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「ゆっくりとした歩行」「軽い家事活動」などの低強度身体活動も、脳機能の維持に有用—長寿医療研究センター

2022.8.18.(木)

脳機能の維持には、運動・スポーツなどの強度の高い身体活動だけでなく、「ゆっくりとした歩行」や「軽い家事活動」などの低強度の身体活動も有用であることがわかった—。

高年齢・高血圧・喫煙習慣ありなどの「心血管リスク」の高い者では、強度の高い身体活動は難しいが、「ゆっくりとした歩行」や「軽い家事活動」などの低強度の身体活動を継続することで、「脳機能を維持」し、認知症発症防止などにつなげることが期待できる—。

国立長寿医療研究センターはこのほど、こうした研究結果を公表しました(センターのサイトはこちら)。

身体活動量と「脳の重要部位の体積」との間には一定の関連がある

▼高血圧▼糖尿病▼喫煙習慣—といった心血管リスク因子を「複数併せ持つ人」は、将来、心血管疾患の発症率が高くなることはもちろん、「認知機能低下や脳の萎縮、認知症発症の危険性が高い」ことが近年の研究で明らかになってきています。

一方で、「日常の身体活動量を高く維持する」ことが脳の健康に有益であると考えられているものの、「どの程度の強度の身体活動が有効なのか」「心血管リスクが高い人であっても身体活動が脳に健康に有益なのか」は明らかにされていません。

そこで、今般、長寿医療研究センターの研究グループ(老年学・社会科学研究センターの牧野圭太郎研究員、島田裕之センター長ら)では、National Center for Geriatrics and Gerontology–Study of Geriatric Syndromes (NCGG–SGS)に参加した愛知県高浜市在住の60歳以上の男女725名を対象に、「日常の身体活動量」と「脳の体積」との関連を横断的に分析。そこから、次のような結果が得られました。

▽皮質灰白質(神経細胞が集まる領域)の体積は、中高強度の身体活動量と関連する(下図A)

▽白質(学習や脳機能に影響を与え、異なる脳の領域間の伝達を調整する働きを持つ脳の部位)の体積は、中高強度と低強度の両方の身体活動量と関連する(下図C)

高齢者において、身体活動量と脳胎t体積との間に関連がある(長寿医療研究センター1)



さらに、年齢・性別・糖尿病・喫煙習慣・収縮期血圧・総コレステロール値から、個々人の「心血管リスク」を数値化し、対象者を▼低リスク群(10%未満)▼中リスク群(10%以上15%未満)▼高リスク群(15%以上)—にグループ化。グループ別に見ると、「心血管リスクの高い群(234名)では、白質の体積が『中高強度の身体活動量』と『低強度の身体活動量』の双方と関連がある」ことが分かりました。

心血管リスクが高い人でも、身体活動量と脳胎t体積との間に関連がある(長寿医療研究センター2)



この研究結果から、「心血管リスクが比較的高い集団であっても、運動やスポーツなどの強い身体活動だけでなく、ゆっくりとした歩行や軽い家事活動などの低強度の身体活動を行うことによっても、脳の体積を維持できる(脳の機能低下を遅らせられる)」可能性が伺えます。

心血管リスクが高い地域住民では、運動やスポーツを積極的に行うことは難しいかもしれません。しかし「ゆっくりとした歩行」や「軽い家事活動」などの低強度の身体活動を継続することにより、脳機能の低下を防止することが期待されます。長寿医療研究センターでは「地域における認知症予防戦略としての活用が期待される」と結論づけています。



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