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ロボット支援手術は「患者視点でのメリット・優越性」が評価軸に、時間外加算等の施設基準緩和を―外保連

2022.1.25.(火)

ロボット支援手術については「まず保険適用してもらい、症例数を集積する中で、一般内視鏡手術に比べた優越性のエビデンスを構築し、増点を目指す」方向が考えられる。その際、優越性のエビデンスは「患者視点」(合併症や死亡率の低減など)が重要である―。

手術や処置における時間外加算などについて、医療現場の実態を踏まえた「施設基準の緩和」を行うべきである―。

100の外科系学会で構成される「外科系学会社会保険委員会連合」(外保連)が1月24日に開催した記者懇談会で、こういった考えが示されました。

時間外加算の施設基準緩和、「毎日の当直医が3名以上」の施設を対象にしてほしい

外保連は、100の外科系学会で構成される組織で、主に外科系診療の適正かつ合理的な診療報酬のあるべき姿を学術的な視点に立って研究し、提言を行っています。例えば、手術点数の設定に当たっては、外保連の現場調査(どの手術にどういった職種が何人携わり、どの程度の時間がかかるのか、難易度はどの程度か、使用する医療機器等のコストはどの程度か、など)をベースにした「外保連試案」が相当程度勘案されるなど、その提言には深い意味があります。

1月24日には、2022年度の次期診療報酬改定に向けた外保連からの要望内容や、そのベースとなった「外保連試案2022」について詳細な説明が行われました。

2022年度改定に向けては、外保連から新規148項目・既存点数の改正212項目、医療材料に関する改正28項目の要望が行われ、次のような項目が盛り込まれていることが瀬戸泰之・実務委員長(東京大学医学部附属病院院長)から報告されました。

(1)人件費のみで診療報酬点数を超過する術式(2020年度改定後に2857項目)の改善(点数引き上げ)

人件費だけで点数を超過する手術が2857項目もある(外保連会見3 220124)



(2)償還不可な医療材料費のみで診療報酬点数を超過する術式(2020年度改定後に2126項目)の改善(点数引き上げ)

償還不可材料費だけで点数を超過する手術が2126項目もある(外保連会見4 220124)



(3)2010年度改定以降、点数引き上げが全くなされていない術式(例えばK005【皮膚、皮下腫瘍摘出術(露出部)】の「2 長径2センチメートル以上4センチメートル未満」(3670点)など35項目)の改善(点数引き上げ)

(4)複数手術の適正な評価(従たる手術について「一律1個のみ、50%点数」とせず、適切な個数を適切な点数算定可能とするなどすべき、例えばK476【乳腺悪性腫瘍手術】(1万4820-5万2820点)とK476-4【ゲル充填人工乳房を用いた乳房再建術(乳房切除後)】(2万5000点)とは双方100%点数算定を認めるべき)

(5)手術・処置における時間外加算等の施設基準緩和を行う

(6)ロボット支援手術の適応拡大と新規術式の保険適用を認める

(7)KコードについてSTEM7に沿った整理を行う



このうち(5)の手術・処置における時間外加算等は、2014年度の診療報酬改定で「手術・1000点以上の処置について、休日・時間外・深夜に行った場合には当該手術・処置点数の160/100を上乗せする、つまり点数2.6倍にする」ものとして設けられました。

時間外等に対応する医師の負担を考慮したもので、加算取得のためには▼年間の緊急入院患者(意識障害や呼吸不全など)数が200名以上▼全身麻酔手術が年間800件以上▼医師の負担軽減・処遇改善体制の整備▼加算算定診療科での交代制勤務・チーム制の導入▼予定手術前の当直が加算算定診療科全体で年間12日以内―という施設基準が設けられています。時間外などの手術を「大規模な人員配置が手厚い病院」に集約させることを狙った施設基準設定と言えるでしょう。

ただし「施設基準があまりに厳しすぎる」との医療現場の声を受け、2016年度改定では、「予定手術前の当直が加算算定診療科全体で年間12日以内」との要件について「当直医師が毎日6名以上配置されている場合には24日以内とする」との緩和が行われました。

2016年度改定で手術等における時間外加算の施設基準一部緩和が行われた



しかし、「当直医師を毎日6名以上配置することは、相当の大規模病院でなければ困難である。一方、時間外の手術等は中小規模の病院でも相当程度行われている実態があり、そうした実態を考慮すべき」との主張を外保連では繰り返し行っています。

今般、時間外手術の実態をNCD(外保連の運営する、ほぼすべての外科手術症例データを格納したNational Clinical Database)を用いて分析したところ、次のような状況が明らかになりました。

