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病床機能報告 看護モニタリング

2021年度の介護費、高額介護サービス費など含めれば11兆2838億円、除外しても11兆26億円に増加―2021年度介護保険事業状況報告

2023.9.4.(月)

2021年度の介護費は、高額介護サービス費等を含まない純粋な保険給付のみで11兆26億円、さらに高額介護サービス費等を含めた介護費は11兆2838億円となり、本格的な「介護費11兆円時代」に突入した―。

このような状況が、厚生労働省が8月30日に公表した2021年度の「介護保険事業状況報告(年報)」から明らかになりました(厚労省のサイトはこちら(ポイント)こちら(概要)こちら(全国計))(前年度の記事はこちら)。

また2021年度には訪問介護などの受給者増が見られますが、訪問介護人材確保は困難となっており「ICT等を利活用した生産性向上」や「訪問介護+通所介護などの新たな地域密着型サービス創設」などの検討が急がれます。

高額介護サービス費等を含めた介護費は11兆2838億円に増加

高齢化の進展は「介護費の増加」に直結します。いわゆる団塊の世代が、ついに昨年度(2022年度)から75歳以上の後期高齢者となりはじめ、2025年度には全員が75歳以上に到達することから、今後急速に「介護が必要となる高齢者(後期高齢者)の増加」→「介護費の増加」に繋がっていきます。

一方、人口動態推計によれば、その後、2040年度にかけて高齢者の「数」自体は大きく増加しないものの、「支え手」となる現役世代人口が急速に減少していくことが分かっています。「少なくなる支え手」で「多くの高齢者」を支えなければならず、公的介護保険制度の財政基盤は非常に脆くなっていくと考えられます。

このため、介護保険制度改革ではサービスの確保(例えば人材確保)と質の向上に加え、「制度の持続可能性確保」が重要な視点となります(関連記事はこちらこちら)。



2021年度の介護費用を見てみると、11兆26億円(前年度に比べて2779億円・2.6%増加)、利用者負担を除いた給付費は9兆8467億円(同2507億円・2.6%増加)となりました。

また高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費を含む介護費用は11兆2838億円(同2296億円・2.1%増)となっています。

介護費の状況(2021年度介護保険事業状況報告1 230830)



介護保険制度がスタートした2000年度には、介護費は3兆6273億円でしたので、21年間で「3.0倍」に規模が拡大しています。その背景には、▼高齢化の進展▼制度の国民への浸透▼サービス提供体制の拡充―など様々な要素が複雑に絡み合っており、「介護費の適正化」に向けた議論を丁寧に進めていく必要があるでしょう。

保険給付費、居宅3.6%増、地域密着型2.8%増、施設1.0%増

介護保険給付費の内訳を見ると、▼(予防)居宅介護サービス:4兆9604億円(前年度から1732億円・3.6%増加)▼(予防)地域密着型介護サービス:1兆6925億円(同466億円・2.8%増)▼施設介護サービス:3兆1938億円(同309億円・1.0%増)―という状況です。

要介護・要支援高齢者の状態やニーズが多様化・複雑化する中で、複合的なサービスを提供する地域密着型サービス(例えば小規模多機能型居宅介護であれば通所・訪問・泊りを一体的に提供できる)への期待は今後もさらに高まっていくと考えられ、施設サービスからのシフト(=地域密着型介護サービス費の増加)が続くと見込まれます。

要介護認定率の都道府県間格差、2021年度にも僅かながら拡大

介護費が増加する要素は上述のようにさまざまですが、分析のためには介護費を(1)利用者数(2)1人当たり介護費―に分解して見ていくことが有用です。(1)の利用者数増加の要素が大きければ、例えば「重度者に保険給付を重点化していくべきか」という論点が重要となり、また(2)の1人当たり介護費増の要素が大きければ、「重度化防止、自立支援に力をいれるべきではないか」という議論を積極的に進めることが重要となるなど、「介護費の適正化に向けた実効性のある議論」が可能となるためです。



(1)の利用者数は、さらに「高齢者数」と「要介護認定の状況」に分解できます。前者の「高齢者数」増加を抑えることは困難である(「第1号被保険者を75歳以上に引き上げる」などすれば可能だが、それには根本的な制度改正論議が必要となり時間がかかる)ため、後者の「要介護認定の状況」を見てみましょう。

介護保険サービスを受けるためには、市町村から「要介護・要支援状態である」と判定されることが必要です(要介護・要支援認定)。認定者数は、2021年度末には689万6000人(前年度から7万8000人・1.1%増)で、要介護度別の構成比は次のようになりました。
▼要介護5:58万6000人・8.5%(前年度から人数に増減なし・シェア0.1ポイント減)
▼要介護4:87万4000万人・12.7%(同2万5000人増・0.2ポイント増)
▼要介護3:91万8000人・13.8%(同1万2000人増・0.5ポイント増)
▼要介護2:116万2000人・16.9%(同4000人減・0.2ポイント減)
▼要介護1:142万9000人・20.7%(同2万8000人増:0.2ポイント増)
▼要支援2:95万2000人・13.8%(同2000人増・0.1ポイント減)
▼要支援1:97万4000人人・14.1%増(同1万3000人増・シェアに増減なし)



第1号被保険者(65歳以上、2020年度末時点で3579万人)のうち要介護・要支援と判定された人(689万6000人)の割合(要介護等認定率)は18.9%となっています(前年度から0.2ポイント減)。

認定者数の推移(2021年度介護保険事業状況報告2 230830)



