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感染症はいずれ収束し、ピーク時は臨時増床可能なこと踏まえ、地域医療構想の「必要病床数」を検討―地域医療構想ワーキング

2020.11.6.(金)

新型コロナウイルス感染症のピーク時には、「一般病床等を閉鎖し、感染症対策に医療資源を集約」する体制がとられた。今後の新興・再興感染症対策においても同様の考え方がベースとなり、具体的な仕組みを医療計画の中に位置付けてはどうか―。

ただし、地域医療構想に記載されている必要病床数については、「感染はいずれピークを過ぎ、平時に戻る」「感染ピーク時には臨時の増床等も可能となる」点を考慮して、見直しの必要性があるかどうかを考えていく必要がある—。

地域の人口減・疾病構造の変化は進んでおり、公立・公的病院の再編・統合に関する再検証をはじめとする地域医療構想の実現を急がなければならない。ただし、新型コロナウイルス感染症が収束しない現時点で「具体的な期限」を切るべきか―。

11月5日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」(「医療計画の見直し等に関する検討会」の下部組織、以下、ワーキング)で、こういった議論が行われました。

11月5日に開催された「第28回 地域医療構想に関するワーキンググループ」

感染ピーク時には「一般病床等を閉鎖し、感染症対策に医療資源を集約」

猛威を振るう新型コロナウイルス感染症に対処する中で、▼医療機関間の役割分担・連携体制の構築が不十分である▼感染防護具や医療用物資の確保・備蓄▼局所的な病床数不足(感染症病床を超えて、一般病床での対応も必要となった)がある▼特定の診療科における医師不足、看護師等の不足がある―などの医療提供体制上の課題・問題点が浮き彫りとなりました。今後も新たな感染症(新興・再興感染症)が生じる可能性があり、これらの課題解消を急ぐ必要があります。

一方で、人口構造が変化(少子・高齢化の進行)し、それに伴って疾病構造が中長期的に変化(慢性疾患患者の増加)していく状況には変わりがなく、効果的・効率的な医療提供体制を再構築する必要性は変わっていません。逆に、上述のように「医療機関間の役割分担・連携体制の構築」を急ぐべきことが確認されています。

こうした状況を踏まえて地域医療構想ワーキングでは、▼新型コロナウイルス感染症への対応▼広範な新興・再興感染症への対応▼少子高齢化を踏まえた効率的かつ効果的な医療提供―を可能とする「医療提供体制の再構築」をテーマに議論していく方針を前回会合(10月21日)で固めました(関連する議論の記事はこちら(社会保障審議会・医療部会)こちら(医療計画見直し検討会))。

具体的な論点として、(1)新興・再興感染症の拡大時にどのように対応すべきか(2)新興・再興感染症を地域医療構想の中でどう勘案するか(3)公立・公的等病院の再編・統合に向けた再検証をどう考えるか(4)医療提供体制再構築のスケジュールをどう考える―などが浮上しています。

まず(1)の「感染拡大時の対応」に関しては、厚生科学審議会・感染症部会の「医療計画の中に感染症対策を明確に位置付けるべき」との意見も踏まえ、詳細を親組織である「医療計画の見直し等に関する検討会」で議論していきます。

感染症に対応する医療提供体制として「感染症指定医療機関」や「感染症病床」が整備されています。しかし新興感染症では、その性質(毒性や感染力など)が明らかでなく、「感染症病床だけでは対応しきれない」事態が生じる可能性があります。今般の新型コロナウイルス感染症も同様で、「軽症者、無症候感染者も含めて入院医療で対応する」こととなりました(いわゆる「2類相当」との扱い)。

このため新型コロナウイルス患者を受け入れた医療機関では、「一般病棟・一般病床を一部休止し、医療資源(ベッドや人員)を新型コロナウイルス感染症対策に集約する」こととなりました。11月5日に地域医療構想ワーキングでは、実際に新型コロナウイルス対応を行った病院(▼苫小牧市立病院(北海道)▼雲南市病院(島根県)▼東京医科歯科大学医学部附属病院(東京都)▼医療法人社団直和会平成立石病院(東京都)―)からヒアリングをしており、そこでも上述の体制を敷く必要があったことが報告されました。一部病棟・病床を閉鎖することで看護職員を「新型コロナイルス患者対応」に集約する必要があるためです。重症患者へのECMO(体外式膜型人工肺)装着などでは多くの医療人材が必要となり、例えば東京医科歯科大病院では「1対1・1対2(2対1ではない、患者1人に対し常時2人の看護職員を配置する)などの非常に手厚い看護体制を敷く必要があった」ことが紹介されています。

新型コロナウイルス感染症患者の対応体制イメージ(地域構想ワーキング 201105)



このように「一般病棟・一般病床を一部休止」した場合には、新型コロナウイル感染症患者以外の患者(救急搬送患者、手術が必要な患者)を他医療機関で受け入れる必要が出ています。北海道苫小牧市では、▼苫小牧市立病院が新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる▼他の民間病院(王子総合病院)が他の救急患者を受け入れる―といった役割分担をしています。今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)も、医療計画においてこうした点を地域で明確化すること重要である旨を強調しています。

今後の新興・再興感染症対策においても、感染拡大時には「一般病棟・一般病床を一部休止し、医療資源(ベッドや人員)を感染症対策に集約する」ことが重要になると考えられ、今後、「医療計画の見直し等に関する検討会」で議論していくことになります。

この点に関連して岡留健一郎構成員(日本病院会副会長)は「全国一律の医療政策では、有事には対応できないことが明確になった」と強調しました。岡留構成員が名誉院長を務める済生会福岡総合病院(福岡県)でも、多数の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れるために、例えば「救命救急センターの一部を新型コロナウイルス感染症の専用病床へ変更する」などの対応をとっています。ただし、感染の状況・医療資源の状況などは地域ごとに全く異なることから、その特性を踏まえた「柔軟な対応体制」を感染症対策でも考えていくことが重要です。