▼毎日の当直医が6名以上の施設における緊急手術症例数は2017-2019年平均で「5万5790」、毎日の当直医が5名以下の施設における緊急手術症例は同じく「1万6235」で、緊急手術全体の2割弱を、時間外加算等の施設基準緩和がなされない施設が担っている

当直医5名以下の病院でも、相当程度緊急症例を受け入れている(外保連会見1 220124)



瀬戸実務委員長は「時間外加算等の施設基準が緩和されていない施設でも、相当程度、緊急手術を受け入れている実態を見て、施設基準の在り方を見直すべき」と訴えました。具体的には、症例の6割・施設の半数程度がカバーできるよう「毎日の当直医が3名以上」である施設について施設基準を緩和(通常は「予定手術前の当直が加算算定診療科全体で年間12日以内」とのところを「24日以内」に緩和)すべきと要望しています。

時間外加算等の施設基準緩和の要件を「毎日の当直医3名以上」に緩和すべき(外保連会見2 220124)



この点、「医師の負担軽減を考慮すれば、緊急手術等は大規模施設に集約すべき」との強い要請もありますが、「搬送時間」や「空きベッドの状況」などの事情から、必ずしも大規模施設で緊急手術全体をカバーすることが難しい状況もあるかと考えられます。「医療の質を踏まえた集約化」と「医療へのアクセスの確保」とのバランス確保が非常に重要となります(関連記事はこちら)。

ロボット支援手術、「患者視点でのメリット・優越性」のエビデンス構築し、増点目指す

また(6)のロボット支援手術については、すでに1月19日の中医協総会において、例えば次のような方向が了承されています。

(a)胃がん・食道がん・直腸がんについて、データを踏まえた「術者要件」の緩和などを検討する

(b)新たな術式を保険適用する(例えば肝切除術(ロボット支援)、結腸悪性腫瘍手術(ロボット支援)、腎悪性腫瘍手術(ロボット支援)、尿管悪性腫瘍手術(ロボット支援)など)

(c)▼胃悪性腫瘍手術(切除)(ロボット支援)▼胃悪性腫瘍手術(全摘)(ロボット支援)▼胃悪性腫瘍手術(噴門側切除術)(ロボット支援)―については学会から有用性のエビデンスが示されており、診療報酬上の評価を見直す

この3項目について、岩中督会長(埼玉県病院事業管理者)から詳しい解説が行われました。

まず(a)はGem Medでも報じたとおり、施設基準に定められる術者経験症例数をクリアする医師と、そうでない医師とで「重篤な合併症の発生率」に有意な差がなかったというデータを踏まえたものです。ロボット支援手術では「技術習得までの時間が比較的短い」ことが指摘されますが、岩中会長は「個別症例を詳しくみると、病院サイドで『経験症例数の未熟な医師には比較的、簡単な症例を割り振る』などの対応が行われていることが分かった。プロフェッショナルオートノミーに任せ、施設基準での縛りは不要としても、医療安全は確保できる」と強調しています。つまり「術者経験症例数」について「緩和」ではなく「廃止」を求めています。もっとも岩中会長は「データのある領域に限定した話である」とも付言しています。

ロボット支援下内視鏡手術の経験症例が施設基準を超える術者と、それ以下の術者とで、合併症発生率に有意な差はない(中医協総会(1)1 220119)



また(b)について岩中会長は「保険適用されない領域でのロボット支援手術は自由診療や先進医療で行わざるを得ないが、患者等の費用負担が大きくなり症例数確保が難しい。そこで『既存の内視鏡手術と同じ点数で構わないので、まず保険適用してもらい。保険診療の中で症例を集積し、既存内視鏡に比べた優越性のエビデンスを構築することで、増点を要望』していく」考えが望ましいのではないかとの旨をコメントしています。

ただし、「既存内視鏡に比べた優越性のエビデンス」について岩中会長は「患者に対するメリット・優越性」が極めて重要であると強調します。例えば「出血量についてわずかな優越性があったとして、それが統計的に有意であったとしても『輸血の必要性』に変化はないのであれば、患者に対するメリット・優越性とは厚生労働省に受け止めてもらえない。術後の合併症や死亡率など、患者に対するメリット・優越性のデータ集積が極めて重要である」との考えも強調しています。

現に、胃がんに対するロボット支援手術では、通常の内視鏡手術に比べて「3年生存率が高い」とのデータが得られ、それをもとに(c)にあるように「評価の引き上げ」が検討されることになりました。他方で「直腸がん、食道がんについて、優越性(尿量など)のデータはあるものの、必ずしも患者に対するメリット・優越性とは受けとめてもらえず、増点要望は却下されたようだ」との旨が岩中会長から照会されています。



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