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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

摂食機能の向上に向け、自治体が多職種ネットワーク構築の支援を―厚労省

2017.1.24.(火)

 介護予防に積極的な自治体では、高齢者に対して「口腔と摂食機能の重要性」や「機能低下の予防方法」などを学ぶ機会を設けたり、在宅の要介護恋患い者や介護保険施設入所者への歯科医療サービス提供体制を自治体主導で構築しているほか、多職種による「食べること」の支援ネットワーク構築に向けた連携ツール作成などを行っている―。

 厚生労働省が24日に公表した「高齢者の口腔と摂食嚥下の機能維持・向上のための取組に関する調査」結果から、こういった状況が明らかになりました。厚労省はこうした先進事例の情報提供を通じて、横展開を促していく考えです(関連記事はこちらこちらこちら)(厚労省のサイトはこちらこちら)。

介護予防の一環として「口腔機能」や「摂食機能」の維持・向上に積極的な市町村では、(1)高齢者自身に摂食機能維持の重要性を理解してもらう(2)自治体が主導して多職種連携ネットワークを構築する(3)連携を促すためのツール作成などを行う―といった共通の取り組みを行っている

介護予防の一環として「口腔機能」や「摂食機能」の維持・向上に積極的な市町村では、(1)高齢者自身に摂食機能維持の重要性を理解してもらう(2)自治体が主導して多職種連携ネットワークを構築する(3)連携を促すためのツール作成などを行う―といった共通の取り組みを行っている

高齢者自身が、「口腔機能の維持」の重要性を理解することが重要

 介護予防に向けた取り組みの1つとして「口腔管理」や「摂食機能の維持・向上」の重要性が指摘されています。栄養状態の改善や誤嚥性肺炎の防止などはもとより、「口から食事を摂る」ことによる生活の質の向上も期待され、地域包括ケアシステムの構築においても重要テーマの1つとなります。

 2015年度の介護報酬改定でも、『口から食べる楽しみ』の支援を充実するために、介護保険施設における【経口維持加算】を「多職種による食事の観察(ミールラウンド)やカンファレンスなどの取り組みのプロセス・咀嚼能力などの口腔機能を踏まえた経口維持のための支援を評価」する加算へと再編したほか、【経口移行加算】の見直しや【療養食加算】の見直しなどを行っています(関連記事はこちら)。

 厚労省は、こうした「口腔管理」「摂食機能向上」に向けて積極的な取り組みを実施している▼東京都大田区▼東京都新宿区▼千葉県柏市▼富山県南砺市▼岡山県苫田郡鏡野町―の5自治体について調査を行い、どのようにすれば円滑に取り組みが進むのか、どのような取り組みを行っているのかなどについてポイントを分析しました。その結果、5自治体では、歯科医師会、歯科衛生士や管理栄養士などの多職種の専門職と連携して、次の取り組みを推進していることが分かりました。

(1)介護予防事業で、高齢者に対して「口腔と摂食嚥下の機能の重要性」「機能の低下などに対する予防方法」を学ぶ機会を提供

(2)重症化予防のために、在宅の要介護高齢者や介護保険施設入所者への歯科医療サービスの提供体制を「自治体が主導」して構築

(3)多職種の専門職が「食べること」 の支援ネットワークを構築できるよう、連携ツールや地域研修会を通じて支援に伴う課題とノウハウを共有

 

 (1)は高齢者自身に「口腔機能・摂食機能」の重要性を認識してもらうものです。いかに支援を行っても、高齢者自身の努力がなければ効果は期待できないからです。この点、大田区では歯科衛生士・健康運動指導士を講師に迎えた「口から始める健康講座」を積極的に開催し、誤嚥性肺炎予防のための正しい口腔ケア指導などを実施。柏市でも歯科衛生士(歯科介護支援センター)を講師とした「口腔ケア健口(けんこう)講座」を実施し、自作の口腔模型パネルで「嚥下の仕組み」などを分かりやすく説明しています。

 なお鏡野町は町域が広く公共交通手段が不便なため、地域包括支援センターの職員が在宅の高齢者を訪問の上、個別に状況を確認して予防講座などへの参加者を選定し、会場への送迎を行っています。

 また大田区・新宿区・柏市では、在宅の要介護者に対して「歯科医師会が事務局となって、歯科医師を紹介し、摂食嚥下機能支援を行う」ような取り組みも実施しています。

自治体や歯科医師会や医師会に働きかけ、ネットワーク構築の支援を

 こうした取り組みを自治体単独で行うことは困難なため、自治体や関係団体との緊密な連携が必要となります。(2)は「自治体が主導」して、こうした連携ネットワークを構築している点が重視できます。もちろん歯科医師会などが主導になったネットワークも極めて重要ですが、現時点でそうした取り組みが芳しくない場合には、自治体が音頭を取ることが求められます。具体的には、次のような段階を経てネットワーク構築に至っており、構築までの時間を考えると「今すぐ」にアクションを起こすことが重要です。

▼行政が医師会・歯科医師会などをはじめ、地域資源からの協力を得ながら在宅医療の推進や「食べること」の支援など、地域の課題解決のための事業を立ち上げる

  ↓

▼事業の一環として研修会などを開催し、地域の課題を広範囲にわたる多職種の専門職で共有する

  ↓

▼大学・大学病院などから(事業)事務局への参画者を得ることで、エビデンスに裏打ちされた解決方法や研修体制を確立し、地域の住民へ提供する

  ↓

▼地域の多職種の専門職が実地研修や連携ツールを通じてノウハウを共有しながらチームを形成して、住民に対して医療・介護サービスを提供する

  ↓

▼行政と(事業)事務局が、フィードバックされた個別事例や事業全体の進捗状況などを分析して、今後の事業の進め方を検討する

 南砺市では、地域医療再生事業を推進する中で新たに地域包括医療ケア部を編成。地域における医療・介護サービスなどを一体的に統括するとともに、市立病院が地域における「食べること」を支援するための多職種連携を牽引しているといいます。

富山県南砺市が編成した「地域包括医療ケア部」の概要

富山県南砺市が編成した「地域包括医療ケア部」の概要

口腔機能低下を早期発見し、専門職につなぐためのチェック表などを作成

 (3)はネットワーク構築に向けた「手助け」を自治体が行うものと言えます。歯科医師会などが積極的な場合には、行政が一歩引いて「手助け」にとどめるほうが効果的な場合もあるでしょう。

 新宿区や柏市では、「機能の低下」や「疾病などに伴う障害の発生」を早期に発見し専門職につなぐためのチェック表(新宿区『ごっくんチェック表』、柏市『お口のチェックシート』)を作成し、連携ツールとして活用しています。新宿区では多職種の専門職で構成される「摂食嚥下機能支援検討会」が、柏市では歯科医師会が中心となって考案したといいます。

多職種連携ツールの例、新宿区の『ごっくんチェック表』、柏市の『お口のチェックシート』

多職種連携ツールの例、新宿区の『ごっくんチェック表』、柏市の『お口のチェックシート』

  
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