あわせて地域医療構想ワーキングでは、「感染症対策の正しい知識・技術を地域単位で平時から向上させていく」ことの重要性も確認されています。診療報酬では【感染防止対策加算】が設けられ、院内の感染防止対策体制にとどまらず、「地域での感染防止対策力向上に向けた連携」も評価されています。2022年度の次期診療報酬改定でも「感染防止対策の充実」が重要項目の1つに据えられる可能性が高いと考えられます。

必要病床数、感染症対策を踏まえて見直すべきか

また(2)の「新興・再興感染症を地域医療構想の中でどう勘案するか」とは、端的に「必要病床数を、感染症対策を踏まえて見直す(増床する)べきか」と読み替えることが可能です。

地域医療構想では、各都道府県において、人口動態・疾病受療率などを勘案し、▼高度急性期▼急性期▼回復期▼慢性期―の機能別に「2025年度にどれだけの病床が必要か」を推計しています。この中には、新型コロナウイルス感染症などの新興・再興感染症は考慮されておらず「より多くのベッドが必要になるのではないか」との指摘があるのです。

この点、厚生労働省は「必要病床数を見直す(増床する)必要はないのではないか」との考えを示しています。確かに、感染がピークを迎える時点では「より多くの病床」が必要となる可能性は否定できません。しかし厚労省医政局地域医療計画課の鈴木健彦課長は「感染はいずれ収束し、最終的には平時に戻る。今般も『臨時の増床』や『臨時の医療施設設置』などを認めており、それらを組み合わせてピーク時に対応していくことも重要な論点になる」との考えを示しています。

今後、日本全国はもちろん、多くの地域で「人口減」「高齢化」が進みます。この傾向は新型コロナウイルス感染症でも変化せず(高齢化がストップするわけではない)、医療ニーズの変化を踏まえた医療提供体制の再構築の必要性も変わりません。地域医療構想は「将来の医療ニーズにマッチするように医療提供体制を再構築していく」ための設計図・工程表と言え、厚労省は、この大枠は維持すべきと考えていることが分かります。

ただし、小熊豊構成員(全国自治体病院協議会会長)は「現在の必要病床数で対応しきれないケース、地域も出てくる可能性がある。地域医療構想、必要病床数の在り方を検証する必要がある」旨を強調しており、今後も地域医療構想ワーキングで議論が続けられる見込みです。

「地域医療提供体制の再構築」の必要性は否定されないが、スケジュールをどう考えるか

(3)は、約440の公立病院・公的病院等に求められている「再編・統合の再検証」スケジュールをどう考えるか、というテーマです。これは(4)の医療提供体制の再構築全体のスケジュールとも関係します。

新型コロナウイルス感染症が地域医療に及ぼす影響を踏まえて、再検証スケジュール(当初は▼機能の見直しは2019年度中▼再編統合は2020年秋まで―)は白紙となり、「再検証等の期限を含め、地域医療構想に関する取組の進め方について、(経済財政諮問会議や社会保障審議会・医療部会などの)議論の状況や地方自治体の意見等を踏まえ、厚生労働省において改めて整理して示す」こととなりました(2020年8月の通知「具体的対応方針の再検証等の期限について」)

このテーマについては、いまだ「具体的な期限」に関する論議には至っていませんが、医療現場や自治体サイドからは「今は新型コロナウイルス感染症対策に注力すべき。現時点で再検証の期限を設けるべきではない」との声が多数出ています。

もっとも「公立病院・公的病院等が、自院の機能を見つめ直す」ことの重要性を否定する意見は出ていません。小熊構成員も「感染症対策の目途(例えば機能分化を進め、感染症対策の基幹的病院を地域で設定するなど)が立たないままに、再検証や地域医療構想の実現を進めよ、というのは無理がある」とコメントしています。



一方、幸野庄司構成員(健康保険組合連合会理事)は「新興・再興感染症で、人口減が止まるわけでもなく、中長期的な疾病構造の変化が止まるわけでもない」と強調し、地域医療構想の実現に向けた動きを加速化すべきと指摘しています。



新型コロナウイルス感染症の感染患者が再び増加する兆しがあり、また今後、季節性インフルエンザとの並走(いわゆるツインデミック)も予想されており、現時点でも「新型コロナウイルス感染症は一定の収束を見た」と言える状況にはありません。

地域医療構想の実現に向けた「地域医療構想調整会議の議論」を、現時点で「早急に進めよ」と求めることは難しそうです。ただし、いつまでも様子見をしていられる状況にないことも事実です。尾形裕也座長(九州大学名誉教授)も「次回会合で何らかの方向性を固めたい」との考えを示しています。(3)の「再検証スケジュールを明確化する」ことまでは難しそうですが、例えば▼(2)の「新興・再興感染症を地域医療構想の中でどう勘案するか」▼(4)の「医療提供体制再構築の全体スケジュール」―などについては一定の方向性が固められる可能性があります。

なお、(4)の医療提供体制再構築に関しては「2025年の地域医療構想実現の先」も考えていくべきとの意見が多くの構成員から出ています。2025年までは「高齢者の増加」(いわゆる団塊の世代が2025年にすべて75歳以上の後期高齢者となる)が生じますが、その後、2040年にかけては「現役世代の減少」(少子化の進行)が顕著となります。そこでは「医療提供体制を支える人材の確保」が難しくなってくるため、別の視点での検討も必要になってくるでしょう。

ぽんすけ2020 MW_GHC_logo

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