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北陸地方の大地震受け「保険証等持たずとも保険診療受けられる」「施設基準を一時的に満たさずとも診療報酬の継続算定可能とする」特例

2024.1.4.(木)

1月1日に北陸地方を中心に大地震が遅い、多くの方が被災されました。心よりお悔やみ申し上げるとともに、一刻も早い復旧を祈念いたします。

保険証・マイナンバーカードがなくとも被災者では保険診療を受けられる特例

厚生労働省は、保険証(被保険者証)を持たずに避難した、あるいは保険証を滅失してしまった方について「保険証やマイナンバーカードを持たずに医療機関等を受診した場合でも保険診療を受けられる(1-3割の負担で済む)」とする臨時特例を設け、医療機関等に特例に沿った対応を行うよう呼びかけました。後述するように「被災者について氏名や住所などを確認したうえで保険診療を実施する」ことが求められます。



保険診療を受ける、つまり「医療機関を受診した際に、窓口で一部負担(年齢・所得に応じて1-3割)のみを支払って医療を受ける」ためには、原則として、自身の加入する医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)の発行した被保険者証(いわゆる保険証)、あるいはマイナンバーカードを医療機関等の窓口に提示し、「自分は公的医療保険の加入者である」旨を証明しなければなりません。

医療機関等では、患者本人に医療費の1-3割を「一部負担」(窓口負担)として請求し、残りの7-9割は医療保険者に請求します。この資格確認が適切に行われなければ、医療機関等は「この患者には、1-3割の自己負担を請求するだけでよいのか?もし医療保険に加入していなければ10割請求をしなければならないのだが・・・」と不安を持ち、円滑な事務が滞ってしまいます。

被保険者証を持参し忘れるなどして、医療機関等の窓口で提示できない場合には、「一旦、医療費の全額を医療機関の窓口で支払い、後日、自分自身で医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)に申請し、保険給付分(年齢や所得に応じて7-9割)を償還してもらう」ことが原則となります。



しかし、今般の大地震で被災された方の中には、さまざまな理由で医療保険の「被保険者証」(保険証)や、難病等の「医療受給者証」などを持たずに避難を余儀なくされた方も少なくないでしょう(着の身着のままに避難された方も少なくない、また自宅に戻れない、自宅が倒壊等し被保険者証(保険証)が紛失してしまった方なども少なくない)。こうした被災者に上記の原則を適用することはあまりに酷であり、厚労省は「特例措置」を設けることを決定しました。

1月1日に示された事務連絡「令和6年能登半島地震にかかる災害の被災者に係る被保険者証等の提示等について」では、特例措置の対象とすることを明らかにしました。これまでにも東日本大震災や熊本地震、北海道地震、各地の豪雨に伴う浸水などの大災害で被災された方にも、同様の対応がとられています(関連記事は、例えばこちら(2023年8月の台風被災者特例)こちら(2023年5月の石川県地震の被災者特例)こちら(2022年8月の東北・北陸豪雨の被災者特例)こちら(2023年1月の大雪被災者特例)こちら(昨年(2022年)末の山形県鶴岡市で発生した土砂崩れの被災者特例)こちら(2021年の静岡県豪雨の被災者特例)こちら(2020年の福島県沖地震の被災者特例)こちら(2020年台風14号被災者特例)こちら(2020年7月九州豪雨の被災者特例)こちら(2019年台風19号の被災者特例)こちら(2018年北海道大地震の被災者特例)こちら(2018年7月豪雨の被災者特例)など)。

特例措置の具体的な内容は、被保険者証やマイナンバーカードを持たずに避難したために、医療機関窓口に提示できない場合であっても、▼氏名▼生年月日▼連絡先(電話番号等)▼被用者保険(健保組合や協会けんぽ)の被保険者では「事業所名」(会社名)▼国民健康保険・後期高齢者医療制度(75歳以上の方が加入)の被保険者では「住所」▼国保組合では、住所と組合名―を医療機関の窓口で申し立てることで、保険診療が受けられるようにするものです。



この場合、医療機関側は次のようにレセプト請求を行うことになります。

▼「受診時に確認した被保険者の事業所」や「過去に受診した医療機関」などに問い合わせて、可能な限りレセプトに保険者(健保組合など)を特定し、記載する

▼保険者を特定できない場合には、「住所または事業所名」「連絡先」などをレセプトの欄外上部に記載する

被災者等受け入れ施設基準を満たせない場合でも診療報酬の継続算定認める特例

また厚生労働省は1月2日)に事務連絡「令和6年能登半島地震の被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて」を示し、たとえば次のような特例を実施することを明らかにしています。

(1)被災者を受け入れたことにより超過入院となった保険医療機関について、当面の間、定員超過による診療報酬の減額は行わない。またDPC病院については当面、従来どおりDPC点数表に基づく算定を継続できることとする

(2)被災者の受け入れによる入院患者が一時的な急増、あるいは職員を被災地に派遣したことによる一時的な人員不足によって入院基本料の施設基準が満たせなくなっても、当面「月平均夜勤時間数」については1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(3)(2)と同様の場合、「1日当たり勤務する看護要員の数」、および「看護要員と入院患者の比率」「看護師の比率(看護師および准看護師)」については、当面、1割以上の一時的な変動があったとしても変更届け出は行わなくてもよい

(4)(2)と同様の場合、DPC対象病院への参加基準を満たさなくなっても、届け出を行わなくてもよい

(5)(2)-(4)について入院患者の一時的な急増や職員派遣による一時的不足について記録・保管しておく

(6)被災地以外の医療機関にも上記(2)-(5)を適用する(被災地から患者等が移送されてくることが考えられる)

