減につながる業務を実施している

▽薬剤師による医師負担軽減への取り組みも進んできている
→しかし、薬剤師の採用が困難な状況が続いている

▽現場からは、教育や研究への影響を軽減するために、「医学教育の支援のための教員」「研究の準備やサポートを行う研究支援スタッフ」の増員・配置が必要との意見が多く出ている

労働時間短縮に必要なスタッフ配置



【労働時間】
▽週平均の労働時間「50時間未満」の医師が、2022年7月の41.5%から49.6%と増加(8.1ポイント増)
▽年960時間以下では「週60時間未満」労働が77.7%を占めており、2022年7月の70.2%より増加している(7.5ポイント増)
→今後「週60時間以上の医師」を重点に、労働時間の改善が望まれる

労働時間の状況



▽週60時間以上の医師」は、▼職位別に見ると医員、専攻医▼年代別にみると20代、30代▼診療科別にみると小児科、外科—で多い



【教育時間】
▽教育時間が「週5時間以内の医師」が65.3%を占めており、教授、准教授の教育時間が長くなっている

教育時間の状況



【研究時間】
▽「週平均の研究時間」を見ると、5時間以内が全体では54.6%を占める
▽同じく助教では0時間が14.6%、20代医師では80.8%を占めている
→医学部長病院長会議では「若手医師の研究時間の少なさが際立っており、研究活性化の大きな問題点」とコメント

研究時間の状況



【副業・兼業】
▽兼業・副業先の労働時間は、平均で「週5時間から10時間」が57.7%を占め、「週1日程度、兼業・副業に従事している」状況

兼業・副業先の状況



こうした結果を踏まえて医学部長病院長会議では、次のような提言を行っています。

▽人的支援
・現在の教育・研究水準を維持しながら、地域医療を含めた医療を担うには、業務改善・効率化のみでは限度があることから、「医師や医師をサポートする人材の増員、そのための財源措置」が必須である
・若手医師の大学病院離れが加速することを危惧する意見もあり、大学病院医師の給与を一般医療機関や国立病院機構と同様程度まで引き上げる必要がある(20代医師の87.3%、30代医師の51.3%が年間給与(本務地)が500万円未満と回答)
・医学教育支援を行う教員や教務事務職員の増員、研究の準備やサポートを行う研究支援スタッフの配置に向け、養成・と確保、雇用財源の整備や有期雇用の解消など労働条件の改善が急務
・高度な看護師の養成、医療技術職員や医師事務作業補助者等の雇用に向けた、診療報酬による支援が必要

大学病院医師の給与



▽ICT化の推進
・臨床研究支援のためのEDCシステム(臨床試験支援)の導入、研究データを集約するためのサーバーの確保、老朽化した研究設備の更新などのICT化の推進が必要
・IT環境整備、バーチャルリアリティを活用する実践的な実習機器整備、研究を効率的に進めるシステム開発を進める必要がある
・最新の医療機器を適正な期間で更新しながら運営していく必要があり、そのための支援が不可欠



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