病床機能分化や外来の地域差半減などで、2023年度の医療費は49.5兆円程度に圧縮可能―政府調査会
2016.10.25.(火)
2023年(平成35年度)の医療費について、入院医療費は機能分化を進めることで19兆8000億円から20兆1000億円程度となり、入院外および歯科の医療費については高齢化などの自然増によって30兆3000億円程度と推計されるが、後発品の使用促進により4000億円、特定健診・保健指導の実施率向上により200億円程度、地域差半減により2500億円程度の適正化が期待できる。結果、2023年度の医療費は49兆2500億-49兆5500億円程度になる見込み―。
政府の社会保障制度改革推進本部「医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会」(以下、調査会)で21日、このような試算結果が明らかにされました(関連記事はこちら)。
2018-23年度を対象に、地域差半減や後発品使用促進などの医療費適正化計画
2018年度から都道府県では新たな「医療費適正化計画」を定めます(18-23年度の6年計画、第3期計画)。そこでは、入院医療費については「病床機能分化・連携の推進」の成果を、外来医療費については「後発医薬品使用率80%」「特定健診実施率70%」「特定保健指導実施率45%」「地域差縮減」などの効果を踏まえて医療費を推計することになります(関連記事はこちら)。
調査会では今般、医療費適正化計画の拠り所となる基本方針に沿って、第3期計画が終了する2023年度の医療費を全国ベースで次のように推計しています。
●入院医療費
病床機能分化・連携の推進による成果(一般病床・療養病床が高度急性期、急性期、回復期、慢性期に機能分化し、かつ連携が進んだ状態)の踏まえると、2023年度には19兆8000億-20兆1000億円程度と推計される。ただし、在宅医療などの増加分については盛り込まれていない(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
●入院外・歯科医療費
高齢化などを考慮した場合、2023年度には30兆3000億円程度と推計される。ただし、次のような適正化が期待できる。
▽後発医薬品の使用促進(2017年央に70%以上、2018-20年度末までの早い時期に80%以上)によって4000億円程度の適正化
▽特定健診・特定保健指導の実施率向上(特定健診は70%以上、特定保健指導は45%以上)によって1人当たり6000円程度の医療費が適正化され、全国ベースで200億円程度の適正化
▽入院外の地域差半減によって2500億円程度の適正化(糖尿病の重症化予防により800億円程度、多剤投与の是正により600億円程度、重複投薬の是正により6億円程度など)
こうした適正化を加味すると、2023年度の入院外・歯科医療費は29兆4500億円程度となり、入院と合わせて49兆2500億-49兆5500億円程度になる見込みです。
もっとも調査会では「機械的な試算」であることや、適正化に向けた取り組みが円滑に進んだ場合であることなどを指摘しています。
また、年齢調整後の 1 人当たり医療費が平均を上回る都道府県においては、地域差半減に向けた取り組みを実施しても、医療費適正化の効果は800億円程度にとどまることから、調査会では、国に対して▼糖尿病重症化予防など以外の、新たな取り組みの追加▼適切な情報提供▼積極的に適正化に取り組む都道府県に対するインセンティブ付与▼診療報酬改定などでの「高額薬剤」などの医療の価格への対応―なども要請しています。
なお、調査会では、「医療費の地域差」の要因が1人当たり医療費のうち▼受診率▼日数▼1日当たり医療費―のいずれにあるのかを分析することが重要と指摘。75歳以上の糖尿病患者の1人当たり医療費が最も高い広島県と、最も低い熊本県をターゲットに分析手法の一例も示しています。例えば、同じ月に複数の医療機関から「糖尿病」の記載のあるレセプトが提出されている患者の割合や、糖尿病患者の外来受診回数、検査の回数などさまざまなデータを把握し、他県とベンチマークすることで、自県の状況や課題が明確になってきます。
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