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総合診療医の養成に向け、プロジェクトチーム発足へ―日病・堺会長

2016.10.24.(月)

 総合診療医が不足している状況に鑑みて、日本病院会では日本赤十字社や済生会などと連携し、総合診療医の養成に向けたプロジェクトチームを発足させる―。

 日本病院会の堺常雄会長は、24日に開いた定例記者会見でこのような方針を発表しました。22日の常任理事会で固められたものです(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

 ただし、総合診療医は、新専門医制度の下にある「総合診療専門医」とは直接リンクしたものではなく、病院において「総合的な診療に携わる医師」というイメージです。今後のプロジェクトチームの動きが注目されます。

10月24日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

10月24日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

すでに臨床現場で活躍する医師を対象に、総合診療能力を高めてもらうことが目的

 22日に開かれた日病の常任理事会では、医師の需給や医師の教育をテーマとした議論が行われ、その中で「総合診療医が足りない。日赤や済生会などでは、自前で総合診療医を養成する動きがあるようだ。日病でも養成をしていくべきではないか」との声が多数出され、委員会やプロジェクトチームの発足が決まりました。

 堺会長は「養成に向けた素案はまだないが、総合診療専門医を指導する総合診療医が地域にいないと思う。すでに指導医向けの講習会なども行われており、それが日病でも実施できないか、日赤や済生会などの会員病院とも連携して検討していきたい」との考えを24日の会見の席で述べています。

 もっとも、「日病の会員病院が取り組みやすい形としていきたい」とも堺会長は述べており、家庭医療専門医などの養成を行っている日本プライマリ・ケア連合学会などと連携した「総合診療専門医の養成」に乗り出すかどうかは現時点では未定です。堺会長は「初期臨床研修を終え、これから総合診療専門医を目指す医師を対象とするのではなく、すでに会員病院などで活躍し、総合診療に携わりたいと考える医師を対象に、総合診療の能力を高めてもらうほうがよいのではないか」とのイメージも語っています。

新専門医について役員病院にアンケート、2020年まで延期し課題解決求める声も多数

 また24日の会見では、「新たな専門医の仕組みに関するアンケート」集計結果も発表されました。これは、日病の役員病院(79病院)を対象に緊急に実施されたもので、67病院が回答しています。結果を眺めると、次のような状況が明らかになっています。

▼初期臨床研修に基幹型・基幹型+協力型として参加しているのは48病院・71.6%

▼現在、後期研修医の研修を行っているのは53病院・79.1%

▼基幹施設として新専門医制度の研修プログラムを提出したのが37病院、連携施設として研修プログラムを提出したのが50病院

▼新専門医制度の開始延期には44病院・65.7%が賛成(開始時期は、日本専門医機構で決定された「2018年から」が22病院・33.8%、「19年から」が13病院・20.0%、「20年から」が30病院・46.2%)

▼研修プログラム、研修施設認定の仕組みに「問題あり」と考えているのが42病院・63.6%(大学病院などへの集中、認定のハードルが高い、地域・診療科偏在が是正するなどの理由)

▼新専門医制度の改革のみで地域・診療科偏在が軽減できると考えているのは32病院・47.8%にとどまり、半数超(35病院・52.2%)は「軽減は不可能」と考えている

▼新専門医制度へのマッチング導入については、賛成が34病院・51.5%

▼専攻医の給与について、連携施設での勤務中は「初月から連携施設が支払うべき」と考えるのが48病院・71.6%

▼総合診療専門医の養成期間3年について、「2年間を総合診療専門医全般の研修、残り1年は家庭医、病院総合医などの研修に充てるべき」との考えが23病院・34.3%、「3年間すべてを総合診療専門医全般に充て、家庭医・病院総合医などの研修はサブスペシャリティとすべき」との考えが19病院・28.4%、「家庭医・病院総合医などに区分すべきでない」との考えが15病院・22.4%

▼総合診療専門医の養成数について、「専門医全体の1割程度」との考えが24病院・36.9%、「2割程度」との考えが16病院・24.6%、「3割程度」との考えが18病院・27.7%

▼基本19領域でのダブルボードを認めるべきとの考えが46病院・68.7%

▼専門医資格と標榜科の関係について、「専門医を取得した診療科のみを標榜できるようにすべき」との考えが36病院・53.7%、「自由標榜」(現行どおり)が17病院・25.4%

▼専門医資格を診療報酬で評価すべきとの考えが27病院・40.3%

 

 このように、日病の役員病院間でも新専門医制度については見解が大きく異なっている部分もあります。日本専門医機構では、基本問題検討委員会を立ち上げ、総合診療専門医やダブルボード、基本領域とサブスペシャリティ領域との関係などをこれから再整理していく考えですが、議論すべき課題は山積しています。こうしたことから、上記にあるように、「2020年まで新専門医制度の一斉スタートを延期すべき」との声が少なくないのでしょう。

 また、今回のアンケートでは日本専門医機構に対して「学会の移行に沿った方向になりつつある」「オールジャパンというが、このままでは同じ轍を踏むことになる」といった厳しい意見も出されています。この点について堺会長は「日本専門医機構の出す情報と、医療現場が受け取る情報との間にギャップがあるのではないか」と見ており、日本専門医機構からのさらなる情報提供が期待されます。

 なお、日病に対して「積極的に発言していくべき、制度設計から関わるべき」とのエールが多数ある一方で、「日本の病院の将来を構築する視点での検討会がない。存在価値が問われる」という非常に厳しい意見も出されており、堺会長は「真摯に受け止めたい」とコメントしています。

  
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