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GemMed塾 大学病院本院群を取り巻く現況を解説 ~昨今の特定病院群・標準病院群の経営努力とは~

地域包括ケア病棟で救急患者対応相当程度進む、回復期リハビリ病棟で重症患者受け入れなど進む―入院・外来医療分科会(3)

2023.6.9.(金)

地域包括ケア病棟では「救急患者の受け入れ」が相当程度進んでいるが、バラつきも大きい—。

回復期リハビリ病棟では、重症患者割合が上がり、リハビリの効果を評価するリハビリ実績指数も高まっているが、不適切な操作などが行われていないか注視する必要がある—。

6月8日に開催された診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」(以下、入院・外来医療分科会)では、こういった議論も行われました(急性期入院医療に関する記事はこちら、ICUなどの高度急性期入院医療に関する記事はこちら、「療養病棟をはじめとする慢性期入院医療」などは別稿で報じます)。

救急患者受け入れ対応、地域包括ケア病棟の相当数が実施しているが・・・

2024年度の次期診療報酬改定に向けて、入院・外来医療分科会で「専門的な調査・分析」と「技術的な課題に関する検討」が始まりました。

地域包括ケア病棟については、次のような状況にあることが報告されています。

【ケアミクスなどの状況】
(1)許可病床数200床以上の医療機関の割合は、一般病床14.9%、療養病床34.4%

(2)地域包括ケア病棟等(入院料、管理料、以下同)の1・2施設の多くは急性期一般入院料を届け出ており、地域包括ケア病棟等3・4施設の半数は療養病棟入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料をそれぞれ届け出ている

地域包括ケア病棟を持つ病院のケアミクスの状況(入院・外来医療分科会(3)1 230608)



【救急対応の状況】
(3)地域包括ケア病棟を有する病院が救急告示病院である割合は、地域包括ケア病棟1で80.7%、地域包括ケア病棟2で86.2%。同じく2次救急医療機関である割合は、地域包括ケア病棟1で75.1%、地域包括ケア病棟2で86.2%

地域包括ケア病棟を持つ病院の救急対応1(入院・外来医療分科会(3)2 230608)



(4)地域包括ケア病棟を有する病院の「救急患者受け入れ」頻度は、週7日が60.1%だが、週ゼロ日も13.0%ある。夜間・深夜も救急対応をする医療機関が77.0%。救急搬送受け入れ件数は、400件以下の医療機関が多いが、1000件超も一定程度ある

地域包括ケア病棟を持つ病院の救急対応2(入院・外来医療分科会(3)2 230608)



(5)救急受け入れ基準としては、「患者の症状により受け入れ可否を判断している」が多い

地域包括ケア病棟を持つ病院の救急対応判断(入院・外来医療分科会(3)4 230608)



【在宅医療提供】
(6)地域包括ケア病棟1病院の9割超が在宅医療を提供しているが、地域包括ケア病棟2病院では約6割にとどまっている

地域包括ケア病棟を持つ病院の在宅医療提供状況1(入院・外来医療分科会(3)5 230608)



(7)在宅医療提供の内容としては「訪問診療」の基準を満たす医療機関が多い

(8)地域包括ケア病棟1・2において「緊急患者受け入れ」の施設基準要件を下回っている医療機関が一定数ある

地域包括ケア病棟を持つ病院の在宅医療提供状況2(入院・外来医療分科会(3)6 230608)



【患者の流れ】
(10)「自院の急性期病棟からの回復患者受け入れ」に特化している地域包括ケア病棟は減少傾向にある
→2022年度改定前(2020年度調査)では40.8%であったが、改定後(2022年度調査)では27.3%に減少
→ただし、依然として「自院の急性期病棟からの回復患者受け入れ」割合が100%である地域包括ケア病棟も一部存在する

地域包括ケア病棟の患者の流れ1(入院・外来医療分科会(3)7 230608)

地域包括ケア病棟の患者の流れ2(入院・外来医療分科会(3)8 230608)



