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2016年度診療報酬改定で病院は「増収減益」、看護必要度要件は12.4%の病院で満たせず―日病

2016.9.26.(月)

 2016年度診療報酬改定後、病院の経営状況を見ると、改定前に比べて収益は増加しているが利益は減少(増収減益)し厳しさを増している。7対1病院の12.4%は、新たな重症度、医療・看護必要度を満たすことができず、今年(2016年)10月以降も「すべての病棟で7対1を継続する」と考えている病院は8割弱にとどまる―。

 こういった状況が、26日の日本病院会の定例記者会見で発表されました。

 日病では必要に応じて追跡調査なども検討し、12月中旬には最終報告(2016年度の診療報酬等に関する定期調査)を行う予定です。

9月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

9月26日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

材料費とくに医薬品費が大きく伸び、病院の「収入」は増加したが、「利益」は減少

 この調査は日病の会員を対象に行われたもので、2016年度改定後(16年6月)と改定前(15年6月)の状況比較などを行っています。

 2016年度は医科本体について0.56%のプラス改定となったため、診療収益は56.4%の病院で増加(増収)しました。診療単価を見ると、入院では59.8%の病院が、外来では69.8%の病院で増加しています。

 一方、経常利益を見ると、56.3%の病院で前年同月に比べて減益となっており、赤字病院の割合は60.6%(前年同月は56.5%、5.1ポイント増加)となっています。

 こうした状況について日病の堺常雄会長は「急性期機能を維持するための人件費や設備投資が必要であり『増収減益』となった。病院経営は年々厳しくなっている」とコメントしています。

 なお、費用について詳しく見てみると、材料費(医薬品、診療材料)が前年に比べて大きく伸びています。稼働病床100床当たりで見ると、医薬品は前年同月に比べて5.3%(診療材料を加味した材料費全体では4.6%)増加しています。この要因について、例えばハーボニー錠(C型肝炎治療薬)など超高額薬剤の影響が想像されますが、日病の診療報酬・病院経営検討委員会の永易卓委員(若草第一病院事務局長)は、「委員会では詳細な分析をすべきとの指摘も出ている。調査すべきという意見で固まれば追跡調査などを実施し、12月中旬の最終報告に盛り込みたい」と述べるにとどめています。

9月26日の日本病院会定例記者会見で、2016年の「診療報酬等に関する定期調査」の中間報告について説明した診療報酬・病院経営検討委員会の永易卓委員(若草第一病院事務局長)

9月26日の日本病院会定例記者会見で、2016年の「診療報酬等に関する定期調査」の中間報告について説明した診療報酬・病院経営検討委員会の永易卓委員(若草第一病院事務局長)

10月以降も「全病棟で7対1を維持する」のは79.1%にとどまる

 次に、2016年度改定で大幅な見直しが行われ、注目を集めている「7対1病院」の状況を見てみましょう。

 2016年度改定では一般病棟用の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)についてC項目の新設など大きな見直しが行われた上で、7対1の施設基準について「看護必要度を満たす患者割合が25%以上」などの厳格化も行われました(関連記事はこちらこちらこちら)。

 この新たな看護必要度要件(新基準で25%以上)を満たしているかどうかを見てみると、2016年6月単月では290病院(新基準で看護必要度をチェック)のうち87.5%にとどまっています(▼40%以上が1.7%▼35-40%が3.4%▼30-35%が24.8%▼25-30%が57.6%▼20-25%が10.3%▼15-20%が2.1%)。看護必要度要件は単月で満たせずとも、すぐに7対1を返上しなければいけないわけではありませんが、「12.4%が満たせていない」状況について日病は重く受け止めています。

 200床以上に限定すると90.6%で25%以上が確保されていますが(▼40%以上が1.9%▼35-40%が3.5%▼30-35%が25.7%▼25-30%が59.5%▼20-25%が8.2%▼15-20%が1.2%)、200床未満では経過措置である「23%以上」(病棟群単位を選択しない場合)を満たす病院は81.9%にとどまっており(▼31%以上が18.2%▼29-31%が21.2%▼27-29%が6.1%▼25-27%が18.2%▼23-25%が18.2%▼21-23%が9.1%▼19-21%が3.0%▼19%未満が6.1%)、規模の小さい病院で厳しいようです。

 また今年(2016年)9月までは経過措置が設けられ、今年3月末に7対1を届け出ている病院では「9月まで看護必要度要件を満たす」とみなされます(極論すれば9月までは看護必要度を満たす患者がゼロでもよい)。しかし、10月以降は子の経過措置が切れるため、7対1病院は本格的に「病床戦略」を立てなければいけません。この点、「10月以降も全病棟で7対1を継続する」と考えている病院は79.1%と8割を切っていることが分かりました。日本病院団体協議会の調査でも「7対1病院の2割協で地域包括ケア病棟などへの移行を決定・検討している」ことが分かっており、これと整合性のとれた結果です。

 それ以外の病院では、▼すべて7対1以外へ移行する病院が0.3%▼一部を7対1以外へ移行する病院が12.5%▼すべて・一部の病棟で減少する病院が1.8%―などとなっています。「病棟群単位の入院基本料」については、届け出が確認できたところが1病院ありますが、詳細は12月の最終報告を待つ必要がありそうです。

 10月移行にどういった届け出がなされるのか、各種の調査が注目を集めそうです。

 

 このほか、▼療養病棟入院基本料2のうち、新施設基準(医療区分2または3の患者が50%以上)を満たす病院は55.9%▼回復期リハビリテーション病棟の新アウトカム評価基準(リハビリの実績指数が27以上)を満たす病院は71.5%▼特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院における紹介状なし患者の特別料金は、初診の中央値5400円、再診の中央値2700円―といった状況なども明らかになっています。

医師キャリア支援センターの機能、地域の「協議の場」に設置できないか

 26日の記者会見では、堺会長から「医師偏在対策」に向けた見解も発表されました(関連記事はこちらこちら)。

 堺会長はまず「日病では、以前に現在の1.2倍の医師が必要(4万人程度の増員)と推計した。ただし単純な増員ではなく、医療提供体制の効率化も進めるべきとの指摘があり、当面は厚生労働省の主張する『現状維持』とし、偏在対策を進める必要がある」と指摘。

 その上で、日本医師会と全国医学部長病院長会議会長が共同提案している「医師キャリア支援センター」(提案では各大学医学部に設置)について(関連記事はこちらこちら)、地域医療構想の実現に向けて地域の関係者が集って議論する「協議の場」にその機能をもたせてはどうかと提案。今後、日医などと意見調整をしていく考えを示しました。

 またやはり日医などが「偏在是正に向けて一定の規制を受け入れる」との考えについて、▼臨床研修修了後に、地域で一定期間診療に従事することを義務づける▼保険医の更新制(地域貢献を要件として課す)を設ける―ということも1つの方法であるとして、検討に値するとの評価をしています。

 さらに初期臨床研修については、「地方での研修医や、研修修了後に大学に戻る医師が増加しており、『諸悪の根源』ではない」との見解も示しています。

 医師の地域・診療科偏在の是正に向け、年末にかけて厚労省の審議会で議論が精力的に行われます。医療関係者の意見がどのようにまとまるのかも含めて、注目が集まります。

 なお、日病では78病院(役員・支部長の在籍する病院)を対象に専門医制度についてアンケートを実施します。堺会長は、「新制度の開始はいつからが適当か」「総合診療専門医はどの程度養成すべきか」といった点について「これまできちんと議論してこなかった」とし、病院経営者の生の声を踏まえて、今後の専門医制度改革に臨む考えです。

 
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