●被災地の医療機関において
▽日本赤十字社の救護班、JMAT、DMATなどボランティアで避難所・救護所等で行われる診療は保険診療としては取り扱わない(一部負担金徴収も不可)

▽医師等が各避難所などを自発的に巡回し、診療を行った場合には、保険診療として取り扱うことはできない(かかりつけの患者を偶然診療した場合でも同様)。災害救助法の適用となる医療については、県市町村に費用を請求する

▽医師等が、避難所に居住する「疾病、傷病のために通院による療養が困難な患者」に対し、当該患者が避難所にある程度継続して居住している場合に、定期的な診療が必要と判断され、患者の同意を得て継続的に避難所を訪問して診察を行った場合に、【訪問診療料】等を算定できる(通院可能患者では当然不可)

▽上記で、複数人に同一日に訪問診療を行う場合には「同一建物居住者」として取り扱う。なお、避難所などにおいて「同一世帯の複数の患者」に診察をした場合は、「同一建物居住者」の取扱いではなく、1人目は「同一建物居住者以外の場合」を算定し、2人目以降は「初診料・再診料・外来診療料・特掲診療料」のみを算定する

▽被災前から在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の対象となる医学管理を行っている患者が避難所に避難し、当該患者に当該医学管理を継続して行う場合、当面、被災前の居住場所に応じた区分に従って当該管理料を算定できる。ただし、避難場所が分散し、被災前の居住場所と比べて「単一建物居住患者の人数」が減少した場合には、減少後の人数に基づいて算定できる

▽避難所などにある程度継続して居住する患者であって、定期的に外来での診療を受けている者からの求めに応じて、当該診療を行っていた医師が避難所などに往診を行った場合、【往診料】は算定できるが、2人目以降は【再診料】を算定する

▽やむを得ず医療法上の許可病床数を超過して入院させた場合には、当面、次のような取り扱いとする

▼実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を算定することが原則

▼会議室など病棟以外に入院する場合には、必要とされる診療が行われている場合に限り、当該医療機関が届出を行っている入院基本料のうち、当該患者が入院すべき病棟の入院基本料を算定する

▼本来入院できない病棟への入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院(回復期リハビリ病棟への要件を満たさない患者の入院など)については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ【地域一般入院基本料】を算定)

▽被災した他医療機関から転院患者を受け入れた場合、転院患者を含めて平均在院日数を計算する。ただし、施設基準(急性期一般1であれば18日以内)を超過しても、当面は当該入院基本料の算定を継続できる

▽被災者などを受け入れた場合、当面、当該患者を除いて特定入院料の施設基準の要件を満たすかどうかを判断する(被災地以外でも同様)

▽災害などで診療の継続が困難となった他医療機関から転院患者を受け入れた場合、入院日は「当該医療機関に入院した日」とする(被災地以外でも同様)

▽被災地で透析設備が使用不可能となっている場合に、震災以前から当該医療機関に入院して透析を行っている患者が、真にやむを得ない事情で他医療機関で透析を受けた場合、入院基本料・特定入院料の控除は行わない(被災地以外でも同様)

▽DPCのデータ提出期限は延長する



●被災地以外の医療機関において
▽被災地医療機関から、医療法上の許可病床数を超過して転院患者を受け入れた場合には、当面、次のような取り扱いとする

▼実際に入院した病棟(病室)の入院基本料・特定入院料を原則とする

▼本来入院できない病棟に入院(精神病棟への精神疾患ではない患者の入院など)、診療報酬上の施設基準の要件を満たさない患者の入院(回復期リハビリ病棟への施設基準要件を満たさない患者の入院など)については、入院基本料を算定する病棟では当該入院基本料を算定し、特定入院料を算定する病棟では「医療法上の病床種別と当該特定入院料が施設基準上求めている看護配置」により、算定する入院基本料を判断する(一般病床の回復期リハ病棟では、看護配置が15対1ゆえ「地域一般入院基本料」を算定)



●訪問看護
訪問看護については、▼2024年1月1日以前に主治医の指示書の交付を受けている▼保険医療機関が被災地に所属し、被災で主治医と連絡がとれず1月2日以降の指示書交付が困難である▼利用者の状態からみて訪問看護が必要と判断し実施した―のすべての要件を満たす場合、有効期間を超えた訪問看護指示書に基づいた訪問看護においても【訪問看護療養費】の算定が認められます。

また、被保険者が被災地に所在していた場合であって、被災のため避難所や避難先の家庭などで生活している場合には、居宅以外の訪問でも【訪問看護療養費】の算定が可能です。

介護保険法に基づく訪問看護についても、同等の取扱いとなります。



●保険薬局
保険薬局で調剤を行うにあたり、次の場合には正式な処方箋に基づかなくても保険調剤として取り扱うことが可能です。

▽被保険者証などの提示ができず保険者番号などの記載がない処方箋、救護所などで交付された処方箋について、必要事項を確認した上で、保険調剤として認めてよい

▽患者が処方箋を持参せずに調剤を求めてきた場合、医師の診療を受けられないなどやむを得ない事情が認められれば、事後の処方箋発行を条件として、保険調剤として認めてよい

なお、「避難所などで診察を受けて発行された処方箋」は保険調剤として取り扱えず、災害救助法の適用となる場合には都道府県に費用請求することになります。また、薬剤師が避難所などを訪問して薬学管理・指導を行う場合、それが医師の指示に基づくものであれば、【在宅患者訪問薬剤管理指導料】を算定できます(もちろん通院可能な場合には算定不可)。



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