また都道府県別に要介護等認定率を見ると、最高は大阪府の22.6%(前年度から0.3ポイント上昇)、逆に最低は茨城県の15.6%(同0.1ポイント上昇)です。両県間の格差は1.45倍となっています。格差は徐々に縮小する傾向にありましたが、2019→20年度に0.1ポイント拡大、2020→21年度に0.2ポイント拡大っしています。今後の状況を注視する必要があるでしょう。

都道府県別の認定割合(2021年度介護保険事業状況報告3 230830)



政府は、都道府県別の「要介護等認定率のバラつき」について「改善の余地がある」と見ています。

もちろん「要介護等認定率が高い=悪い」という単純な構図にはなりません。論理的には、認定率が高い地域では「利用者の状態を丁寧にアセスメントしている」可能性が、逆に認定率の低い地域では「恣意的に認定基準を厳しくしている」こともあり得るからです。認定率の都道府県別格差が1.4倍超もあることについて合理的な説明ができるのか、今後、より詳細に状況を検証していくことが必要です。

なお厚労省は2018年度より「自立支援・重度化防止に実際に取り組み、成果も出す市町村により多くの補助金(保険者機能推進交付金、いわゆるインセンティブ交付金)を交付する」仕組みを新設しており、認定率の格差縮小に期待が集まります。今後、中長期的に状況把握していくことが重要です(関連記事はこちらこちら)。

1人当たり介護費は2.2%増加、最高の島根県と最低の埼玉県で1.40倍の格差

介護費用のもう1つの要素が(2)の「1人当たり介護費用」です。2021年度の「1人当たり介護給付費」(第1号被保険者、高額介護サービス等などを含む)は27万4000円で、前年度から6000円・2.2%増加しました。内訳を見ると、▼居宅サービス:13万8000円(前年度から4000円・3.0%増)▼地域密着型サービス:4万7000円(同1000円・2.2%増)▼施設サービス:8万9000円(同1000円・1.1%増)―となりました。

また1人当たり介護給付費(高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費を含まない)を都道府県別に見ると、最高は島根県の32万3400円(前年度から2900円・1.0%増)、最低は埼玉県の22万2900円(同8300円・3.7%増)で、1.40倍の格差があります(前年度から0.3ポイントの格差縮小)。

都道府県別第1号被保険者の1人当たり給付費(2021年度介護保険事業状況報告4 230830)



この点、「介護保険施設の整っていない地域では、医療療養病床などが機能補填をしている(介護が必要な高齢者を医療保険ベッドで受け入れている)」などの状況もあり、現時点では単純に「1人当たり介護費が高い=介護費に無駄がある」などと判断することは危険です。ただし政府は、「1人当たり介護費の『不合理な地域差』縮小」を目指す方向を示しています。なお、医療療養から介護医療院への転換等に伴い、地域の介護サービス提供体制が徐々に変わっていくと考えられ、今後の動向に注目する必要があります。



なお、1人当たり介護給付費について、「施設サービス費が高い都道府県」と「居宅・地域密着型サービス費が高い都道府県」とを見てみると、前者としては新潟県・鳥取県・高知県などが、後者としては大阪府や東京都などがあげられます。

東京や大阪などの大都市では、「土地代が高い」「土地の確保がそもそも難しい」「建設費が高い」などの背景から「施設サービス確保が難しく、居宅・地域密着型サービスが中心になる」傾向があります。

一方、人口が散在している地域では、在宅サービス提供が非効率になりがちである(A利用者宅からB利用者宅への移動(送迎など)に時間がかかる)ことから、「施設サービスのほうが効果的かつ効率的なサービス提供が可能なため、施設サービスの比重が大きくなる」傾向があることも理解できます。

第1号被保険者の1人当たり給付費分解図(2021年度介護保険事業状況報告5 230830)



なお、Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの湯原淳平シニアマネジャーは、この点について、介護現場コンサルの経験も踏まえ「移動の面では、かえって地方の方が便利な面もある。例えば東京では一方通行が多く、路地も細いため車移動には向かない。またマンション居住者などでは高低の移動となり、必ずしも効率的でないことも多い」と指摘しています。より詳しく地域の状況を踏まえた分析を行い、地域に実情にマッチしたサービス提供体制の整備・充実が重要です。

2020年度から21年度にかけて訪問サービス利用者が増加、増大するニーズにどう応えるか

ところで要介護認定を受けた人がすべて介護保険サービスを利用するわけではありません(要支援・要介護と判定されても公的介護保険サービスを使わない人もいる)。実際にサービスを利用している人(受給者数)を見ると、2021年度の累計では、▼(予防)居宅介護サービス:4854万人(前年度から144万人・3.1%増)▼(予防)地域密着型サービス:1065万人(同19万人・1.8%増)▼施設サービス:1150万人(同2万人・0.2%増)—となりました。

(参考)居宅サービスの1か月平均受給者数(2021年度介護保険事業状況報告6 230830)

(参考)地域密着型サービスの1か月平均受給者数(2021年度介護保険事業状況報告7 230830)

(参考)施設サービスの1か月平均受給者数(2021年度介護保険事業状況報告8 230830)



居宅サービスの利用者が増加していますが、少子化の進展により「訪問介護員の確保が非常に厳しい」状況が生じています。増大するニーズに適切に対応するために、例えば「ICT等を利活用した生産性の向上」や「訪問介護+通所介護などの新たな地域密着型サービス創設」などが議論されており、今後の社会保障審議会・介護給付費論議などに注目する必要があります(関連記事はこちら(新サービス創設を求める介護保険部会論議)こちら(新サービス創設に関する介護給付費分科会論議))。


コメントを担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門シニアマネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。



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