このうち救急医療対応に関しては、「救急現場では、患者の状態を見た選別(トリアージなど)をしっかり行っていることが伺える」(津留英智委員:全日本病院協会常任理事)、「救急対応は『病院単位』で行っており、ケアミクスの場合には急性期病棟で受けているのか、地域包括ケア病棟で受けているのかが明確でない。その点が見えるようになると良い」(猪口雄二委員:日本医師会副会長、山本修一分科会長代理:地域医療機能推進機構理事長)、「救急対応状況には病院間で大きなバラつきがある。総会でも議論されているとおり『高齢の救急患者をどこで受け入れるか』が2024年度改定での重要論点の1つになる」(中野惠委員:健康保険組合連合会参与)などの意見が出ています。

2022年度の前回改定では、地域包括ケア病棟に「救急患者受け入れ」を強く求める見直しが行われており、状況を適切に把握したうえで「さらなる救急患者受け入れ促進」に向けた議論が今後なされることに期待が集まります。

また、猪口委員からは「2023年度に入ると経過措置が切れ、減算が適用され始める。その状況を詳しく見る必要がある」との、山本委員からは「自院のポストアキュート患者受け入れが減り、在宅患者受け入れが増加しているように見えるが、実態がどうであるのかを注意深く分析する必要がある」との指摘が出ています。

回復期リハビリ病棟、重症患者が増加し、リハビリの効果も上がっているが・・・

次に回復期リハビリテーション病棟の状況を見ると、次のような点が浮上しています。

【心臓リハの実施状況】
(a)心大血管疾患リハビリテーション料を届け出ている医療機関は16.9%

回復期リハビリ病棟におけるリハビリ提供状況1(入院・外来医療分科会(3)9 230608)



(b)心大血管疾患リハビリ料を届け出できない理由としては「循環器科、心臓血管外科の医師確保が困難」や「心大血管リハビリ経験を有する医師の確保が困難」が多い

回復期リハビリ病棟におけるリハビリ提供状況2(入院・外来医療分科会(3)10 230608)



【患者の状況、リハビリの効果】
(c)回復期リハビリ病棟1・2における重症度割合は、おおよそ40-45%

回復期リハビリ病棟における重症患者割合(入院・外来医療分科会(3)11 230608)



(d)実績指数の平均値は「要件・基準」よりも大きく上回っている

回復期リハビリ病棟におけるリハビリ実績指数(入院・外来医療分科会(3)12 230608)



(e)リハビリテーション提供単位数については疾患や届出入院料毎に異なっている

【適切なリハビリ実施に向けた機能評価】
(f) 回復期リハビリテーション病棟全体の33.6%が日本医療機能評価機構などの認定を受けいてる

回復期リハビリ病院の機能評価受審状況1(入院・外来医療分科会(3)13 230608)



(g)機能評価を受けない理由としては「受審に向けた準備や受審のために人員を割けない」が多い

回復期リハビリ病院の機能評価受審状況2(入院・外来医療分科会(3)14 230608)



(h)回復期リハビリ病棟の入棟元としては「他院の一般病床」が最も多く(59.1%)、退棟先としては「自宅(在宅医療の提供なし)」が最も多い(52.9%)



こうした状況に対しては、「心臓血管リハは、ニーズに対して供給が追い付いていないようだ。入院だけでなく、外来にも拡大していくことに期待したい」(田宮菜奈子委員:筑波大学医学医療系教授)、「回復期リハビリ病棟の重症患者割合が上がっているが、その背景に『急性期治療が十分に終わるまえに回復期リハビリ病棟に転院などしている』ことなどがないか、回復期→急性期への再転棟割合が増えてないかなども、きちんと分析していく必要がある」(津留委員)、「リハビリ実績指数のベースとなるFIM利得について不適切な動きがストップしたのかをきちんとチェックすべき」(山本委員)、「重症患者割合やリハビリ実績指数は、基準値を大きく上回っている。基準値の見直しを2024年度診療報酬改定に向けて議論していく必要がある」(中野委員)といった意見が出ています。



2024年度改定は、診療報酬・介護報酬の同時改定であり、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟といった「回復期入院医療」の評価にも大きな注目が集まります。今後、委員の意見も踏まえたさらに詳細な分析・技術的検討が進められます。



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