地域医療連携推進法人、2017年4月施行に向けてパブコメ募集―厚労省
2016.12.19.(月)
地域医療連携推進法人(かつて、非営利ホールディングカンパニー型法人と呼ばれていた)には、▼病院や診療所を開設する個人▼介護事業などを開設・管理する個人▼大学などの医療従事者養成基幹の開設者▼医療に関する業務を行う地方公共団体―なども社員として参加できることとしてはどうか―。
厚生労働省は16日に、こうした内容を盛り込んだ「医療法施行規則の一部を改正する省令案」についてパブリックコメントの募集を始めました(厚労省のサイトはこちら)。
病院やクリニックを開設する個人、大学、地方自治体なども社員に
地域医療連携推進法人は、昨年(2015年)の医療法改正で創設された仕組みで、医療法人など病院・診療所・介護老人保健施設を開設する複数の非営利法人が参加して設立します。連携推進法人で、地域医療の再編に向けた統一的な連携推進に向けた方針を策定し、各参加法人はこの方針に基づき、地域医療構想の実現に向けて医療・介護事業を推進していくことが求められます。
名称から分かるように、地域包括ケアシステムの構築や地域医療構想の実現を目指すことが主眼とされていますが、平均在院日数の短縮などによってマーケットを広げなければならない医療機関にとって、緩やかな再編・統合に向けた第一歩にもなると考えられています。
連携推進法人制度は、来年(2017年)4月2日から施行される予定で、厚労省が制度の詳細について広く国民から意見を求めることにしているものです(意見募集は来年1月1日まで)。
まず、連携推進法人の社員には、法律(医療法)が「病院を開設する法人」「介護事業などを開設・管理する法人」を明示しているほか、「地域において良質かつ適切な医療を効率的に提供するために必要な者」を厚生労働大臣が定めるとしています。この点について、省令案では「次に掲げるもので、営利を目的としないもの」を定めてはどうかとしています。
(1)医療連携推進区域において、病院、診療所または介護老人保健施設を開設する個人
(2)医療連携推進区域において、介護事業その他の地域包括ケアシステムの構築に資する事業に係る施設または事業所を開設し、または管理する個人
(3)(1)および(2)に規定する施設・事業所を開設する法人であって、参加法人になることを希望しないもの
(4)医療連携推進区域において、大学その他の医療従事者の養成に関係する機関を開設する者
(5)医療連携推進区域において、医療に関する業務を行う地方公共団体その他当該一般社団法人が実施する医療連携推進業務に関する業務を行う者
地域医療連携推進法人に参加するメリットの1つとして、「法人内部での病床の融通」があげられます。例えば、基準病床数が一般病床と療養病床で合計1000床の地域があったとして、既存病床数は一般病床が800床、療養病床が200床であったとします。この場合、療養病床の増床が不可能なことは当然ですが、「一般病床から療養病床への転換」は都道府県によって可否が異なっていると言います。この点、連携推進法人の内部では、都道府県知事の了承を条件とした上で、一般から療養への転換などを柔軟に行えます。具体的には、次のような要件を満たすことが必要です。
▼地域医療構想の達成を推進するために必要なものである
▼連携推進法人内部の病床数合計が申請の前後で増加しない
▼連携推進法人内部の病床数合計が申請の前後で減少する場合は、医療提供体制の確保に支障を及ぼさない
▼あらかじめ連携推進法人におかれている地域医療連携推進評議会の意見を聞いた上で行われている
このほか、連携推進法人が「資金貸し付け」「債務保証」「連携推進法人に設置する基金を引き受ける者の募集」により参加法人に資金調達を行えることを明確にしたほか、連携推進法人のガバナンスに関する事項を整理しています。
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